表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/321

質疑応答2

 続いて手が挙がったのはボストク領。

 ん? えぇと、あれは確か……。


「ご無沙汰しております、アメリア先生。

 ボストク侯爵領より学びに来ております、ユリウスです。

 ボストクご滞在の折には、ご指導いただきありがとうございました」


 あぁ、そうそう、ユリウス伯爵。ボストクで私と模擬戦をした人だ。

 確か、ドゴール将軍の息子さんで、ライアン殿下の側近候補。

 初対面の時のこちらを見下した態度はどこへやら。

 初めから“先生”呼びで、あの時の試合も私に“指導”してもらったことになっている。

 こちらを立てつつも、さり気なく自分の敗北を当然の結果として正当化している。

 少なくとも、あの時はまだ教師でも何でもなかったんだけどね。

 皆の印象としては、“模擬戦を挑んで負けた”から、“先生に指導してもらった”に変わった模様。

 あの模擬戦の後、私はゴーレム討伐なんかもやっているから、私に負けたこと自体は問題無いらしい。

 でも、無謀にも“ゴーレム討伐の英雄”に試合を挑んだ愚か者、というレッテルは貼られちゃうからね。

 彼としても、折角の印象操作の機会は見逃せないらしい。

 まぁ、負けたことを根に持ったりしないで、素直にこちらを立てる姿勢は評価できるけどね。

 だから、君の思惑に乗ってあげましょう。


「いえ、私の方も良い体験をさせていただきました。

 ユリウスさんも元気そうで何よりです。

 あれから、ユリウスさんがどのくらい腕を上げたのか、その成長を見るのが楽しみですね」


 これで、私とユリウス伯爵の模擬戦の話を聞いている人たちも、2人の間に遺恨は無く、あの試合も訓練か指導の一環だったと判断するだろう。


「それで、質問とはどのようなことでしょう?」


「はい、アメリア先生。先生のおっしゃる単位認定試験については理解しました。

 実は、私がお聞きしたいのは学科試験のことではなく、実技訓練のことです。

 先程のアメリア先生のお言葉から察するに、この学院でもアメリア先生に魔法実技をご指導いただけるということでよろしいでしょうか?」


 あぁ、なるほど。

 さっきから妙にこちらを先生として立てると思ったら、ここに繋げたかった訳か……。

 でも、ごめん。

 私は、魔法実技の“授業”を受け持つ気はないよ。


「いえ、私は学院全体を統括する学院長ですから、学科、実技とも、直接クラスを指導する予定はありません。

 実技訓練の授業については、今まで通り実技担当の先生方にお願いするつもりです」


 私の答えに、意気消沈する面々……。

 あれは、ボストク領の生徒が集まっている一帯だね。

 私達がボストクでの試合で使った魔法は、他所では見られない珍しいものだから、あの試合を見たり聞いたりした生徒たちが、自分達もそれを学べるかもと期待するのも分かる。

 そうでなくても、この学院の実技教師には信用が無いから……。

 もっとも、実技担当の教師陣も最近はだいぶ鍛えられているから、長期休暇前ほど馬鹿にしたものでもないと思うけどね。

 その辺は、授業が実際に始まれば、(おの)ずと分かるだろう。

 ただ、いずれにしても、私はこの学院で魔法学や魔法実技の授業をするつもりはない。

 だって、“授業”となったら、全ての生徒に分け隔てなく教えなければいけないから……。

 何で将来自分に敵対する生徒や、横柄で感じの悪い生徒に、私が苦労して見つけた研究成果をただで教えなければならないの?って話だ。

 えっ? だって、あなた、先生でしょうって?

 前世でもいたよ。

 教師なんだから教えてくれるのは当たり前、みたいな態度の生徒。

 でも、違う。

 大抵の場合、教師はそういう生徒には最低限の事しか教えない。

 それ以上を教師から引き出せるかは、個々の生徒次第だ。

 一生懸命がんばっている生徒、素直にこちらの指示を守る生徒は、教え甲斐もあるし可愛い。

 だから、こちらも色々と教えてやろうという気になる。

 逆に、反抗的な生徒、お金を払ってるんだから教えるのは当然みたいな生徒に対しては、こちらもクレームがこない程度の事しか教えない。

 まぁ、教師も人間だからね。

 知識を教える仕事をしているだけで、別に聖人君子ってわけでもないのですよ。

 特に、今の私は学院長であると同時に、セーバの街の領主でもある。

 王妃様にも、別に特別な知識を教える必要はないって言われているしね。

 その辺は自由裁量だ。

 私は自分の目的(魔力至上主義の排除)のために学院長になっただけで、“教育者”をやりたい訳ではないからね。



「他に質問のある方はいますか?」


 ユーグ領の生徒からは特に質問は無いみたいだし、この辺りかなぁ……。

 この状況だと、最後にもう一人手が挙がりそうだけど……。

 そう思ったところで、再度ザパド領の辺りで手が挙がる。

 やっぱり、きたか……。


「お、お初にお目にかかります、アメリア先生。

 ……ザパド侯爵の娘、ソフィアと申します」


 そう、ソフィア侯爵。

 あのザパド侯爵の娘だ。

 学年は確か、3年生だったか……。

 いや、これでも一応全校生徒の資料には目を通しているし、主だった貴族や商人なんかの子女については、個人的に事前調査をしている。

 主に私の保身のために。

 いや、学校っていっても、そこは上流階級の子女の集まる社交の場。

 親の思惑なんかも多大に影響するわけで、たとえ教師だからって油断はできないのですよ。

 で、私の中でも要注意人物となるザパド侯爵の娘、ソフィア嬢なんだけど、なかなかに苦労しているらしい……。

 主に私のせいで……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