協力者たち
「では、そういうことで。
王妃様は時間を稼ぎつつ王都での最終決戦に備えて下さい」
王妃様と今後の打ち合わせを済ませた私は、各方面へ指示を出していく。
まずは倭国からだ。
「……う〜ん、、宮中の職人さんたちにも相談してみるけど、流石にそのサイズの武具を今から50は厳しいかな。
アメリアちゃんのお陰で必要な殺生石の量は何とか確保できると思うけど」
「私もタキリ様に同感です。アメリア先生のご要望には是非応えたいところですけど、流石に半月足らずで50の剣と盾というのは…」
倭国の殺生石関連の開発責任者であるタキリさんと、私の殺生石防具開発の後、そのまま修行のため倭国に留まっているディアナさん。
ともに短期間でそれだけの武器を揃えるのは厳しいと言うけど、こちらもそれは分かっている。
別に御神刀や殺生石入りのコートのようなしっかりとした装備を作って欲しいなんて、そんな無茶は私も言わないよ。
「いやいや、流石にそんな短期間でしっかりとした武器なんて無理なのは分かっていますよ。
作ってもらいたいのは剣ではなくて棍です。
そんなに凝った物ではなくて、ぶっちゃけただの頑丈な棒で大丈夫です。
盾の方には殺生石を使ってもらうので大変でしょうけど、こちらもそれほど凝った物は必要ありません。
殺生石の板にしっかりとした持ち手を付けてくれる程度で十分です」
まぁ、それなら何とかなるかと急ぎの仕事を引き受けてくれるタキリさんとディアナさん。
できた武器は、大陸横断鉄道で魔法王国王都まで送ってもらうよう手配した。
さて、次は…
「はい、トッピークの避難民に対する食糧支援は、既にハーべさんとユーベイさんの方で手配済です」
「呪鉄の方はどう?」
「はい、こちらもウーゴさんが意地でも間に合わせるとはりきってますから、大丈夫だと思います」
「そうしたら、アディさんに王都に向かう兵の選抜もお願いしておいて。
未成年者を除くゴーレムバトルの上位ランカー達にも声をかけてね。
あと、バギーとバイクの方は使えそうかしら?」
「はい、こちらもアンちゃんとユーノさんから問題無いとの報告を受けています。
大森林とドワルグの鉱山、両方での実地試験をクリアしたそうです。
アンちゃんが太鼓判を押してましたから、まず間違いないかと」
「なら大丈夫ね。
そうしたら、他の魔道具と一緒にこちらに送ってちょうだい。
それから……」
アメリア商会副会長であり、私が留守の間のセーバの街の司令塔をお願いしているカノンに必要な指示を伝えていく。
「結構やること多いけど、大丈夫?」
「はい、問題ありません。アメリア様からの指示となれば皆の意気込みも違いますし、最近は商業ギルドのサリーも色々と協力してくれていますから、商会関連の仕事はかなり楽になりましたし。
レボル商会やマシュー商会も協力してくれてますので、人手は十分です。
あとは、学園でバイトでも募集すれば何とでもなります!」
力強いカノンの言葉に安心する。
実のところ、今のセーバの街の通常業務で、私が直接指示を出すようなことは殆どない。
偶に旅先で思いついたアイディアや気になる情報なんかを伝えて、「こんなことできないかなぁ?」とか「こんな感じにしたい」とか言うと、後は勝手に話を進めてくれる。
カノンだけじゃない。
農業食糧部門はハーべ君、海運水産部門はユーベイ君、工業生産部門はユーノ君で技術開発部門はアンさん。
みんな私が最初にセーバの街の村おこしを始めた時からの初期メンバーだ。
それに、サリーさんを始めとしたセーバリア学園で育った生徒たちもいる。
今のセーバの街を支えているのは彼らだ。
すっかり頼もしくなった教え子の成長が嬉しい反面、少し寂しくもある。
もう、私がいなくても今のセーバの街は十分にやっていける。
「はあ? そんなのアメリア様がずっとセーバの街を放置して旅に出ちゃうからですよね?
今は魔動列車もあるんだし、ちょくちょく帰ればいいと思いますよ」
「みなアメリア様のやりたい事を邪魔したくないのです。
セーバの街の住民は皆アメリア様に感謝していますから、アメリア様が楽しみにしていた旅を中断してセーバの街に戻らなければならなくなるような、そんな事態には絶対にさせないと意気込んでいます」
「私が偶にサリーと通信すると、毎回のようにお姉さまの旅の様子を聞かれますよ。
サリーだけではなくて、サリーの周りの人たちもお姉さまの様子が気になるようで。
商業ギルドに来る街の商人や職人にお姉さまの旅の話をすると、それだけで交渉事がスムーズに進むと、サリーが冗談混じりに言っていました」
「なんだかんだでセーバの街の人間は、アメリア様の事が大好きだからな。
必要とされていないんじゃなくて、みんなアメリア様の手を煩わせないよう必死なんですよ。
アメリア様の期待に応えるっていうのは、もうセーバの街の伝統みたいなものですからね」
もう長いこと私の旅道楽に付き合ってくれているレオ君やレジーナ、サラ様もだけど、この旅を陰から支えてくれているセーバの街の人たちにも感謝しなくちゃね。
いや、それは王都にいるお父様やお母様、王妃様、ついでに国王陛下にもか。
国的には目一杯利用したいはずの私に対して、うまく情報操作しつつ王国貴族が下手なちょっかいをかけないように調整してくれているんだからね。
私を王国に呼び戻そうとか、何かをさせようとか、旅に出てから今までにそういった話が一度も出なかったのは、王家や王国に対する私の印象を両親や国王夫妻が上手く操作してくれているお陰だ。
今回、帝国が私の介入をそれほど警戒していないように見えるのも、王家の印象操作が貴族社会で上手く働いているのが大きいと思う。
セーバは王家とは仲が悪い。こちらからちょっかいを出さなければセーバは動かない。
この状況になっても私が連邦から動かないことで、恐らくその印象はより深まると思う。
そこにつけ込む!
思い浮かべる計画におおよその目処をつけた私は、議長様にある話を持ちかけるのだった。




