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旅の終わり

 今日、初めて鏡を見た。

 正確には、鏡に映ったこの世界の自分の姿を。

 鼻筋はスッとしていて、目はぱっちり、口は小さく、透き通るような肌にピンクの髪、紫の瞳。

 何、この可愛い子!ってくらいに可愛い。

 断言できる。

 この子は絶対に美人になる!

 赤ちゃんなんて、みんな可愛いに決まってる?

 どの子も同じ?

 いやいや、そんなことはない。

「あなたも小さい頃は可愛かったのよ」って、母に見せられた私の赤ん坊の時の写真は、はっきり言って不細工だった。

 あれは、何気に衝撃だったなぁ……。

 同様に、テレビで見た某美少女アイドルの赤ちゃんの頃の写真は、小さい子って面倒そうっていう自称子供嫌いの私から見ても、やっぱり可愛く見えた。

 それほど大差ない一般人ならともかく、誰もが認める美少女は赤ちゃんの時から美少女だ、というのが私の持論だ。

 そんな私から見ても、鏡の中の愛くるしい赤ちゃんは、間違いなく“美少女”だった。

 恐る恐る伸ばした私の手に合わせて、鏡の中の赤ちゃんも手を伸ばす。

 私と同じ動きをする。

 この可愛い子、私?

 昔、見せられた赤ん坊の頃の私は、こんなに可愛くはなかった。

 てか、不細工だった。

 そもそも、ピンクの髪に紫の瞳って、アニメじゃないんだから。

 確かに、今の私の周りには色々な髪や瞳の人達がいる。

 よく一緒に居てくれる女の人は深紅の髪に深紅の瞳の美人だし、朝と夜にやって来る男の人は紺色の髪に深い紫の瞳だった。

 他の色々と私の世話をしてくれる女の人達も、茶髪だったり緑だったり、金髪?黄土色?だったり……。

 とにかく、地毛でこの色はないよねって感じの人達がたくさんいる。

 ここの人達ってみんな派手だね、くらいに考えていたけど。

 よく考えれば、某イベント会場ならまだしも、普段から全員こんな色の髪で生活している国なんて、私が旅した中には一つもなかった。

 服装もあまり見慣れない物が多くて、余計にお祭り会場にいるみたいな変な錯覚を起こしていたけど、よくよく考えるとここの人達は変だ。

 服装や見た目だけじゃない。

 言葉が全く理解できない。

 伊達(だて)に色々な国を廻ったわけではない。

 自分が知らない国の言葉でも、現地で必要に迫られれば挨拶くらいは覚えるし、しばらくその国にいれば、意味は分からずともどの辺りの言葉かくらいは分かるようになったりもする。

 なのに、ここの人達が話す言葉に全く聞き覚えがない。

 少なくとも、私が旅した国の中には、この人達が話す言葉と似た雰囲気の言葉はなかった。


 自然ではあり得なさそうな髪と瞳。

 全く聞き覚えのない言葉。

 そして、決定的なのが美少女(美乳児)に生まれ変わった私の容姿。

 そう、完全に生まれ変わっている。

 これは、名探偵の方ではなく、異世界転生のほうだったか……。

 と、言うことは、私死んじゃったってことだよね。

 いつ?

 旅の最後の記憶は、確か砂漠の道をバイクで走っていて……。

 その後の記憶が無い。

 死ぬようなこと、あったかなぁ?

 車や人とすれ違うなんて、オアシスから出ちゃえば一日バイクで走っても片手で数えられるくらいしかないし……。

 交通事故って線は薄いよね。

 ……あっ、強盗!

 外国人旅行者のバイクにタックルしてきて、転倒した隙に荷物を奪っていく強盗がいるって聞いたような……。

 それか、撃たれたか……。

 場所は離れてるけど、民族紛争の煽りで射殺された外国人旅行者がいるって、聞いた気がする。

 ………………。

 ………………。

 どうでもいいや。

 死んだのは間違い無さそうだし。

 ………………。

 …………。

 ……。


 その夜、私はこの世界に来て、初めて大泣きした。


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