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【書籍2巻出版記念】ママ友会議1 〜アリッサ視点〜

2巻出版記念SS!!

アメリアがクボーストへ向かった後の、王都での一幕です。

(アリッサ視点)


「ご機嫌よう、アリッサ」


「……ご機嫌よう、ベラ様」


 そんないつもと変わらない挨拶から始まったお茶会だけど……。

 流石に、今日はちょっと緊張するわね。

 この交渉に(アメリア)の将来がかかっているとか……。

 大体、政治向きの交渉はディビッドの仕事でしょうに!

 まぁ、ベラの担当は私だから仕方ないんだけどね。

 それにしたって……一体、何なの、この計画書は!?


『お母様にはこちらの事業計画書を渡しておきますので、王妃様への根回しをお願いします』


 簡単に言ってくれるわね。

 ほんと、我が娘ながら無茶振りが過ぎるわよ。

 これってつまり、他国との商取引の全権を寄越せって言ってるのと同じじゃない。

 外交に疎いそこらのボンクラ貴族ならともかく、ベラは絶対に気付くわよ。

 リスクが無いなら、海路と陸路では海路の方が圧倒的に有利。

 しかも、この国にはセーバ以外に大きな港を作れそうな場所もない。

 つまり、セーバの一人勝ちってこと。

 今はまだ、ベラも陛下もセーバの立地的な価値に気がついてないから放置されてるけど……。

 この計画書を見れば、嫌でもその価値に気づく。

 場合によっては、その時点でセーバの町は王家に取り上げられてしまうわね。

 さて、どうしたものかしら……。

 ベラには隠し事はしないで、協力者に仕立ててしまった方がいいって言ったのは私だけど。

 ここで失敗すると、かわいい娘(アメリア)の今までのがんばりが無駄になっちゃうのよね。

 そんなこと、母親として絶対に許されない!

 普段は手伝ってあげられないんだから、こんな時くらい母親らしいことをしてあげないと……。

 アメリアをセーバ領の次期領主として周囲に認めさせる。

 そのためには、アメリア自身の力でセーバ領を発展させたと証明する必要がある。

 ディビッドはもちろん、私が手を貸しただけでも難癖をつけられる可能性があるのよねぇ。

 私の生まれは確かに平民だけど、それでも普通にこの国で貴族ができるくらいの魔力はあるからね。

 つまり、私がアメリアの領地経営を手伝った時点で、アメリアの功績は魔力のある貴族あってのものって、すり替えられてしまう可能性が出てきてしまう。

 しかも、この国の貴族(奴ら)は本気でそう考えそう。

 アメリアが子供だってのも勿論あるけどね。

 魔力を持たない者は何もできないっていう思い込みが強すぎるのよ。

 だから、私がアメリアの仕事をちょっとでも手伝っているところを見れば、アメリアのやったことは全て私がやったことって考えるに決まっている。

 お陰で、私はかわいい娘に何もしてあげることができない。

 ほんと、アメリアちゃんには、この国の魔力至上主義を是非とも叩き潰してもらいたいわね!


「で、今日はどんなおもしろい話を聞かせてくれるのかしら?」


 ベラとの取り止めのない世間話を続けつつ、話を切り出すタイミングを見計らっていたのに。

 先手を取られた。

 話を聞いてあげるっていう展開はちょっとまずい。

 理想は、こちらが教えてあげるっていう流れだ。

 会話の主導権を取り戻す必要がある。


「そうねぇ、王家にとっても悪い話ではないと思うわよ」


 下手(したて)に出てのお願いは悪手だ。

 実際、この話はモーシェブニ魔法王国を大きく発展させる可能性に満ちている。

 王家(ベラ)にとっても、十分に旨みのある話だ。

 そして、この計画を実現させることができるのは、アメリアだけだと思う。

 どこで覚えてきたのか知らないけど、いや、夢の中か……とにかく、アメリアの話す都市計画や貿易構想は連邦の大商人も裸足で逃げ出すとんでもないものだった。

 そもそも、あのちっちゃな漁村(セーバの町)を貿易港にするって発想すら私には思い浮かばなかったっていうのに、あの娘ときたら……。

 預かった事業計画書にはそこまで詳しいことは書いてなかったけど、あの娘の頭の中には単なる貿易港では収まらない壮大な都市計画や世界規模の事業展開までが描き出されているように感じた。

 あんなこと思いつくのはこの国で、いや、世界中探したってアメリアだけだと思う。

 だからこそ、娘云々を抜きにしても、本気でこの国を変えたいのなら、この事業はアメリアに任せるべきだ。

 問題は、ベラがそれをどこまで信じてくれるかなんだけど……。


「“王家にとって”ねぇ……。

 まぁ、いいわ。アリッサがそんな政治向きの話を持ってくるなんて、どうせ(アメリア)絡みなんでしょうけど……。

 あなたが緊張するなんてどんな話か、確かに興味はあるわね。ぜひ聞かせてちょうだい」


 う〜ん、こちらの緊張は見透かされていたか……。

 まぁ、でも、話を真剣に受け止めてくれる体勢は作れたかな。


「まずは、これを見てちょうだい」


 そう言って、私はアメリアから預かったセーバの町の事業計画書をベラに差し出した。


「……結構な厚さね」


 そう!

