第10話 願い
「うわ、まぶしっ」
突然の明かりに目を細めた。
その場にいた意識ある全員が空を見る。
「なんで、こんな夜に太陽が・・・・・」
流石に太陽を作り出すなんて、アダムたちしかできないんじゃないか?
その二人でも、魔力を相当な量使うと言っていた。
二人の言う相当の量は、おそらく相当なのだろう。想像がつかない。
獣人族の月下獣が解けていく中、こちらにあの執事と一人の騎士が歩いてきた。
なぜ、騎士と歩いているのかとか、色々聞きたいことがあったが、隣を歩く騎士がちょっとやばかった。
おそらく常から強いのだろう。それは、見ればわかる。
しかし、身体能力や魔力に始まり、ありとあらゆる能力が上がり続け限界がないように見える。
「アル坊、あれはやばいぞ」
「ラキナ、いつの間に・・・・」
いつの間にかこちらに来ていたラキナも、騎士を見て冷や汗を流していた。
「今まで何してたの?」
「あれじゃ」
そう言って指差した先には、騎士の一人が転がされていた。
結構殴られてんなー。
死んでないよね?
「誰、あれ」
「なんとかハットとかいうやつじゃったような・・・・」
名前すら覚えられてないのか。
「君たち、アーサー王がどこにいるか知らない?」
そうこうしている間に、歩いてきていた騎士が近くにきた。
そう言われ、アーサーさんに目を向けた瞬間、目の前の騎士が消え、倒れているアーサーさんを蹴り飛ばした。
「は、ちょっ・・・・」
速すぎだろ!!
アリスがアーサーさんを回収し、ラキナと二人で騎士の剣を止める。
「何やってんだよ、てか誰?」
「僕?僕はガウェイン。円卓の・・・・いや太陽の騎士だ」
太陽の騎士か。
ならあの太陽を出したのもこの人か。
「なんで自分たちの王を?」
「その人は王なんかじゃない。僕の母を殺した男の血を引く仇だ」
「アーサーさんは関係ないだろ、それ」
「まあ、そうでなくても僕が殺したいだけなんだ。太陽こそが全てだと証明するためにね!!」
ガウェインが剣で斬りかかってくる。
村正で受け止めるが、先程とは比べ物にならない速さと強さで弾かれる。
「太陽が出ている間、僕は神にも匹敵する」
てか、どうやって太陽ほどのものを作り出したんだよ。
気になりすぎたため、久しぶりに鑑定してみた。
『名前』ガウェイン
『種族』半人間 『性別』男 『年齢』ー
『能力』ー(環境依存)
『原初』
太陽生成
『特性』
力蓄積 物理攻撃無効(環境依存) 魔法攻撃無効(環境依存) 状態異常無効(環境依存)
『太陽生成』自ら太陽を生成できる。自然にある太陽と共存可能
「なんだそれ・・・・・」
これぞ、ご都合主義。
最強へとたどり着く最短距離のための原初。
アーサーがこれに勝てていたことの方が驚きだ。
「視ただろ?」
「ああ、視たよ」
「だったら、諦めた方がいい。君達では勝てない」
「・・・・・そう言われると、勝ちたくなるな」
他のみんなも同じようで、全員が珍しく全力モードに入った。
「さあ、始めようか。僕の国奪りをっ!!」
ガウェインが剣を薙ぎ払う。
全てが圧倒的な強さで薙ぎ払われた剣は、暴風を起こしアルベルトたちは吹っ飛ばされた。
◆◆
「おい、ちょっと待て」
パーシバルは斬りかかってくるキリカにそう言った。
「なんだ・・・・?」
「空を見ろ」
「空・・・・・?」
キリカはパーシバルに言われ空を見上げる。
「太陽?なんでこんな夜に」
「あれは、ガウェインだな」
「ガウェイン卿が出てきたのか!?」
アーサー王に最も近く、条件次第ではそれすらも勝ると言われる最強の騎士。
病弱で普段は寝たきりだと聞いていたが・・・・・。
「なんのために・・・・・」
「わからん。だが、強い気配のあるところに向かっているようだな。お前たちの知り合いか?」
「そうだが」
アルベルトたちのことを言っているのなら、間違いない。
「あいつまさか・・・・!!」
「お、おい!!」
パーシバルが突然血相変えて走り出した。
「あいつ、王を殺すつもりだ!!」
「え?」
「少し確認したいことがある。城についてきてくれるか?」
「ああ、いいだろう」
二人は戦いをやめ、城へ駆け出した。
獣人排斥を止める、融和を目指すなど言っている場合ではなくなりそうな予感をキリカはしていた。
「おい、生きてんのか?」
「ん・・・・・・ああ、生きてる・・・・よ」
二人が城の前に着くと、モードレットが倒れていた。
これは、ティア様がやったのか?
