表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

206/321

ポールブ到着

 セーバの街に戻って数日後、私達の乗る船はビャバール商業連邦に向けて出港した。

 船名、天鳥丸。

 セーバ、倭国の技術者が、総力を挙げて作り上げた最新船だ。

 元々タキリさんの開発チームが持っていた造船技術に、セーバで開発された魔動エンジン、スクリューや歯車といった前世(チート)知識、本来この地には存在しないはずの魔法……。

 私の前世(ヒノモト)を知るタキリさんと、私の非常識さを当然と受け止めるセーバの街の技術者達。

 もう、なんの遠慮もいらないよね!

 神々の国(前世)にはこんな船があった、こんな技術があった……。

 私の語る夢物語(前世)に、倭国、セーバの技術者総出で侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を戦わせ、ついに完成したのがこの船ってわけ。

 当初は、セーバの街に来た時に乗ってきた外輪船を改良する予定だったタキリさんだけど、セーバの街のスクリュー船の存在を知って、早々に外輪船の改良を中止に。

 セーバの技術を取り入れた新造船の設計に今後の方針を切り替えていた。

 自分が苦労して開発した外輪船の技術をあっさり切り捨ててしまうところが、タキリさんらしいと言えばタキリさんらしいけど……。

 タキリさんの外輪船のヒントって、井伊直弼(イィ様)が見た“黒船”らしいから、一度聞いてみたんだよね。

 尊敬するイィ様が伝えた技術を、そんなに簡単に切り捨てちゃっていいの?って。

 だって、倭国王家の存在意義って、“イィ様の伝えた教えを守ること”らしいからね。

 でも、いいんだって。


『世界は広いし、世の中も絶えず変わっていく。古い体制に固執して世の趨勢を見ようとしないのは愚かなことだと、イィ様の教えにもありますから』


 そんな風に言ってたっけ。

 井伊直弼って、勝手に日米修好通商条約(不平等条約)結んだって暗殺されちゃった人だけど……。

 もし、アメリカの要求突っぱねて、結果戦争になってたら?って考えるとねぇ……。

 私には教科書程度の知識しかないから想像だけど、きっと色々と思うところがあったんだと思う。

 もう随分昔のご先祖様(イィ様)の教えを絶対視している癖に、妙に自由で革新的な倭国皇家の気風って、きっとその辺にあるんだろうね。

 普通、許さないよねぇ。

 自国の皇女様が何年も他国で自由に研究三昧の暮らしをするとか……。

 いくら皇家のご先祖様と同じ転生者だからって、それだけで皇家の身内認定しちゃうとか……。

 もっとも、その柔軟な姿勢が倭国繁栄の鍵らしいし、結果完成したのがこの船なわけだから、一概に悪いとも言い切れない。

 タキリさんの予定外の長期にわたるお出かけも、この船を見せれば大した問題にはならないだろうって……。

 まぁ、国際問題とかにならないなら、別にいいんだけどね。


 と、まぁ、そんな船だから、速い速い!

 セーバの街から連邦西部の港湾都市バンダルガを無寄港で通り過ぎ、連邦東部の港湾都市ポールブまで、一月(ひとつき)とかからず辿り着いてしまった。

 タキリさんがバンダルガからセーバに来た時には、それだけで一月(ひとつき)かかっていたことを思えば、この船がどれだけ速いかって話だ。

 ちなみに、行きにタキリさんが乗ってきた外輪船だって、当時の外洋船の中では最速だからね。

 単純計算で、その2〜3倍の速さはでている訳で、一般の帆船なんかとは比ぶべくもない。

 そして、その結果に一番驚いていたのは、当のタキリさんと倭国の皆さん。

 私なんかは前世の知識で、大型船が日本とオーストラリアの間を一月(ひとつき)程度で往復してしまうのを知っている。

 だから、前世の船ほどではなくとも、スクリューエンジン搭載のこの船なら、まぁこのくらいのスピードは出るかなって思うんだけど。

 往路の過酷な船旅を経験してきている倭国のクルーにとっては、この快適な船旅は納得いかないみたい。

 スピードは従来の数倍で、風などの天候にも左右されず、冷凍庫や風呂まで完備した住環境は快適そのものと……。

 自分達の往路の苦労はなんだったんだ!って感じらしい。

 ともあれ、天鳥丸は無事にその航海を終え、連邦東部の港湾都市ポールブの湾内に、ゆっくりとその巨体を進めていく。


 うわぁ、流石は連邦の誇る東の港湾都市だね。

 船の数も多いし、街も大きい。

 背の高い建物も多いなぁ。

 魔法王国は二階建てまでの建物が主流で、3階建て以上の建物って滅多に無いけど、ここの建物は普通に賢者(お祖父様)の塔くらいありそう。

 魔力の多い職人は、魔法王国の方が多いはずなんだけど……。

 この辺は建築技術の差かなぁ……。

 望遠鏡で覗いてみると、港の賑わいが目に飛び込んでくる。

 倭国や近隣の港から船で運ばれてくる荷の、積み下ろしをする人足達。

 船主と荷の取引をする商人や、魚を市場へと運んでいく漁師達。

 そして、この街を訪れた旅人目当ての客引き達。

 前世の旅では、よく見かけた光景。

 とても懐かしい気分になる。

 この猥雑で混沌とした感じは、魔法王国では見られないものだ。

 魔法王国の主な輸出品は、魔石と魔力。

 しかも、その取引は王家主導で、取引相手は連邦の認可を受けた商人のみ。

 おまけに、魔石、魔力の交換レートも固定だから、商売特有の駆け引きなんてものも存在しない。

 ただ決まった金額を支払って、魔石を持って帰るだけだ。

 それ以外で、他国の商人が王都を訪れることも、無いわけじゃないけど……。

 大抵はクボーストか精々ザパドまでだから、王都で他国からの商人を見かけることはあまりない。

 まぁ、最近はセーバ経由で少しずつ他国からのお客さんも増えているみたいだけどね。

 以前行ったクボーストの街には連邦からの商人もいて、多少こういった雰囲気もあったけど、あそこはもっとギスギスしていたし……。

 セーバの街?

 セーバの街は、確かに外国人が多い。

 如何にも国際都市って感じなんだけど……。

 セーバの街って自分で言うのもなんだけど、お上品過ぎるんだよね。

 街の人間は皆教育が行き届いていて、治安もすこぶるいい。

 他国の商人の入国管理もしっかりしてるから、変なのも入って来ないしね。

 いや、いいんだよ!

 そもそも、私が指示してる訳だし。

 でも、無責任な旅人視点で見ちゃうとねぇ……。

 ちょっと、面白味に欠けるっていうか……。

 だから、この油断してると何が起きるか分からない感じって、ちょっとわくわくする!

 まずはこの街をゆっくりと視察(観光)して、それから首都ラージタニーを目指すとしますか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