 私も最初は驚いたわよ。

 もう、ちょっとした小冊子くらいの厚さは十分にある。

 そこには、セーバの町を貿易港にすることによる王国の今後の展望のみならず、王家にとってのメリット、デメリット、今後の事業戦略や財務計画、発生する可能性のある国内外の諸問題とその解決案まで。

 いっそ、これ、そのまま本にして学院の教科書にしちゃえば? ってくらいに、精緻かつ大胆な考察がされている。

 さすが我が娘! って言いたいところだけど……。

 ここは、さすが女神の愛弟子って言うべきかな。

 あの娘(アメリア)の政治や経済に対する視点って、きっと数百年は先のものよね。

 そんなトンデモな発想を、さも当然のように周囲に投げてくるんだから、受け取る側は大変よ。

 田舎育ちで世の中の情報にも疎くて、思考もまだ柔軟な子供たちだからそれなりに受け入れてくれているけど……。

 周囲の大人はほんと大変よ。

 アルトさんなんて、自分でもよく理解できていないものをどうやって町の住民に説明すればいいんだって、よく頭を抱えてるもの。

 

「はぁ〜〜〜」


 ここにも、頭を抱えちゃってる大人がいるわね。

 気持ちはわかるわよ。

 私だって、事業計画書(それ)を初めて見た時には頭を抱えたもの。


「念のため確認するけど……これ、本当にアメリアが書いたのよねぇ? ディビッド様ではなく?」


「ええ、信じられないかもしれないけど、間違いなくアメリアが書いたものよ。ディビッドは一切関わっていないわ」


「内容も内容だけど……そもそもの話、こんな理路整然とした事業計画書を子供が書けるものなの?」


 その気持ちもわかる。

 ディビッドからもアメリアの作る書類は分かり易いって散々聞かされていたけど。

 こんなの見せられちゃうとねぇ……。

 アメリア曰く、この国の貴族が出す計画書の類は、計画でもなんでもないらしい。


『あんなのはただの願望です! こうしたい、ああしたい、こうなったらいい、ああなったらいいって……。目標達成のための具体的な道筋が何も書かれていないんです。堅苦しい言葉で誤魔化してますけど、あんなの子供の夢と変わりません!』


 あれはまだアメリアが王都でディビッドの仕事の手伝いをしていた頃か……。

 アメリアの愚痴を聞きながら、4歳児が“子供の夢と変わらない”とか言う? って、笑っちゃったけど……。

 確かに、これと比較しちゃうと、王宮の文官が作成する書類が全て子供のお手紙に見えちゃうわよね。


「何年か前にディビッド様が新しい書類の作成方法を提案されて、王宮内で作成される書類がだいぶ見やすくなったって感じてたけど……。あれって、本当にアメリアの仕業だったのね」


「多分、アメリアが王都でディビッドの書類仕事の手伝いをしていた頃ね。

 最初はね、アメリアがディビッドの仕事の邪魔をしてないか心配だったのよ。でも、ディビッドが嬉々としてアメリアに仕事を手伝わせてたから……。

 まぁ、ディビッドがいいならいいかって思ってたんだけどね。これを見ちゃうと……。あいつ、本気で幼い娘を秘書としてこき使ってたんでしょうね……」


「まぁ、そこは大目に見てあげなさいな。お陰で王宮の事務処理もだいぶ楽になったわ。

 あれはディビッド様の功績ということになっているけど。そういう意味では、王家としてもアメリアには幾らかの借りがあるってことになるわね……。

 いいわ、協力しましょう。どちらにしろ、こんな計画を任せられる人材なんて、アメリア以外に心当たりもないのだから選択の余地はないわ」


 よし! 言質はとった!

 お母さん、がんばったわよ!


お久しぶりです。

お陰様で、本日『教育したい!』2巻を発売することができました!!

これも、応援してくださった皆様のお陰です。

大、大、大感謝です!!

さて、今回お届けする2巻ですが、なんと! レジーナ視点での書き下ろしが60ページほども含まれます。

アメリアが王都、クボーストを旅している間の、セーバの町サイドの動きになります。

読んでいただけたらうれしいです。

なお、今回の出版告知SSですが、今日、明日、明後日の3日連続投稿の予定です。

こちらもお楽しみいただければうれしいです。


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転生幼女は教育したい!2巻
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転生幼女は教育したい!1巻
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