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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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ボストク領気質

 翌日、私達はボストク侯爵自らの案内で、ボストクの市街地や軍関連の施設等を見学して回った。

 午前中は市街地の方で、午後からは軍関連の施設だ。

 市街地の方は、ほぼ予想通りというか、飲食店関連、特に酒場等の夜の店が多かった。


「ほんとうに殺風景な街で申し訳ない。

 お嬢さん方を案内できるようなお洒落な店でもあれば良いのだが、あいにくと無骨な兵士ばかりの街なものでなぁ……」


 今は午前中だから、ボストク侯爵の言う通り少し閑散とした感じだけど、これで夜に来るとだいぶ印象が違うのだと思う。

 レジーナやレオ君はよく分かってなかったみたいだけど、侯爵が微妙に案内を避けてたあの一帯って、所謂(いわゆる)お姉さん関連の店が集まった地区だよねぇ……。

 こちらが子供で女性だから、あまり目に入らないように気を遣ってくれているみたいだけど、実は非常に興味がある。

 べ、別に、そういうことに興味があるってわけではないよ!

 いくら前世の大人知識があるっていっても、今の私の体は完全無欠の子供ボディだからね。

 そういった方面の欲求なんて、全然起きません!

 そうではなくて、純粋に街を治める領主として、セーバの街にもそういった歓楽街を作るべきかもって思うんだよね。

 セーバの街は人口もだいぶ増えたし、何よりあの街は港街だからね。

 長い船旅でやって来た街に、そういったお店が全く無いというのは、流石に船乗り的にどうなんだろうって思うんだよ……。

 普通なら、そんな店は放っておいても勝手にできるものだし、私が気にしてやる必要なんて全くないんだけどね。

 でも、セーバの街はかなり事情が特殊だから……。

 街は商業地区、工業地区、居住地区としっかり管理され、空いた土地に好き勝手に店を出すようなことはできない。

 領主である私に、業務内容も含めてしっかりと出店許可を取らないと、勝手に店なんて作れない。

 生活に困っているような住民もいないし、住民の大半は私の学園の出身者だから、誰も私に隠れて無許可で商売を始めようなんて考えない。

 そして、これが最大の理由。

 営業許可を出す上層部の大半が、女性で子供であるってこと。

 セーバの街の商業関連のトップ3が、私、レジーナ、カノンだからね。

 流石に、風俗関連のお店を作りたいですなんて、言い出せないらしい。

「どんなことをするお店なんですか?」なんて真顔で聞かれでもしたら、とんだ羞恥プレイだ。

 フェルディさんやアルトさんなんかは、遠回しにそういったお店も必要みたいなことを仄めかしたりするけど、流石にはっきりとは言ってこない。

 私も気付かないフリで流してるけど、一応考えてはいるんだよ。

 現実問題として、街の治安や風紀に関わってくる大切な問題だからね。

 だから、ボストクの街の歓楽街については、本当はもっと詳しく視察したいんだけど、流石にこれは言い出せない……。

 折角の機会なのに、ままならないものだ。

 武器屋や魔道具店等を覗いて、店の商品の品揃えやセーバ産の商品の値段や普及率等を確認し、私達は市街地の視察を終えた。


 午後から向かったのは軍の関連施設。

 そんなもの、簡単に見学させてもいいのかって?

