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魔力測定

 そして、ついに待ちに待った魔力測定の日がやってきた。

 今日はお母様だけでなく、お父様も一緒にお出かけだ。

 両親揃っての外出など初めてのことで、そういう意味でも期待が高まってしまう。

 

 神殿は王都の外れの小高い丘の上にあった。

 外れといっても王都から完全に離れたところではなく、逆に神殿から一定の距離を取って神殿の周りに街を作ったという感じだ。

 神殿の周りに街を作る。街の隣に王宮が作られ、王宮の周りには新たに街が広がる。

 恐らくこの王都は、そうして大きくなっていったのではないかと思う。

 今私が住む公爵邸も街外れにあるけど、きっと百年後には公爵邸の周りにも家が立ち並ぶのだろう。

 まあ、元々住んでいる住民を無理矢理退かしてお屋敷を建てるよりは平和でいいけど、街並みに統一感がなくて使い勝手が悪くなっちゃうのは仕方ないんだろうね。


 そんなことを考えているうちに、私を乗せた馬車は神殿へと到着する。


 神殿はそれほど大きくはない白い石造りの建物で、ギリシアや中近東で見かけた神殿と大体似たような感じだ。

 ただ、荒れ果てた遺跡というのではなく、今でも人が住み管理されているのはすぐに見て分かった。

 神殿の側には小さな畑もあって、神官らしき数人の人が農作業をしているのが遠くに見える。

 馬車から降りた私は、お父様に手を引かれながらゆっくりとした足取りで神殿の中に入っていく。

 建物に入ってすぐの部屋は学校の教室くらいの広さで、奥の祭壇のようになっている場所には参拝者なのか、数人の人だかりができていた。


「あそこには、呪文の書かれた石板があるの。

 石板に書かれた神々の御言葉を聞きにきているのよ」


 私が何だろうと人だかりの方を眺めていると、そうお母様が教えてくれた。

 私がお母様と話している間に、私から離れたお父様は近くにいた神官の元に向かい、来訪の用向きを伝える。

 一旦奥に戻っていった神官はしばらくすると戻って来て、私たちを神殿の奥にある小さな部屋へと案内してくれた。

 その部屋には小さな祭壇があり、祭壇の上には大きい物から順番に4つの丸い玉が祭られている。

 左の一番大きな玉がサッカーボールくらいの大きさで、右の一番小さな玉が野球ボールくらい。

 色は半透明で、水晶か何かのような感じだった。


 (あれで、魔力を測るのかなぁ)


 そんな事を考えていると、立派な神官服を着たやさしそうな顔のお爺さんが部屋に入ってきた。


「ディビッド公爵様、よくおいで下さいました」


「うむ。神官長、今日は娘のアメリアの魔力測定をお願いしたいのだが」


「承知致しました。魔力測定の儀、執り行わせていただきますじゃ」


 そう言うと神官長と呼ばれたお爺さんはゆっくりと私に近づき、やさしく私の手を握ると祭壇の側まで私を連れていってくれた。

 一番左の大きな玉の前に立たされた私に、神官長は心を落ち着けて目の前の大きな玉に触れるように言う。

 少しドキドキしながら掌を玉に触れさせると、ひんやりと冷たい感触が伝わってくる。

 そのままどうしていいか分からずにいると、神官長は真剣な表情でしばらく玉を見詰め続け、ややあって玉から視線を外すと、私にもう手を離して構わないとやさしく言ってくれた。

 そんなことを順番に、各々の玉の前に立って繰り返す。

 そして、最後。

 一番右端の小さな玉に触れた瞬間、それは起こった!

 私が触れた瞬間、半透明の玉が突然虹色に輝き出す。

 強い光を放つ玉の様子をしばらく観察していた神官長は、おもむろに頷くと儀式の終了を宣言した。


 その後、何やら書かれた紙を手渡されたお父様はざっとそれを確認し、代わりに多分お金の入った袋を神官長に手渡して退室の挨拶をした。


 結果は分からないけど、とりあえずこれで魔力測定は終わったらしい。

 ちょっと気が抜けた私は、改めて神殿を見渡す。

 神殿の中には呪文の書かれた例の石板以外にも、初めて見る文字で書かれた文章らしきものが散見していて、私の好奇心を刺激しまくった。

 呪文の石板は5歳になるまでダメらしいけど、あの壁の文字はいいのでは?

 ちょっと見ていってもいいだろうかと仰ぎ見たお父様の顔はとても厳しいもので、これは何かヤバいと咄嗟に空気を読んだ私は、手を引かれるまま黙って神殿を後にした。


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