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王宮訪問 〜アリッサ視点〜

(アリッサ視点)


 私はアリッサ。

 公爵でアメリアの母である。

 今日は、アメリアを連れての初めてのお出かけ。

 義妹への娘のお披露目だ。


(積年の恨み?晴らさずおくべきか!)


 私よりも半年ほど早く妊娠していた義妹(ベラ)は、母親の余裕?みたいなのを出して私を見下してくるし……。(ただの被害妄想)

 旦那のディビッドは妙に早く帰ってくる日が増えるし……。(こっちは事実)


 とにかく、大変だったのだ。


 そんな私の苦労も報われ……いや精神的な苦労ってことだから!

 とにかく! こんな私も可愛い可愛い娘を授かり、無事母親となることができたのだ。

 で、今は娘との初お出かけ&初お披露目で、王宮に向かっているという訳。


 ……そう、王宮。


 苦手なんだよね、あそこ。

 何かみんな偉そうだし、実際嫌な視線投げつけてきたり、直接嫌みとか言ってくるのもいるしね。

 はっきり言って気分悪い。

 まあ、元平民だし、“傾国の紅き魔女”だしね。

 大体何だ? その“傾国の赤き魔女”って。

 本当、貴族って大袈裟な表現好きだよね。

 ディビッドが勝手に押し掛けてきただけだっていうの。

 そもそも、それだって私目的じゃないんだから、悪いのはディビッドとお父さんじゃん。

 まったく、あの魔法オタクどものお陰で私は大変だっていうの。


 そんなことを考えながら、ふと腕の中の我が娘を見る。

 彼女は興味深げに初めて見る外の世界を眺めていた。

 続く街並みはのんびりとした佇まいを見せながらも活気に溢れ、この国が豊かであることを物語っている。

 全体に石造りの建物が多いが、木造のものも見られる。

 どの家も作りがしっかりとしていて、この国の技術水準の高さが伺われた。


 そんな街並みを馬車はゆっくりと王宮に向かって進んでいく。

 やがて、馬車は立派な門を潜る。

 そして、現れる平屋の大きな建物の数々と、それらを繋ぐ回廊。

 その中でも一際豪華な建物の前に馬車は横付けされた。


「さて、ここからが問題だ」


 一度深呼吸して心を落ち着けた私は、手の中の娘を侍女のサマンサに手渡すと、ゆっくりと馬車を降りていく。


「いらっしゃいませ。アリッサ様」


 建物のエントランスまで迎えに来てくれていたベラの侍女が、私たちを王宮の奥まで案内してくれる。

 そして聞こえてくる悪意に満ちた囁き。


「……傾国の魔女……」

「……平民の小娘が……」

「……大した魔力でもなかろうに……」


 そして、新たに加わる悪意ある言葉。


「なんだ、あの薄い髪の赤子は……」

「あの女の子供なのか?」

「仮にも王家の血を引く子供が嘆かわしい」


 私の事はいい。もういい加減馴れた。

 でも、娘のことまでとやかく言われるのは許せない!


 思わずブチキレる寸前、王宮の最奥、王の居住区の入り口に辿り着いた。

 案内されたのは王宮の奥深く、中庭にひっそりと佇む小さな四阿(あずまや)

 もちろん周りに悪意を振り撒く者もおらず、中では黒髪の美しい女性が一人、のんびりと午後のひとときを楽しんでいた。


「王妃様。アリッサ様がお出でになられました」


 その声に振り向き、ゆっくりと立ち上がった女性は、こちらににこりと微笑む。


「いらっしゃい、アリッサ公爵。よく来てくださいました」


 それに、貴族らしい優雅な会釈とともに返事を返す。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます。ベラドンナ王妃殿下」


「…………」

「…………」


 しばしお互いに見つめ合って……。


「ふっ」、「くっ」


 互いに、今度は自然な笑顔で微笑み合うと、ベラが気軽な様子で席を勧めてくれた。


「久しぶりね、アリッサ。元気にしてたかしら?」


「まあね。妊娠中とかアメリアを産んだ直後はちょっと大変だったけど。

 今は娘との平穏な日々を満喫しているわ」


「それは羨ましいことで。

 こちらは政務政務で、ろくに息子を構ってやることもできないわよ。

 まあ、ディビッド様も何かと手伝って下さるし、陛下の周りも最近はだいぶ落ち着いたけど」


「へ~、それで2人目を作ってみた訳ね」


「うッ、耳が早いわね」


「別に。ディビッドが期待した目で教えてくれたから、軽く睨んでやっただけよ」


「本当に相変わらずね。いくら結婚したとはいえ、仮にも元王族で陛下のお兄様なのよ」


「関係ありませ~ん。平民なんかと結婚したヤツが悪いのよ」


「まったく……。 まぁいいわ。何だかんだで昔から仲がいいのは知ってるしね」


「仲がいいって……。

 そりゃ、今はそれなりに上手くやってるとは思うけど、はっきり言って私との結婚なんて成り行きみたいなものよ。

 たまたま自分が望んだ生活が、私との結婚で手に入りそうだって考えただけで。

 言ってしまえば、私なんておまけよ、おまけ。

 尊敬する先生の子供っていうだけなんだから」


「そう思っているのはあなただけよ。

 大体、成り行きで王太子が王位継承権捨てて平民と結婚出来るわけないでしょ」


 そんなとりとめのない話をしながら、2人は思い出す。

 まだベラドンナがディビッドの婚約者候補であった頃。

 アリッサが大賢者の娘と呼ばれながらも、ただの平民の学生として学院に通っていた頃。

 ディビッドやベラドンナ、アリッサがともに過ごした学院での日々のことを。



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