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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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242/321

廟算

 ここは王都の公爵邸にある私の執務室。

 広めに作られた執務机には、この国ではあり得ないほどに詳細なザパド領の地図が広げられている。

 様々な書き込みのされたその地図の脇には、無造作にまとめられた報告書の束が積み上げられている。

 これが、この一年ほどの成果だ。

 連邦から大量の諜報員を雇い入れ、本格的なザパド領の調査を開始してから、もうじき一年になる…

 当初、他国の貴族(ダルーガ伯爵)と結託して王国からの独立でも画策しているのかと考えられていたザパド領の現状は、思いの外酷くて…

 まさか、あのザパド侯爵が操り人形と化しているとはねぇ…

 意に沿わない貴族や権力者を薬漬けにして、植民地状態にしているとは思わなかった。

 一応、現状のザパド領の実質的支配者は元王国貴族のキルケ嬢らしいから、辛うじて領地内での内輪もめと言えなくもないけど…

 確かに、決められた税は国に納めているし、国際的な認識ではザパド領は魔法王国の領地で間違いない。

 でも、今のザパド領を魔法王国と言っていいのかは(はなは)だ疑問だ。

 現状を報告した時、国王陛下やお父様だけでなく、あの王妃様でさえかなり驚いていた。

 この世界的には、領地を占領するっていうのは、武力で実際に殺し合って相手を屈服させ、勝者がそれを大々的に国内外に周知することで達成されるものだからね。

 良くも悪くも牧歌的で分かりやすい世界だ。

 代理戦争、経済戦争、企業買収、傀儡政権、etc.

 実際に戦うことなく、権謀術数で相手を陥れていくようなやり方は、この世界では殆ど見られない。

 オーストラリアほどの小さな大陸(世界)に、たった4つの国。

 しかも、4つの国各々がある程度独立して存在できていて、国同士に経済的政治的に密接な繋がりがあるわけでもない。

 実際、魔法王国(この国)なんて、ほんの100年前までは鎖国していたからね。

 前世の感覚だと、江戸時代、時代劇の世界観くらいに単純な世界だから、領主が殺されることなく領主のままでいて、それが実は誰かの操り人形になっていたなんて…

 横暴なお殿様の所業が、実はお殿様に取り憑いた狐の仕業でしたくらいの衝撃だったみたい…

 この状況を、そんな事もあるよねってあっさり受け入れている私を、国王陛下とお父様が酷く呆れた目で見ていたよ…

 ともあれ、ザパド領の現状は大体把握できた。

 今のザパド領の実質的な支配者はキルケ嬢で、本丸はクボースト。

 領都ザパドを含めたザパド領の主要都市と主だった町のトップは、全て()げ替え済。

 元々の領主や支配者層はみな、薬漬けかキルケ嬢に寝返ったかのどちらかだ。

 ただし、それ以外の下の人間に、王国を裏切っているという自覚は無い。

 住民の大半は、今まで通り上からの指示に従っているだけだし、多少上からの指示が変わっても、自分達は黙ってそれに従うだけ、という認識だ。

 その辺は、日本で総理大臣が変わったんだ、くらいの感覚なのかもしれない。

 テレビも新聞も無い世界だし、商業ギルドを押さえてしまえば、手紙だって届かない。

 領主権限で、街や領外への移動を制限してしまえば、今のザパド領が外からどう見られているのかにも気付かない。

 完全に鎖国状態だ。

 

(でも、これなら…)


 ザパド領の領民が王国の統治に不満を持ち、新たな領主としてキルケ嬢を受け入れ、外患誘致して王国に反旗を翻す…

 これなら、やる事はザパド領の反乱の鎮圧ってことになる。

 なんだかんだ人口の多いザパド領との戦争となれば、それなりの戦闘、被害が予想される。

 はっきり言って、大事件だ。

 でも、領民の大半が無自覚で、ただ上司の命令に従っているだけなら…

 問題が表面化する前に、速やかに上層部のみを押さえてしまえば、大した騒ぎにはならないかもしれない。

 今後のザパド領の発展を考えるなら、被害はあまり出したくないんだよね。

 理想としては、あまり住民や一般兵に抵抗されずにササッと乗り込んで、汚染されている指揮系統のみを速やかに拘束してしまうのが一番か…

 ついでに、それらの功績をソフィアさんのものにしてしまえば、世代交代も円滑に進むし、今後の統治もしやすくなるだろう。

 ソフィアさんのザパド領奪還作戦に協力したとなれば、ザパド領内におけるセーバの街の好感度も上がるしね。

 そうなれば、鉄道計画もかなり進めやすくなる。

 そのためには…

 あまり大事にするのは不味い。

 戦争紛いの大規模戦闘が頻繁に続けば、問題が収まった後に、ザパド侯爵家の責任問題とか管理能力がとか言い出す貴族が出てくる。

 多くの民が戦闘で傷つけば、その事でソフィアさんやセーバの街に恨みを持つ者も出てくるだろう。

 こういうのは、理屈や善悪じゃないからね。

 身内を殺された者にとって、どちらが正しいかなんて関係無いのだから…

 だから、ザパド領の制圧自体はこっそりと、速やかに、被害は最小限に、という方針に変更はない。

 けど、ザパド領の殆どの民が何も知らず、いつの間にか事件だけが解決していたってのは、あまりよろしくないかも…

 人知れず悪を倒す正義のヒーロー?

 民の生活を陰から支える縁の下の力持ち?

 いや、いや、そんなの誰もありがたがらないから。

 仮に、全ての事件が解決した後に、実はザパド領はこういう危険な状態だったけど、それは無事に解決しましたなんて言ってもねぇ…

 最近のごたごたは貴族たちの無能が原因かって責められるのがオチだ。

 強盗に襲われているところを助ければ、民は助けた兵士に感謝する。

 でも、強盗が出て危険だからと道を塞いだ兵士は、自分たちの邪魔をしたと民に恨まれるのだ。

 今後のザパド領の統治を考えるなら、今の現状とその原因を、しっかりと認識しておいてもらう必要があるね…

 今生活が大変なのは現政権が問題で、ソフィアさんとセーバの街はそれを救いにきた、と…

 たんなるザパド侯爵家とザパド領貴族の内輪もめに自分達は巻き込まれたと、そう民に思わせる訳にはいかない…

 ザパド領の危機に際し、領民の苦難を憂いた次期領主(ソフィアさん)が、セーバの街と協力して民を救うために立ち上がった…

 うん、そういう作戦でいこう!


前回は更新できず、すみませんでした。

お陰さまで、なんとか復活しました。

発熱、頭痛、吐き気で、体調が戻るまでに一週間…

個人差はあるようですけど、コロナ(のワクチン接種)、なめてました、すみません。

これで1回目…

2回目はどうなることやら…


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