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異世界語習得

 あの運命の日から2年が過ぎた。

 私ももう3歳だ。

 このままではこちらの世界の言葉は永遠に理解できるようにはならないと気づいてしまったあの日から、私の世界は一変した。

 夢のぐうたら引きこもり生活は幕を閉じ、(さい)の河原でひたすら石を積み上げる地獄の日々が始まった。


 あの日から、私の態度は豹変した。

 大人しく手のかからない良い子のアメリアは死んだ。

 

 とにかく、この世界の言葉を覚えなければならない。

 私には形振(なりふ)り構っている余裕などないのだ。

 両親であろうと使用人であろうと関係ない。

 隙あらばまとわりつき、とにかく質問攻めにした。

 といっても、いきなり日本語で話しかける訳にもいかないので、発する言葉は「あぁ」とか、「うぅ」とかだ。

 とにかく色々な物に興味を持った振りをして、指差したり叩いたりしながら「あぁ」、「うぅ」を連発する。

 それに対して相手から出てきた言葉を瞬時に記憶し、分析し、その物を指す単語を推測する。

 推測した単語を使いながら相手の反応を確認し、推測に修正を加え、少しずつ単語の意味を絞り込んでいく。

 動詞や形容詞にしても、基本は同じだ。

 その単語が使われるであろう動作や状況を意図的に作り、それに対して掛けられる言葉から単語の意味を絞り込んでいく。

 そして、意味の判明した単語はひたすら反復し、記憶を維持する。

 字も知らないからメモも取れないのだ。

 さすがに日本語でメモを取るわけにもいかないし、ペンやインクなど触らせてももらえないので、とにかくその場で暗記して絶えず忘れないよう思い出していくしかない。

 暗記物の定着度はどのくらい頻繁に思い出そうとしたかで決まるから、きついけど無意味という訳ではない。

 とにかく意味の判明した言葉は忘れないように頻繁に記憶の確認作業を行う。

 おはようからおやすみまで、寝ても覚めてもひたすらこの繰り返しだ。


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 ついに覚えた単語も千語を超えた。

 もう日常会話ならそこそこ理解できるレベルだ。

 一々数えているのかって?

 数えていますとも。

 意味の判明した単語の数はしっかりと押さえておき、毎日忘れていないかの記憶の確認をする。

 予め知っている単語の数をカウントしておけば、忘れていないかの確認の際、記憶から漏れている単語があっても気づくことができるからね。

 例えば10個の単語を覚えたはずなのに9個しか思い出せないのであれば、1つ見落としていることにすぐに気づける。

 忘れている単語があることに早いうちに気づければ、結構思い出すことはできるものだ。

 これが、忘れてしまっていることにすら気がつかない場合、こぼれ落ちた単語は数日のうちに忘却の彼方(かなた)だ。

 メモがあるならともかく、それすらない状態での長期間の学習では、新たに覚えることよりも一旦覚えたことを忘れない努力の方が大切になる。

 伊達(だて)に複数の外国語を勉強した訳ではない。

 家庭教師、塾講師時代には生徒にもよくアドバイスしていたことだ。

 とにかく、しっかりと覚えたか?覚えたことを忘れていないか?の確認は暗記の基本だ。

 もう、徹底して行いましたとも。


 学習を始めた最初の頃は、とにかく苦戦しまくった。

 そもそも、周りの大人に相手の迷惑も省みずしつこくつきまとうことに多大なストレスを感じた。

 そうして散々つきまとったあげく、結局意味の判明した言葉が全くなくて、激しく落ち込んだりもした。

 それでも、少しずついい感じにこちらの狙った単語を引きだせるようになってきて、“これ、何?”という魔法のフレーズを習得してからは学習は一気に進んだ。

 今では日常会話であれば、ほぼ問題なく理解できるレベルとなった。

 まだまだ油断はできないが、いきなり処分の可能性はだいぶ回避できたんじゃないかと思う。


 そして先日、私の語学学習に、“これ、何?”習得に続く第2の革命が起こった。

 なんと、お母様から文字を教えてもらうことに成功したのだ!

 以前にも何度か文字を教えてもらえるよう誘導しようと試みたのだが、その時はまだ言葉も片言で見た目も幼かったから(今でも幼いけど)、文字はまだ早いと相手にしてもらえなかったのだ。


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