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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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呪鉄

ゲリラ投稿?

 一通りの情況確認、ゴーレムの観察を終えた私達は、ゴーレムについてのより詳しい話を聞くために、皆でブリツィオさんの自宅にあるウーゴさんの研究室に向かっている。

 ウーゴさんはまだ若いけど、幼い頃からずっとゴーレムの監視と研究を続けているそうで、現状この街で一番ゴーレムに詳しいのがウーゴさんらしい。

 鉱山組合(ギルド)のギルド長の息子で、優秀なゴーレム研究家。

 対人スキルはあまりなさそうだったけど、ちょっと話した感じではとても真面目な好青年って感じだ。

 それなのに、なんだろ?

 この街の人達がウーゴさんに向ける冷たい視線は……?

 初めは私達に向けてのものだと思ったんだけど、どうもそうではないらしい。

 父親であるブリツィオさんも、ウーゴさんに対する当たりはきつかったし、何か問題でもあるのかなぁ……。

 そんなこんなで、私達はウーゴさんの研究室に辿り着いた。

 ………………。

 研究室? ここって物置小屋だよねぇ?

 しかも、部屋の隅には粗末なベッドなんかもあって、どうやら自室兼でもあるらしい。

 ブリツィオさんは、ギルド長といっても所詮は平民。

 自宅もそれほど豪邸ってわけではなくて、精々がちょっと大きめの家って程度だ。

 だからといって、息子を物置に住まわせなければならないほど、部屋数が足りていないようにも思えない。

 これは、本格的に虐待の可能性を疑うべき?


「どうぞ、入って下さい」


 遠慮がちにそう言うウーゴさんに続いて、皆が庭にひっそりと建てられた小屋の中に入る。

 建物自体はボロだけど、広さはそれなりにあったので、私達は全員中に入ることができた。

 こんな場所に貴族の私や王族のサラ様を案内することに、ウーゴさんは勿論ブリツィオさんも大層恐縮していたけど……。

 それを言うなら、こんなところに息子を住まわせているブリツィオさんもブリツィオさんだ。

 鉱夫のまとめ役だけあって、多少荒っぽい印象は受けたけど、子供を虐待するようなタイプには見えなかったんだけど……。


「では、先程ご覧になったゴーレムについて、僕の考えをお話しします。まず、」


「ちょっと待って下さい。

 ゴーレムのお話を聞く前に、一つ確認したいことがあります。

 今までのお話を聞く限り、ゴーレムの監視と研究はこの街にとって、いえ、この世界にとっての最重要事項のはずです。

 そのような重要な仕事に関わっているウーゴさんが、何故このような扱いを受けているのでしょうか?

 住民の反応も何やら不自然でしたし、もしウーゴさん自身に何かしらの問題があるのなら、それも含めてお話を聞く必要があると思います」


 私が感じた疑問は、当然サラ様も感じていたようで、まずはその点をはっきりさせたいと言い出した。

 その意見には私も賛成だ。

 情報の信憑性にも関わる問題だからね。


「それも踏まえて、まずは僕の話を聞いて下さい。

 先程少しお話しした“呪鉄(じゅてつ)”にも関わりのある話ですので……」


 伝承によると、伝説の巨人の肉体は、呪鉄と呼ばれる特殊な鉄で作られていたという。

 呪鉄は、鉄でありながら非常に柔らかく、それが人間でいう筋肉のような役割を果たしていたらしい。

 かの巨人の外皮には岩がぎっしりと貼り付き、ぱっと見には岩の巨人のようでありながら、切りつけてみると中は鉄でできていたという。

 ただ、鉄でありながらそれは非常に柔軟性があり、そのせいか巨人の動きはその巨体に見合わずかなり速かったそうだ。

 そして、巨人の肉体を形作っていたその鉄は“呪鉄(じゅてつ)”と呼ばれ、呪われた鉄として今でも鉱夫達に忌み嫌われているという。

 そして、定期的に現れる大森林のゴーレムも、その呪鉄で作られていると言われているそうだ。


 “そうだ”?


