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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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禁書庫

 学院や王宮での講義の合間を縫って、最近の私は大神殿の禁書庫に通い詰めている。

 名目は、王妃様からの依頼。

 魔法無効化の魔道具の強化なんだけど……。

 久しぶりの研究!

 もうお祖父様の資料だけでは完全に行き詰まっていたからね。

 そろそろ現状を打破する新しい発見が欲しいところ。

 そこで目をつけたのが、王都の大神殿にあるというこの禁書庫!

 前から話には聞いていたんだけど、流石に入室許可は貰えなかった……。

 ここへの入室許可を出せるのは唯一人、国王陛下のみ。

 それも当然で、この禁書庫に収められているのは、全て神話の時代に書かれた書物。

 全てが国宝と言ってもいい本だから。

 当然、書庫からの持ち出しは厳禁。

 一説によると、石板と同じで、書庫から出したら消えて()くなるとか。

 実際、言い伝えが正しければ、ここの本って少なくとも王国建国以前から、ずっとこのままってことだから……。

 石板ではなく、普通の紙の本なのにだよ……?

 禁書庫に足を踏み入れると、そこには壁一面に並べられた本、本、本……。

 部屋自体はそれほど広くは無い。

 部屋の真ん中には小さなテーブルと椅子が置かれていて、それを囲むように壁一面が書棚になっている。

 天井は黒い大理石で、そこにたくさんの魔石が埋め込まれていて、それはまるで星空のよう!

 いや、プラネタリウムかな。

 魔石同士を繋ぐ線が引かれていて、天井が星座盤のように見える。

 ただ、不思議なことに、部屋自体は暗くないんだよねぇ……。

 天井だけを見てると星空みたいなんだけど、部屋自体は本を読むのに十分な明るさが確保されている。

 多分、天井の魔石がこの不思議な照明になっているんだと思う。

 なかなかに凝ったデザインだ。

 そして、書棚に並べられているのは、世界最古の本!

 勿論、全て神様語。

 そもそも、この世界の“紙”や“本”のオリジナルが、この禁書庫の本らしいし……。

 全ての本の原点?原典?って感じで、この話だけでもこの禁書庫は見る価値がある!

 正に本の聖地、浪漫だよねぇ〜。

 という訳で、研究云々を抜きにしても、この禁書庫には昔から憧れていたのだ。

 実は、この世界にはここの本みたいに、所謂(いわゆる)“オリジナル”が複数存在する。

 “紙”以外にも、例えば“布”とか“服”とかね。

 この世界の“布”と“服”のオリジナルは、“聖布”、“聖衣”と呼ばれ、帝国領にある大神殿で今でも厳重に保管されているとか……。

 そういった昔から伝わっている物が、どうして“オリジナル”と呼ばれるのか?

 それは、この世界の工芸品の製造方法故に。

 この世界で出回っている物の殆どは、みな魔法で作られている。

 その作り方はある意味超簡単で、お手本を鑑定魔法で構造解析し、構造が理解できたら金魔法や木魔法でイメージ通りに材料を加工して終わり。

 職人はノコギリもノミも、ナイフすら使わないし、一流の料理人は料理に包丁すら使わない。

 勿論、魔力の少ない平民は道具を使ったりもするけど、高度な物ほど魔法で作られている。

 それは“紙”とか“布”、“服”なんかも同じで、この世界で服を作るのに縫製技術は必要無い。

 綿花とか蚕の繭とかに魔力を通して、ただ作りたい服をイメージするだけで終わり……。

 この世界には機織り機や紡績機すら無いんだよ。

 何とも簡単お手軽なんだけど……。

 ここで問題になるのが“お手本”の有無。

 例えば、ガラスやワインなら、前世の地球みたいに偶然できた物を誰かが発見して、後は鑑定魔法を使えば再現は地球よりもずっと簡単だ。

 それを再現する基礎研究なんて全然必要無い。

 だから、文明レベルに対して学問レベルが極端に低い、なんて事になるんだけどね。

 ただ、ここで問題。

 “紙”とか“布”が自然にできたりすると思う?

 森の木が偶々“紙”になってましたとか、綿が絡まって偶然“布”になりました、とか……。

 無理だよね。

 なら、この世界に当たり前に普及している“紙”や“布”はどこでできたか?

