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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第2部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第6章 思いを引き継いで・・・
100/106

2-100、柏沼高校三年生の夏

   カカカッ   カッ  カカカカカッ   カカカッ

   ヒュルッ  ヒラリッ

   カカカカカカカッ   カカッ   ヒラリ   カカカカッ


「~~~えー、で、あるからして、ここは二方面への敬意が含まれ、光源氏と・・・・・・」


   カカカカッ  カカッ  カカカカカッ


 お盆も過ぎ、九月からの新学期が始まるまでの二週間、柏沼高校では夏期課外という名の授業や補講が行われる。一年生や二年生は普通に古文、英語、日本史や世界史などの授業が進むが、三年生は受験対策のための演習問題が主となる。


   カカカッ   カカカッ


「じゃ、ここまでを、よくまとめておくこと。この部分は、私大の一般入試によく出る部分だ。古文における敬語の見極めは、ミスをしないように。明日は課外ないから、自主的にな!」


   ~~~♪ ~~~♪♪ ~~~♪♪♪ ~~~♪


 まだ夏休み中とはいえ、もう、実質受験は始まっているようなものだ。

 古文の後は、日本史と英語がまだ続く。休み時間も、なんだか休めてる気がしないような表情の生徒たち。


「あー・・・・・・もぉーっ・・・・・・。暑いし、頭まわんないよぉアタシー。光源氏、なんでこんなにあちこちの女を相手にしてんのよぉー・・・・・・」

「仕方ないけど、大学入試にはよく出るところらしいし、頑張ろうよ川田さん」

「それにしても、暑くない? 来週は九月だよ? これなら沖縄の暑さのがよかったよー」

「沖縄かー。もう、なんか、遠い昔のような感じだね。あの暑さは、確かにこの栃木の暑さとはまた違った感じだったよねー」


 川田は古文のプリントやノートに顔を突っ伏したまま、うだうだしている。近くの席の友達も、下敷きで川田を扇いでくれている。


「あー、まったく、あっちぃねぇー。やる気んなんねー。どうだ、一組は?」


 田村が、ひまわり柄のうちわで扇ぎながら、前原たちの教室横の廊下にやってきた。


「田村ー・・・・・・アタシはもうだめだ。ねぇ、どーしたらこのダルさを解消できるぅー?」

「知らねー。校舎内って、風通し悪いんだよねぇ。武道場のがすーっと涼しいしなぁ」

「田村君のクラスは次、古文だっけ? 僕たちは日本史の演習問題だよー」

「前原も川田も、なんだか、干物みたいになってるねぇー。前原、古文のプリントや解説文、教えてくれよー。ぜんっぜん俺、わかんねー」

「ご、ごめん田村君。僕も、やる気出なくて、まとめてないんだ・・・・・・」

「アタシも無理ー。先に言っとくけど・・・・・・。あー運動したいよぉー・・・・・・」

「そうそう、課外終わったら、前原も川田も、武道場行こうぜ。やることあるんだしなぁ」


 ぱたぱたと扇ぎながら、田村は自分の教室へ戻っていった。

 その後、日本史のプリントも英語のプリントも、前原と川田は揃ってやる気にならず、何度か指されるも答えられず。席が近くの友達は、二人があまりにやる気なさそうなので、笑いを堪えていた。


「アタシ、入試のない大学行きたいー。日本語が話せれば合格できるみたいな大学でいいよもうー」


 そんなことをぼそっと呟く川田に、英語の先生は呆れ返っているようだ。

 川田を見て、前原は思った。「僕も、そんな大学があれば、行ってみたいよ」と。

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