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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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謝罪

 緊張した様子で……というか、何やら決死の覚悟で挨拶を始めたソフィアさん。

 多分、元々は発言する気がなかったところで、立場的に自分よりも下のキルケさんに発言されて、自分も発言しない訳にはいかなくなったのだと思う。

 流石に、ここまで勝手をされちゃうとねぇ……。

 得意先に部下を連れて挨拶に行ったら、自分が挨拶する前に部下が勝手に商談を始めたりしたら……。

 これって、そういう状況なんだよねぇ。

 これで上司が何のフォローもなく黙っていたら……恐らく評価が下がるのは、部下をしっかりと管理できていない上司と会社だ。

 子供の礼儀がなってないのは親の責任、みたいな感じだろう。

 それは、この世界でも同じ。

 特に、キルケさんの父親のボダン伯爵は“領主”ではなく、“代官”だからね。

 同じ自由裁量権を認められた街の統治者でも、領主の場合と代官の場合では事情が全然違う。

 もう、オーナー社長と雇われ社長くらいにね。

 例えば、私はセーバの街の“領主”だから、後継者を決める権利もあるし、私のやり方に口を挟めるのは私を領主に任命した国王陛下だけだ。

 セーバ領の領主であるお父様であっても、私を罷免する権利は無い。

 大雑把に言うと、政令指定都市みたいな感じだと思う。

 それに対して、“代官”を任命するのはその街が所属する領地の領主で、任命するのも罷免するのも領主の仕事になる。

 そうは言っても、ボダン伯爵の家は代々クボーストの街を治める代官の家系だから、順当にいけばキルケさんかその兄弟が、いずれはクボーストの街の代官になるのだと思う。

 それでも、ザパド侯爵には自分の一存でボダン伯爵やその一族を罷免する権利があるのだ。

 だから、いくら何でも次期ザパド侯爵と言われているソフィアさんに対して、キルケさんがあのような暴挙に出る理由が、私にはさっぱり分からない。

 確かに、今のソフィアさんが、自領を含めたほぼ全ての生徒から無視されているのは知っている。

 今のザパド領の現状とその原因を考えれば、たとえザパド領の生徒であっても、ソフィアさんへの対応が厳しくなるのは理解できる。

 でも、さっきのキルケさんの発言は別だ。

 私に対するザパド侯爵の態度を責めるのなら、むしろ私に対しては友好的な態度をとるべきなのに……。

 あれでは、ソフィアさんに対してだけでなく、私や王家に対しても喧嘩を売っているように見える。

 そういう事を理解できないおバカさんなのか、何かあっても責任を取らされるのは上司であるザパド侯爵だから関係ないと思っているのか……。

 キルケさんの意図は不明だけど、いずれにしてもここでソフィアさんが黙ってしまうのは不味い。

 最悪、周囲や王家に、ザパド侯爵には領内を統治する力が無いと判断されてしまうからね。

 無理矢理舞台に引きずり出された感じだけど、彼女はどう対応するつもりかな?


「まず始めに、先程我が領の者より大変不適切な発言があったこと、深くお詫びいたします。

 ザパド領をまとめる侯爵家の者としての力不足です。大変申し訳ありませんでした」


 そう言って頭を下げるソフィアさん。

 そして、少しだけざわつく講堂。

 まさか、素直に謝罪してくるとは……。

 別に、あのザパド侯爵の娘がこんなに素直なはずがない! とかではないよ。

 あの(わたし)関係に厳しいレジーナさんの調査で、ソフィア侯爵個人に関しては特に危険は無いと、レジーナさんにお墨付きをもらっていた子だからね。

 良い子なのは知ってた。

 報告された状況を聞く限り、グレてても不思議じゃない感じなのにね。

 学業面も優秀で、生徒達の評価に反して、教師陣の評判はすこぶる良かった。

 キルケさんの発言に対して無視を決め込むのでもなく、慌ててすぐに発言するのでもなく、今回の発言者の中で最も高位の侯爵が、質問の最後を飾るというタイミングで挙手してきた。