「ティア様は無事か?」
「ああ、無事だと思うぞ・・・・・」
よかった。
モードレットは、ここまで一直線に飛んできたのか道に跡ができていた。
それをたどり、目を向けると太陽の光を絶えず吸収し続けているような騎士とアルベルトたちと思われる者たちが戦っていた。
「あれが、最強の太陽の騎士・・・・」
アルベルトたちも全員がとんでもなく強く、自分ではどう足掻いても勝てないことぐらいわかる程だったが、その全員で立ち向かってもガウェイン卿は軽々しく相手をしているように見える。
さらに、その身に宿す輝きは増し続けている。
「おい、キリカ。いくぞ」
「ああ、わかってる」
まだ、大丈夫だろうと、二人は城へと入っていった。
「それで、何を確認するんだ?」
「『聖杯』だ」
「『聖杯』を?」
「ああ、王が使っていたら、今の時点で願いは破綻している。王の気配が消えていないとおかしい」
確かに、『聖杯』はその願いが叶わなかった場合、嫉妬するかのように願いびとの命を奪っていく。
獣人を排除するという願いは、アルベルトに止められ気を失ってしまったことで不可能になった。
「おそらく、あれは『聖杯』ではなかったかもしれない」
「どういうことだ?」
「ガウェインだよ。あいつは、病弱で臥していた。それが、今では王以上の力を手にしている」
「じゃあ、本物の『聖杯』は・・・・・」
「ああ、あいつが使ったのかもしれん。でなければ、満月の夜に歩くことすらできん」
最悪だ。
病弱で臥し、太陽が出ても体がついてこなければ脅威ではなかったが、体が全快の状態で出てこられたら脅威以外の何者でもない。
城内には誰もいなかった。
全員が出張っているのだろうか。
「おかしい。こんなにも力を感じたことはない」
「何がだ?」
パーシバルが王の間に近づくにつれ、不安を募らせていた。
「『聖杯』の力が強すぎる。これは、とんでもないことだぞ」
「強すぎたらどうなるんだ?」
「『聖杯』はその特性上、願いの強さに応じてその代償も大きなものとなる。だが、この強さはとんでもないことを願ったな」
「とんでもないこと・・・・・」
最強の騎士が『聖杯』に頼ってまでするとんでもない願い。
想像の範疇を超えたものでなければと思っていたが、どうやら軽く超えてきたようだ。
しばらく行くと、王の間が見えてきた。
「あれが、『聖杯』か」
パーシバルは返事をせずに『聖杯』の前に膝をつく。
”『聖杯』よ。我が同胞の願いを示したまえ”
円卓の騎士の祈りに応えるように『聖杯』が輝きだす。
そして、『聖杯』は過去の映像を頭の中に直接映し出す。
〜モードレットが城の壁に激突したあと〜
ガウェインは眠りから目が覚めた。
彼の部屋は、太陽の光を効率よく注ぐために天井が透けている。
病弱だと世間に公表したのは、最後にアーサー王と戦ったあと。
一騎打ちで力を使い果たし、彼女の剣の前に敗れた。
数年分の太陽の力を使い果たしても彼女には勝てなかった。
彼は初めて、他人の才能・力・名声に嫉妬した。
唯一、理性ではどうにもならない感情をとんでもないレベルで感じてしまった。
心が汚れていくのを深く感じ抗おうとしたが、嫉妬の炎は止まらず太陽の元、炎天下の中で自分だけが水を手に入れられないようなものだった。
その心の隙を突くようにある存在が接触してくる。
自らを最高神だと言い、目的のために協力して欲しいと。
そのための力を与えると言ってきた。
その力こそ太陽生成。
原初はシステムから外れた力で神にも認知できない。
しかし、神たる所以は原初よりもタチの悪い力を持っているからに他ならない。
”神権”
信仰を力に変え、加護という名の下で器に合わせた力を授ける力。
そして、全てを与えながら全てを奪う力。
器の小さいものには、スキルとして力が与えられ、そうでない者は超越した力へと彼ら自身が進化させる。
それがユニークスキル然り、原初だ。
そして、これは最高神の加護に限ったことだが、その力は消えることはない。
力を与えてもらった見返りとして頼まれたのは、この国の海底奥深くに居座る『リヴァイアサン』の討伐。
それはアーサー王に勝つよりも難しいことだった。
アーサー王に勝てたとしても、太陽の光が届かない海底では一瞬で海の藻屑になるだけ。
だから彼は、最高神が作った彼自身の精神世界で擬似的に鍛え始め、特性まで手に入れた。
それにより、力の蓄積が可能に。そして、環境次第では攻撃や状態異常が効かないようになった。
ガウェインは、眠りにつく前のことを思い出しながら、誰も見つからないように城を歩き『聖杯』の元へ向かった。
「『聖杯』よ。我が願いを聞き入れろ」
”汝、何を望む”
「王の首と海龍が守る『鍵』だ」
”承知した。汝の願いを叶えられるように未来を操作する”
そう言って、『聖杯』は輝きだす。
その光の応じるように、円卓の騎士が王の間に訪れ、彼をアーサー王と勘違いし戦いに身を投じて行った。
ここまでが、最高神に言われたこと。
ここからは、母の仇を討つために、その血筋を根絶やしにする。
映像はここまで。
「なんてことを・・・・・」
二人はしばらく呆然としていた。
王を狙っているのは分かったが、まさか海龍まで狙っているとは思わなかった。
そして、願いを終えたガウェインは・・・・・。
自分の力を分け与えた娘の気配を感じるところへ向かう。
自身が力を存分に振えるようになったことで、その娘はもう必要ない。
父が、女二人を後回しにすると言ったため、本来の目的である王の元へと向かった。
そこで、なぜか倒れている王と、王に近い強さを持つ者たちと邂逅する。
「こんなもんか?」
「何言ってんだ、これからだよ!」
たった一振りで、えらく遠くまで飛んでいった彼らをみて少しがっかりした様子で言い放った。
王を倒したと思われる男が、斬りかかってくる。
確かに強い。
格下相手に対してだったら、特性も流動する体も役に立っただろうが存在力の強い相手には通用しない。
男の刀を剣で受け止め、力任せに叩きつける。
刀が地面に突き刺さったのを確認して、その首を取ろうとした。
「始伝:降一閃!!」
意識の外から、見えない何かが降ってきた。
ギリギリのところで交わしたが、すでに足が迫っていた。
かわしきれずに蹴り飛ばされる。
「誰だ・・・・・?」
「アメノ・サクラ、彼らの仲間だ」
「おかえり、サクラ」
「ああ、遅くなって申し訳ない」
ダンジョンに潜っていたサクラがこの場面で戻ってきた。
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