王の庭園
ある日、都を著名な冒険家が訪れ、王は退屈な政務の気晴らしにと、さっそく晩餐に招いた。晩餐の席で、旅の話を催促された冒険家はこう言った。
「王国の果てで世にも珍しい宝物を見つけました。陛下に差し上げたいのですが、この場に持参できません。と申しますのも、それは頭までの背丈がちょっとした砦ほどもある鋼の巨人だからです。地元の村の語り部が伝えるところでは、かつて巨人は大地を引き裂き天を割ったといいます。もし巨人をよみがえらせることができれば、畏れながら、神にも等しい力によって、陛下の御名は世界に轟くでしょう」
さて、将軍に命じて調べさせたところ、まさしく冒険家の語ったとおりのものが辺境の地にそびえ立っており、伝説もまた口から出任せなどではなかった。しかし並外れた重さと堅牢さのために、その場から動かすことさえ叶わなかったので、王は国じゅうに触れを出させた。
“鋼の巨人をよみがえらせた者に褒美を与える”
最初に馳せ参じたのは石工だった。石工は何輌もの荷馬車で部品を持ち込み、王宮の庭にみごとな石像を建ててみせた。石像は鋼の巨人のありとあらゆる部位を精密に計測して寸分違わず再現した傑作だったが、しょせん動かぬ石像にすぎなかった。
次にやってきたのは金細工師だった。金細工師の巨像は全身を覆う黄金の上に施された浮き彫りや色とりどりの宝石で飾られ、本物の巨人よりもはるかに燦然と輝いていたが、やはりそれでも豪華な張りぼてにすぎなかった。
こうした調子で、王国きっての職人から怪しげな魔術師まで、いろいろな身分職能の者が皆それぞれに技巧を凝らし、王の前で鋼の巨人を模倣しようとした。そして、そうするうちに、王宮の庭には鋼の巨人を真似た巨像がいくつもいくつも建ち並んでいった。果ては巨像の建ち並ぶ庭を題材に絵を描く者や作曲する者も現れ、どれをとってもかけがえのない芸術作品の数々が鋼の巨人をきっかけに生まれたが、王の狙いからすれば、それらはひとつ残らず役立たずだった。
……今日で何百体めになるだろうか?他より少しでも目立たせようとして、踊り子の一団が巨像を囲んで舞っている。庭園で繰り広げられるお祭り合戦をバルコニーから眺め、王は深く溜息をついた。褒美目当てで競うのはいい。だが、いくら太古の技術が手に負えないからといって、王を欺くまがい物の建造にばかりかまけていては何の意味もないではないか。
神の力は、手を伸ばせばすぐそこにあるのに、愚か者どものせいで、無用の巨像達となにも違わなかった。そして明日もまた、王の庭園に新たな巨像が建てられる。