 だから、自分の今の発言の意味も分かっているはず。

 つまり、お(とが)めは自分が受ける、ということだ。

 学院内での彼女の状況は公然の事実なのだから、黙って被害者を決め込むこともできたはず。

 謝るにしても、自分のあずかり知らぬ事と、言い訳しても許される状況だ。

 たとえ落ちぶれても侯爵家の矜持は貫く、ということかな。

 そして、彼女が次に口にした内容は、更に周囲を驚愕させる。


「……それから、これは今回の質問とは無関係なのですが、」


 そこで彼女はしっかりと私の方を向き、姿勢を正した。


「父が、アメリア公爵様に対して大変無礼な態度を取りましたこと、娘として、この場を借りて深くお詫びいたします。

 大変申し訳ございませんでした!」


 そう言って、先程よりも更に深く頭を下げるソフィアさん。

 頭を下げた姿勢のまま、じっと私の裁定を待っている。

 この場で謝罪しますか……。

 この事、ザパド侯爵は……知るわけ無いよね。

 もしザパド侯爵に和解の意思があるなら、まずザパド侯爵本人が直接謝りに来るなり、詫び状を送るなり、何らかの行動を取るのが筋だ。

 自分の不始末に対して、このような場で、私と初対面の娘に尻拭いさせるなど、普通はあり得ない。

 そうなると、この謝罪は彼女の独断ということになるんだけど……。

 ただの子供なら、分からなくもないんだけどね。

 彼女は、侯爵家の跡取りと見做(みな)されている優秀な貴族だ。

 自分の発言の意味は、理解できているはず。

 “父が”と言っているところからみて、この謝罪はあくまで個人的に身内の非を認める謝罪ということなのだと思う。

 この謝罪を、内々(ないない)にこっそりされたのなら、父親に似ず良い子だね、で済ませられる。

 でも、この場での発言となると、だいぶ意味が変わってくる。

 たとえ個人的な発言とはいえ、領主であるザパド侯爵の意見を、次期領主候補が衆人環視の場で否定したわけで……。

 今のままザパド侯爵が私に対する非を認めなかった場合、ソフィアさんは確実に次期侯爵の立場を追われるし、場合によっては勘当もあり得る。

 事実上、ザパド領を裏切って、私の派閥に入ると宣言したに等しいからね。

 キルケさんのぼかした主張とはわけが違う。

 たとえザパド侯爵以外のザパド領内の貴族全員が私に対して謝るべきだと思っていても、それを公共の場で宣言してしまったら、領主に対する反逆だ。

 それをザパド侯爵が許せば、ザパド侯爵領は無秩序状態になってしまうし、そんな勝手をする貴族など、他所の貴族も恐ろしくて自分の派閥に入れるのは嫌がるだろう。

 どちらの言い分が正しいかとか、そういう問題では無いんだよね。

 その辺のことを理解できていない子には見えないんだけど……。

 いずれにしても、この状況で彼女の謝罪を受け入れないのも不味いし……。

 さて、どうしたものか……。


「……ソフィアさんが私に対して個人的に謝罪したいという気持ちはよく分かりました。

 この学院では身分や立場による差別をしないことになっていますから、教師である私も学院外でのいざこざを学院の中に持ち込む気はありません。

 心配せずとも、ソフィアさんに対しても、他の生徒に対しても、平等に扱うつもりです。

 ですから、自分の父親のせいで自領の者が不当に扱われるのではと、ソフィアさんが責任を感じる必要はありませんよ。

 ……ただ、その上で言わせてもらうと、先程のソフィアさんの発言は貴族としては不適切で、勉強不足と言わざるを得ません。

 どこが不適切だったかについては、この場で指導する時間はありませんので、ソフィアさんは後で学院長室に来て下さい。

 他の生徒も、特にこういった公の場での発言にはよく注意し、どのような発言の仕方をすれば失礼が無いのか、問題が無いのか、よく勉強して下さい。

 そういうところも、試験に出ますよ!」


 そんな感じで、教師と生徒という立場を全面に出して、何とか誤魔化してみた。

 ソフィアさんの発言にざわついたうちの半分くらいの生徒は、やはりザパド侯爵の娘は貴族の常識が分かっていないと納得し、残りの半分は私の意図を察して話を無かったことにした模様。

 そうして、何とか開校式が終わり……。


 さて、この後はソフィアさんとの個人面談だね。


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