第16話 円環流
大会は何事もなく進みAブロック決勝第一試合。
「さあ!遂にブロック決勝です!こんな予想誰がしたでしょうか!齢11歳の少年・少女が並み居る実力者を圧倒的な剣技で倒し、とうとう決勝戦に駒を進めました!!この試合に両者が勝てば、王者決定戦は少年少女同士の戦いとなります!!」
会場のアナウンスに観客は大盛り上がりだった。
「では、選手入場です!まずはAブロック」
〜アルベルトvsコジロウ〜
「続いて、Bブロック」
〜アリスvsサクラ〜
「あーっと、ここで新情報です!コジロウとサクラは、なんと東方にある”日の国”出身ということです!」
”日の国”か・・・・・。
日本みたいなとこか。
見る限り、侍だな。
「おい、”日の国”ってあれだろ!?」
「ああ、ムラクモが生まれた地だ!!」
「そんな奴らが参加してたのか!」
観客の声が聞こえてくる。
へぇー、これは手強そうな相手だな。
「それでは、準備はよろしいでしょうか・・・・・・」
四人が手をあげ返事をする。
「試合開始!!」
「ほほ、お前さん強いの〜」
コジロウが褒めてくる。
「あんたに言われたくないよ・・・・・」
この爺さん、剣だけならビシスに迫りそうだ。
なんでもありの試合なら楽に勝てるが、剣では敵いそうにない。
「では、始めるとするかの〜」
「・・・・・・・」
今までとは違い全く気が抜けない。
ヒュンッ。
そんな音がした。
「?」
なんだ・・・・・・!!!
パアン!!
斬撃が飛んできた。
は?スキルか?
いや、このリングでスキルが使われれば即感知される。
なら、ただの風圧か!?
「ちっ!!」
なんとか模擬剣で弾き飛ばす。
「これについて来るとは、末恐ろしいの〜」
顎髭を整えながら、笑いかけてくる。
「ならばこれはどうじゃ?」
コジロウは、鞘に収めたように構え、居合の容量で2回振った。
すると斬撃が4本飛んできた。
・・・・・・・は?
「ちょ、まっ!!」
ただの風圧だとわかっていても、その威力はとんでもないものだ。
「やはり、あの人が見込んだ子供じゃの〜」
「あの人?」
”日の国”の人間とは会ったことがないけど・・・・・。
「ラキナ様と一緒にいるのではないのか?」
ラキナを知ってんのか、この爺さん。
ちょっと待てよ、それなら・・・・・・。
「爺さん、いくつなんだ?」
◆◆
「試合開始!!」
「よろしくね、サクラさん」
「ええ、よろしく」
サクラは、その名の通り桜色の袴を着ている。
あれ、綺麗だな〜。
「行くよ!」
サクラさんの、間合いに入り、剣を振った。
カンッ・・・・・。
「・・・・・あれ?」
この人剣振った?
目の前のサクラは、剣を腰に触れさせているままだ。
一度離れ、様子を見る。
「来ないの?」
「私の剣は、守るための剣。仕える主人を守るための剣に斬るための剣など不要」
サクラは、模擬剣で己の周りに円を書く。
「それは?」
「私は、ここから動かない」
アリスには、それが挑発に聞こえた。
「あ、そう」
アリスは、ラキナに教えてもらったある英雄の剣を使うことにした。
「その構えは!古の時代の!?」
サクラは、アリスの使う型に覚えがあった。
”日の国”において、剣を学ぶものは最初に教えられる。
これが、”始まり”だと・・・・・。この剣こそが、全ての原点だと。
書物で、伝えられる。
この時代には、誰も扱うことができないため、絵でしか見たことがない。
「その自慢の剣で防ぎきれるといいね」
「くっ・・・・・・」
サクラは、頬に汗が伝うのを感じ、目の前の相手に全力で神経を注いだ。
先ほどと同じようにサクラの間合いに入る。
「ふっ」
呼吸とともに剣を振り、サクラに弾かれる。
その勢いを利用し、剣を背後に通し、逆の手に握り、反対側に振る。
「がっ!!」
サクラは、反応が遅れた。
「あれ、まだ始まったばかりだよ?」
頭では来ることは分かっていた。
あの型の動きは、一通り頭に入っている。
何度も、何度もその動きをしてみたが、結局、初撃から十一撃目まであるうちの参撃目までしか取得できなかった。
それでも優秀なほうだった。
誰もが、あの師匠でさえ、五撃目までしかできない。
「あなた、何撃目まで出来るの?」
「十二撃目までだけど?」
「え?」
十二撃?
