10話 見えない旅路
『シンさん、この砂漠はいつまで続くんだい。』
エマがぼやいているとダルクが答える。
『あ、兄貴に黙って着いていくんだ。』
『そんなことは分かっているんだよ。うるさいね。』
ダルクとエマのどうでもよい会話が続いている。
ダルクはシンを兄貴、エマはシンさんと呼ぶようになっていた。
『あ、兄貴は人間なのになぜこの世界にいるんですか。へ、変なこと聞いてすみません。』
ダルクが気まずそうに尋ねた。
『分からない・・・。
旅が始まる前に打倒・復讐・達成、なんでもいいから明確な目的や目標、自分がここにいる理由が分かればどれほど気持ちが救われれるのか・・・。』
強者のシンが本音といえる弱音を吐いたことにダルクとエマは驚くと同時にダルクがポツリと口にした。
『す、すみません・・・。』
それからしばらく歩いていると、砂漠の中に深い緑の森とその中央に城が見える美しい風景が目に入ってきた。
ピアラ自然要塞都市。
街全体が大きな森に囲まれ外側を高い城壁で守られている。
森の内側に大きな城と城下町があり賑やかで栄えている。
中心街には大きな花束のオブジェに囲まれた美しい女性の持つ瓶から溢れる噴水があり、街の名所となっている。
街の中心に小高い山が立っており、そこに美しい白城が立っている。
この街の特徴は女性主権である。
要塞都市の入り口に大きな門があり、女性兵士が検問を行っている。
人気の都市なのか男性中心に検問待ちの列が出来ている。
その列でしばらく待っていると目の前の森からパタパタと鳥のような生き物がこちらに飛んできてシンの肩に止まった。
『よう。俺は龍神ペクヨンだ。よろしく。』
シンの顔を見ながら突然挨拶してきた生き物はペクヨンと名乗る小さなドラゴンだった。
シン達の後ろに並んでいた態度の悪い3人組が小馬鹿にして笑いながら絡んできた。
『なにが龍神だ。お前みたいなチビが龍神な訳ないだろう。焼き鳥にして食べてしまうぞ。』
ヘラヘラ笑っている3人組にペクヨンと名乗るドラゴンが言い放った。
『お前ら・・・。焼くぞ。』
『やってみろよ。小鳥サイズのドラゴンさん。』
そう言って爆笑している3人に向かって小さなドラゴンは口を開けた。
ドラゴンの口がピカッと光った瞬間に3人を大きな高熱度の炎が包み、声を上げる間もなく3人とも黒焦げになってしまった。
検問していた兵士が炎に驚き駆け付けた。
『3人が死んでいるではないか。何があった?』
シンはドラゴンの話をしようとした時、頭の後ろからツンツンつつかれしゃべることができなかった。
冷や汗をかきながら巧みにシンの後ろに隠れる小さなドラゴンに唖然としていたエマが割り込んで回答し始めた。
『た、態度の悪い3人がマッチの炎に3人の魔力を集めてどこまで大きな炎を作れるかと遊んでいたところ魔力が暴走して燃えてしまったようです。』
兵士は納得したのか死体を抱え、その場を去った。
ドラゴンはホッと胸を撫でおろしシンにむかって怒り始めた。
『この野郎が。お前は鬼か。こんなかわいいドラゴンを売ろうとしやがって。守らんかい。』
無口なシンが珍しく感情を出して怒って言った。
『なんだと。何を俺の頭の後ろで隠れてるんだ。しかもツンツンうるさいんだよ。簡単に丸焼きにしやがって。この暴走ライターが。』
ヒートアップする両者をダルクとエマが落ち着かせて、あらためてドラゴンに話をきいた。
『俺は龍神ペクヨン。体と精神を分離させており今は精神体の姿だ。そして一番大事なことを言うぞ。俺はかわいくてと~っても偉いのだ。』
ウンウンとうなずきながら満足気にしている。
うなずきながらシンが答えた。
『そうか。半分なんだな。じゃあこれからペクだな。お前の名前はペクだ。行くぞペク。』
『ペクヨンだ!!燃やすぞ。』
ケンカしながら、いきなり仲良さそうにも見える。
ダルクとエマは顔を見合わせて笑いながらシンの後ろをついて歩き検問所を通過した。




