異世界語学習完了
文字を手に入れた日から私の学習は順調に進み、既に1年近くが過ぎた。
私も来月には4歳になる。
書棚の本も順調に読み終わり、もう知らない単語もほとんどなくなった。
最近はもっぱら教科書を読み込みつつ、この世界について学んでいる。
ちなみに、私の本棚の本はいつの間にか最初の頃の3倍ほどの量に増えていた。
お父様は頻繁に新しい本をプレゼントしてくれるし、それ以外にも勉強を進めていく中で疑問にぶつかり、「ここのところもう少し詳しく知りたいな」などと考えていると、いつの間にやらそれ系の本が増えていたりするのだ。
多分、私がお母様やお父様に質問した内容を考慮し、必要と思われる本が買い足されているのだろう。
必要な資料がすぐに手に入るのは正直非常に助かっている。
この前お母様に確認したところ、今私が読み込んでいる教科書は貴族や優秀な平民が通うことになるこの国唯一の学校、モーシェブニ魔法学院、通称“学院”入学前の子供が勉強に使うものとのこと。
算数は年相応というか、日本の小学1、2年生程度のものだったが、歴史や地理に関しては小学校入学前の子供が習うには少し難しい感じがした。
ちなみに、理科に該当する教科は一切なくて、代わりに魔法学という教科があるらしい。
こちらはまだ私には早いということで、学ばせてもらえなかった。
非常に残念だ。
あと、外国語についてだけど、驚いたことにこの世界の言語は、あと貨幣も、世界共通とのことで、“外国語”という学問は存在しないらしい。
道理で私が単語リストを作って必死に言葉を覚えようとしているのを、皆が不思議なものを見る目で見ていたはずだ。
この世界の人たちは、基本的に“言語を学ぶ”という発想がないのだ。
日本人が日本語の単語帳を作ったりしないのと同じだ。
”言葉など使っていれば自然に身に付くもの”というのが、この世界の常識らしい。
実際、この世界の言葉はそれほど複雑な構造ではないので、一々文法など考えなくてもある程度の文は自然に作れる。
つまり、私の苦労など誰も理解してはくれないということだ。
その代わりに、一つ厄介な教科があった。
“礼儀作法”だ。
これだけは日本の高等教育を受けてきた私の目から見てもかなり厄介で、これを就学前の児童に覚えさせるなど、さすがは貴族と感心してしまった。
逆に言えば厄介な教科はそれだけで、残りの教科は所詮子供向けの教科書だ。
言葉の問題をクリアした(中身だけ)大人の私の敵ではない。
この半年ほどの期間で、ほぼ完璧に身に付けてしまった。
“学院”への入学が何歳かは知らないけど、もう今の時点で当初の懸念事項だった“処分”は完全になくなったと考えて差し支えないだろう。
そういった“処分”の問題を抜きにしても勉強は嫌いではないし、最近読み始めた学院のテキストもなかなか興味深いので、もちろん勉強は続けるつもりだ。
でも、そろそろ少しペースを落として、異世界生活をもっと楽しんでもいいかもしれない。
最近はそんなことを考える余裕も出てきたりするのだ。
そんなある日、「来週の火の日に、アメリアの魔力を測りに神殿に行くから」と、お父様に言われた。
お~っ、いよいよか!
私も来月には4歳になるし、魔力測定の件はどうなったのかと少し心配はしていたのだ。
勉強の方もなんとか一段落ついたし、いよいよ私のターンか?