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天地創生という名の  作者: 神村大也
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第4話 悠久の時

『私では全然かなわなくなったわね。この世界でいうのもなんだけどあなたの強さは化け物じみたわね。』


いつもの修行のあと、エミリアがシンをからかいながら嬉しそうに笑う。


『そうかな。エミリアのおかげだよ。ありがとう。お礼に今日、ドリームで食事をしよう。』


シンは照れながらエミリアを誘う。


『行く行く。久しぶりね。何着ていこうかな~。』


エミリアが名付けたこのパラダイスに来て、もう随分経つ。


この世界には太陽も月もなく時間の感覚はないが、エミリアと思い出を数多く積み重ねてきた。


シャワーと着替えを終え、エミリアはシンの腕に抱きつき街まで歩きはじめた。


このドリーム地方で恐れられているのはオークであり、オークより強い魔界の住人はいない。


オークから街を守るため、ドリームの入り口はオーク返しという広大な迷路が広がっている。


オークはパワーはけた外れだが、知能は低いため迷路で混乱させてあきらめ返すような仕掛けである。またこの迷路には出口がないため間違えて街に入ることもない。


知能の高いヒトが街を守るために作ったものであり、そのヒトは迷路の脇にある秘密の扉から出入りしている。


シンとエミリアはここを通るたびに、ヒトの知恵はすごいと話合いながら門をくぐる。



街に入るといつものようにエミリアは声を掛けられる。


『エミリアさん、今日もセクシーでお綺麗ですね。シンばかりではなく、たまには俺とデートしてくださいよ。』


『ごめんなさい。私じゃじゃ馬だからシンくらい強くないと乗りこなせないの。シンより強くなったらね。』


エミリアに声をかけた男がシンをじっと睨む。


『おいおいエミリア。俺を理由にしないでくれよ。』


シンは苦笑いする。


『いいじゃない。この街であなたより強い男はいないでしょ。みんなもよく分かっていることだから傷つけずにお断りできるわ。それより街の女のヒトと浮気したら許さないから。』


シンは身長が190センチ近くあり男前で理想的な筋肉質の体型で、街でも有名人となっていた。


エミリアも絶世の美女と言われ、誰しもがうらやむカップルであった。


賑やかな街でショッピングを行い、ディナーを楽しんだあとパラダイスへ戻った。


2人で海を眺めならシンは口をひらいた。


『俺、このままエミリアと一緒に、ずっとここに住もうかな。』


エミリアは黙ったまま海を見つめていた。


シンは期待と違う黙ったままのエミリアの反応に居心地の悪さを感じ、期待通りの返事が欲しくて聞き直した。


『エミリア・・・どうかな。』


『・・・だめよ。あなたはここを旅立たなければならないわ。』


エミリアは立ち上がり、棚から何かを取り出し差し出した。


『命のレイピアよ。


この剣も刃と柄の間に石が埋め込まれ赤い炎が揺らめいているわ。


あなたが青い石を持って初めてここに来た時、この瞬間が来ることを予感していたわ。


私がここになぜ来たのかも、ここに来た時レイピアが砂浜に刺さっていたことも、ここで水の魔法が使えるようになったことも、すべてあなたが始まりの場所として旅立っていくため。


きっとあなたは大きな使命を背負っているのよ。』


エミリアの反応に、シンは感情的になり反論した。


『なんだよ、それ。


俺はその使命とやらのためにどれだけの悲しみと苦しみを繰り返さなければならないんだよ。


突然人間界から追い出され、好きだった幼なじみとは離れ離れになり、訳のわからない世界に堕とされ化け物と戦い傷ついて、そして君と出会って・・・今度は愛するものと別れなければならないのか・・・。


すべてを犠牲にするほど大事な使命なのか。これが俺の運命なのか!!』


少し間を置いて、エミリアはやさしく微笑んで答える。


『ごめんね、シン。あなたを困らせたくて言ったんじゃないの。明日また話しましょう。』


エミリアは頭を抱えているシンをやさしく抱きしめた。



目覚めるとエミリアはいない。


机の上に手紙が置いてある。



~ シンへ ~


あなたがこの世界にきて、人間界の時間でいうと3年以上は経っていると思う。


私はきっとあなたより、ずっと一緒にいたい気持ちでいっぱいです。


ずっとずっといつまでもずっと・・・一緒にいたい。


でも、それを口にしてしまうと私は思いを抑えられなくなる。



あなたは旅立たなければならない。


私はそれを邪魔する訳にはいかないの。


この先も大きな使命のため、あなたとの出会いを待っている者たちがたくさんいるはず。



ごめんなさい。


こんな手紙さえも書くことは望ましくないのに、手紙で気持ちを抑えないと我慢できそうにないから。


出会った時に約束したネックレスを作るため材料を探しにオークの森へ行ってきます。


ネックレスを作ると別れが来るようでずっと作れずにいたの。


命のレイピアをあなたに預けます。すべてが終わって帰って来ることが出来るなら返しに戻ってきてね。


ずっと待ってるから・・・。


                                         エミリア



手紙が涙で濡れて、ところどころ文字がゆがんで見える。


エミリア・・・。


エミリアの悲しみが伝わり動けずにいたシンに突然不安がよぎる。


オークの森!?武器も持たずにいったのか?危なすぎる。


シンは不安な気持ちをかき消すように命のレイピアを片手に全力で駆け出した。


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