「それって、ただそう伝えられているだけで、しっかりと確認されている訳ではないってこと?」


 思わず聞いてしまった私に、ウーゴさんが肯定の返事をくれる。


「はい。残念ながら、実際に大森林に現れるゴーレムの体を調べた者はいません。

 記録にある限り、今回のようにゴーレムが街の近くまで辿り着いたことはありませんから。

 みな大森林の奥に現れても、それほど時間を空けずに他の魔物に倒されてしまっています。

 仮にゴーレムの死体が残ったとしても、大森林の深部まで確認に行くことなど、絶対に不可能です」


 確かに……。


「では、呪鉄について分かっている事というのは、全てその伝承が根拠ということですか?」


 それはちょっと問題だ。

 昔の人に知識が無かったというだけで、たんに見た目が鉄に見えるだけの、全く違う未知の金属であった可能性も否定できない。

 鉄をミスリルでコーティングしただけの相手だと思って切りつけたら、実は全てミスリル並みの強度の未知の金属でできていました、なんてことになったら、全く洒落にならない。


「いえ、確かに実際にゴーレムの身体を確認したわけではないので、絶対とは言い切れませんが、ほぼ間違いないと思います。

 ……昔から呪鉄と呼ばれている金属は入手できますし、それの研究結果は伝承や歴代の観測結果と全く矛盾しませんから」


 これまでの話や見せられた資料で分かっていたけど、ウーゴさんはこの世界の人とは思えないほど優秀だ。

 ただ伝承を鵜呑みにすることなく、的確なデータを元に論理的に物を考えている。

 中二チックな誤訳だらけの呪文の意訳を元に、決められた通りの魔法の使い方しかできない人達とは大違いだ。

 それはさておき……。


「呪鉄は入手できるのですか?

 そのような金属が流通しているという話は、聞いたことがないのですけど……。

 ドワルグでは呪鉄の採掘が行われているのでしょうか?」


 そう質問した私に、ウーゴさんは少し辛そうな顔をしながら答えてくれた。

 呪鉄、そして忌み子について。


「この街では、ある程度の魔力と鉱物から金属を取り出す土魔法を使える者は、ほぼ例外なく採掘の仕事につきます。

 私も7歳になるとすぐに、父に連れられて鉱山に潜りました……。

 そこで、私が忌み子である事が分かりました」


 どうやらごく稀に、ふつうに土魔法で取り出した鉄が、呪鉄になってしまう者がいるらしい。

 そういう者は巨人に魅入られた呪われた子供、忌み子として、二度と鉱山関係の仕事には関わらせてもらえなくなるそうだ。

 鉱山の街ドワルグにおいて、忌み子に対する風当たりは強い。

 忌み子も、その家族も、大抵はいつの間にかこの街から姿を消すことになるそうだ。

 ただ、ウーゴさんについては、少し情況が違ったらしい。

 まず、ウーゴさんの家が代々この街の長を務める家系であり、ゴーレムを監視する役割もあるため、街から出ていくことも追い出すこともできない。

 そうこうしているうちに、今度は大森林にゴーレムが現れ、それは魔物に倒されることなく着々と南下をし始めた。

 忌むべきゴーレムの監視と、その研究。

 ウーゴさんは、元々忌み子であることが発覚する前は、非常に優秀な子だと街でも評判だった。

 また、ゴーレムの監視を行う長の家系でもある……。

 そんな事情もあって、現れたゴーレムの監視と研究を行うという条件付きで、ウーゴさんの存在は街で黙認されることになったそうだ。

 ブリツィオさんも、そのような立場の息子を下手に庇い立てすると、余計に住民の風当たりが強くなるため、あくまでも役目のために仕方なくという態度を取り続けているんだって……。

 なんか、理不尽な話だ。

 世界を守るために他所の街にも逃げられず、これだけしっかりとした研究をしているのに誰にも評価されないなんて……。


「とりあえず、その呪鉄というのを、私に見せて下さい!」


 本当に呪われているならともかく、ただの合金違いとかだったら噴飯物(ふんぱんもの)だぞ!


今月の目標ノルマが、、

月のPV数が前月より多くなるようにって個人目標?がありまして、今月はそれがヤバい、、

というわけで、今日は月末臨時投稿です。

もちろん、明日も投稿します。

元々、1話の話を長いから分けたって感じですので、、

最近説明ターンっぽいのが続いてますけど、もうしばらくお待ち下さい。

そのうち、一気に盛り上がる、、はずです。


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