なにを言ってるんだ?
「行くよ」
十二撃目など聞いたことがない・・・・・。
「くっ・・・・・」
◆◆
「爺さん、いくつなんだ?」
ラキナは、最後に人里に降りたのは、200年以上前だと言っていた。
なら、この爺さん何歳だ?
「わしは、もう300歳ぐらいかの?」
300?
人間族の寿命は、長くても100歳だろ?
「そういえば、言ってなかったの」
爺さんは、そのまま自己紹介を続けた。
「わしは、”神仙”コジロウ。仙人が一人、到達者じゃ」
ということは、システムから逸脱してるのか・・・・・。
まじ、やべー。
「なんで、こんなところに?」
神仙なんて呼ばれてる人が来るような場所ではない。
「それは・・・・・・・!!」
コジロウは、アリスとサクラの戦うリングを見て、目を見開いた。
「どうした?」
明らかな動揺に、こちらまで戸惑った。
「あの小娘はなんという子じゃ」
「アリスのこと?」
「知り合いなのか?」
「まあ、一応婚約者です」
あ、なんか恥ずかしい。
「そうか・・・・・・・・」
コジロウは、アリスの連撃の方を見ながら、一言。
「これは、早くも見つかりそうじゃ」
「だから、なにが?」
「いくぞ」
コジロウは、さっきまでと違いまともに剣を撃ち合ってきた。
「ん?」
この剣って、アリスがやってたやつじゃ・・・・・。
確か完璧に防ぐには、居合の間合いに入ってきたものだけを弾くんだったよな。
半身になって、片手で構える。
カカカカカンッ!!
ものすごい速さで木のぶつかり合う音が鳴る。
「あれ、、五撃だけ?」
「・・・・・この剣、”円環流”は、腕二本で出来る技ではない」
アリスは普通に最後までやってるらしいんだけど・・・・・・。
それに・・・・・。
「あの小娘が特別なだけじゃ。かつて、イリアと呼ばれた少女が剣神様から受け継いだもの、次の継承者が彼女というわけだ」
「ふーん」
アルベルトは、構えた。
「まさか、お主も!?」
それは、アリスがしたように”円環流”と呼ばれる型の構えだった。
「行くぞ、爺さん」
「全く、なんという時代、なんという才能じゃ」
コジロウは、この時代、その才能に嫉妬しながらも心は穏やかだった。
「あなたの剣を受け継ぐものがこんなにも・・・・・・」
目の前では、少年が初撃目を放ってきていた。
それを弾き、十一からなる剣戟に備えた。
◆◆
ここは、試合会場の観客席の外。
ある出店に人が殺到していた。
「焼き肉丼、一つくれ!!」
「俺も、一つ!!」
「こっちはふたつだ!!」
米屋の店主とアイナが提供する出店では、白米の上にたれ焼きした肉を乗せた”焼き肉丼”が売られていた。
その店から漂う香りに人は我慢できなかった。
一人目の客が、一口食べてから周りの人が次々と購入し、さらに人を呼ぶ。
客の無限ループが止まらなかった。
「うめえ!!!」
客は一口目にみんなそう叫ぶ。
「なんだこれ!!手が止まらねぇ!!」
その声につられてまた一人と客が来た。
そして、この女もまたその一人だった。
私は、世界を旅する美食家。
これまで、数多くの食を食べてきた。
私にはもう食べたことのないものなんてないと思っていた。
しかし、休憩のために寄った聖教国で、不思議なものを見た。
「なに、あれ?」
茶色ではなく白い米の上に、肉が乗っているだけの料理。
あんなのは料理ではない。
そう叫びたかったが、周りの人を見るとほぼ全員がその料理を食べていた。
そして、この漂う香り・・・・・。
「ちょっと食べてみようかしら」
世界的な美食家であっても、この香りには勝てなかった。
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