 そう、その大本が神話の時代、恐らく先史文明の頃の遺物って訳。

 今でも偶に遺跡なんかからそういった“オリジナル”が発見されて、それで一気に技術が進む、なんて事もあるらしい。

 セーバの街のウィスキーや羅針盤も、王家に秘蔵されていた神々の時代の遺物では?って、最初の頃は結構疑われたしね……。

 それはともかく、この世界の“紙”、“本”のオリジナルがここの本なら、真っ先に浮かぶ疑問。

 ここの本、きれい過ぎ!

 風化どころか、紙に変色すら無いなんて……。

 鑑定魔法を使ってみるも、特に本に変わったところはない。

 とすると、この部屋自体に状態維持の強力な魔法がかかっているとか?

 でも、この部屋全体に、しかも何百年、下手したら数千年単位で効果が続く魔法をかけるって、一体どれだけの魔力の大魔法なんだか……。

 ちょっと想像がつかない。



 分からない事はとりあえず棚上げで、分かる事から始めよう。

 私は、書棚から一冊の本を取り出す。

 前回の続きで、全て神様語で書かれた文字列を追っていく。

 今読んでいる、というか、解読している本は、多分魔法辞典のようなもの。

 特定の効果をもたらす神様語と、その意味や使い方が書かれている。

 その殆どは意味不明なんだけど、それでも幾つかの収穫はあった!

 その一つが“累乗”。

 例えば、従来の魔法だと、10MPの魔力で生み出せる魔法の威力は、5MPで生み出した現象に5MPの(かけ算)魔法を使って、最大で25。

 でも、累乗魔法を使うと……。

 4MPの6MP乗として、ざっと4096!

 1以下の割り算なんて裏技を使わなくても、誰でも大魔法が使えちゃう!

 もっとも、そのためには正確な魔力操作が必要不可欠だけど。

 そもそも、この世界の人が使う魔法って、大体が“発生”か“拡大”のどちらかに片寄ってるんだよね。

 魔力量に自信のある人は、巨大な炎を作るぞ!って感じで、魔力を炎に変える“発生”に……。

 魔力量に自信のない人は、もっと大きくなれ!って感じで、小さな炎を膨らませていく“拡大”に……。

 これだと、9MP(発生)×1MP(拡大)、1MP(発生)×9MP(拡大)で、どちらも威力は9にしかならない。

 

 私自身、魔法研究を始めた頃は、魔法っていうのは現象を光魔法で大きくするものって勘違いしてたしね。

 ファイアボールを観察してると、始めに小さな炎が現れて、それが急激に膨らむのが見えたから……。

 でも、後で見せてもらったお父様のファイアボールは全然違った。

 空間が魔力で満たされるのを感じた直後、突然そこに巨大な火球が現れた。

 で、この違いは何だ?ってことで、辿り着いたのが今の結論。

 魔法の威力は、現象を生み出す魔力と、それを大きくするための魔力、この2つの魔力の積で決まる。

 ここで大切になるのが、どちらの効果にどれだけの魔力を振り分けるかってこと。

 二次関数で考えれば、魔力の振り分けは丁度半分ずつが最も効率が良いのは明白なんだけど……。

 みんな自分の感情や癖に引きずられるし、理屈が分かっても魔力操作の技術が追い付かない。

 結果、魔法の威力も上がらない。

 今、研究会や王宮でやっているのは、その辺のコントロールのための訓練になるんだけど……。

 もし仮に、魔力量に余裕があって、正確な魔力操作ができる貴族が、累乗魔法を組み込んだ魔法を使うとすると……。

 例えば、100MPの魔力を4:6に振り分けて、40の60乗……。

 うん、一発で世界が滅ぶね!

 これは秘密にしよう!



 コン、コン、

「アメリア様、時間ですよ」


 私の思考を遮るレオ君の声が聞こえる。

 神殿まで護衛でついて来てくれているレオ君には、時間になったら教えてくれるように頼んである。

 ここ、すごく落ち着くから、ついつい時間を忘れて研究に没頭しちゃうんだよね。

 窓も何も無いから、時間とか全然分からないし……。


 そんな感じで、私の研究は順調?に進んでいった。


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