 勿論、問題無し。

 この施設の仮想敵は、魔獣とソルン帝国だからね。

 同じ国内の、一応公爵である私に隠さねばならないようなことは、何もないんだって。

 私としては、この国の兵器や、一般的な兵士の力を知っておきたかったから、今回の見学は願ったり叶ったりだ。

 昔、お父様の仕事の手伝いで、王都の軍の演習記録は見たことがあるけど、実際に兵士が魔法を使ったり剣で戦ったりするところを見た訳ではないからね。

 演習記録や、他所からセーバに来た戦闘職の人達なんかの話で、セーバの街の自警団やセーバリア学園のレベルが、他所と比べてかなり高いだろうということは分かっている。

 ただ、それは知識として知っているというだけで、実際にこの国の兵士が戦うところを見たわけではないからね。

 セーバの街が他領の兵士に攻め込まれるようなことは現実的に起こらないだろうけど、それでもこの国の兵士のレベルを知っておくことは大切だ。

 それに、あと数年したら王都の学院にも通わなければならないしね。

 サラ様曰く、「この街は非常識です!」らしいから、この機会に他所の兵士や貴族のレベルを知っておく必要がある。

 そんな訳でやって来た軍の演習場なんだけど、周りの反応は様々。

 特にこちらを見下すようなこともなく、ふつうの態度で接してくれる者。

 非常に友好的、好意的な者。

 そして、あからさまな敵意の視線を向ける者。

 因みに、これ、世代順。

 上から順番に、お父様、お母様よりも上の世代。

 大体、お父様、お母様と同じくらいの世代。

 最後の敵意丸出しなのが、20代前半から、私達と同じくらいの歳の見習いまでの世代。

 まさか、大人に好かれて、子供に嫌われるとは思わなかった……。

 この演習場に来るまでに会った、他の爵位持ちの兵士さんなんかも大体同じ反応で……。

 昨日の侯爵の奥さんの友好的な態度も気になったので、思い切ってボストク侯爵に直接聞いてみた。


「私の魔力が少ないことや、私の母のことで、この国の貴族が私を快く思っていないことは知っています。

 ボストク侯爵は、王都での件や王妃様の口添えで、私に対する評価はだいぶマシなようですけど、他の貴族の皆さんの私に対する評価がよく分からないのです。

 世代によって私に対する態度が違うように感じるのは、気のせいでしょうか?」


 私の質問に苦笑いを浮かべて、ボストク侯爵がその理由を教えてくれた。


「あれは簡単に言えば、娘を、ベラドンナ王妃殿下をどう見ているかの違いじゃよ。

 幼い頃からベラの成長を見守ってきた世代、ベラに憧れて育った世代、そして、ベラのことを直接は知らない世代じゃ」


 ボストク侯爵の娘である王妃様は、このボストク侯爵領では絶大な人気を誇っていたという。

 現実に、魔獣や盗賊等との戦闘が日常茶飯事のボストク領では、元々王都の貴族ほど生まれ持っての魔力量にのみ拘る貴族は少ないらしい。

 魔力は強力な武器だが、使いこなせなければ意味がない。

 いくら強大な魔力があっても、魔物の前で震えて呪文も唱えられないような貴族よりも、魔物に向かって真っ直ぐに槍を突き出せる平民の方が、戦場ではずっと頼りになる。

 その者の実力は、実際に何ができるかで判断されるべきで、魔力量はその判断のための一要素に過ぎない。

 これが、ボストク領の気風らしい。

 要は、完全な実力主義ってことなんだけど、その思想が突き抜けていたのが王妃様だったんだって。


「ベラは、アメリア公爵くらいの歳には既に小隊を率いて魔物や野盗の討伐をしておってな。子供の私が心配だと言うのなら、私よりも優秀な指揮官になりなさいと、周囲を叱りつけておったよ」


 実に、あの王妃様らしいね。

 きっと、心配する大人たちを、心配などできなくなるまで叩きのめしたのだろう……。

 その情景が、目に浮かぶようだね。


「あやつは、自分が率いる隊員に対して、身分も魔力も一切考慮しなかった。

 純粋に強いか弱いか、使えるか使えないかだ。

 平民出身の兵士に、平気で上級貴族を部下としてつけたりしてな。

 使えると思った者はとことん優遇するが、使えないと思えば相手にもしない。

 最初こそ反発していた周囲の者も、娘が結果を出し続けるうちに、だんだんと娘に心酔するようになってな。

 じゃからな、このボストク領で、王妃になる前のベラを知る者は、誰もベラの評価を疑わん。

 魔力も身分も関係ない。ベラドンナ様が気に入った相手なら、間違いなく優秀だとな。

 王妃様がアメリア公爵のことを気に入っているという話は、ボストク領でも有名だからのぅ。

 娘のそういった気質を知る世代で、アメリア公爵を侮る者はおらんよ」


 ついでに言うと、ここでの私の評価が高いのは、セーバ産のウィスキーや武器の影響も大きいそうだ。

 セーバ産の武器を持つことは、今この街ではちょっとした自慢になるらしいし、魔物討伐の慰労会で出されるウィスキーは、兵士たちの間で大人気なんだとか。

 あの喉を焼くような味に比べれば、ワインなど子供の飲み物だと、一晩で大量のウィスキーが消費されるらしい。

 目下、慰労会での酒代が、ボストク軍上層部のちょっとした悩みの種らしく……。

 今回の私達の訪問で、今後は安くウィスキーが手に入るかもと、ボストク侯爵以外の上位貴族も大喜びなのだそうだ。

 そして……。

 そんな好意的な貴族の中でも特に王妃様と同世代の貴族の視線が熱いのは、皆が王妃様、若しくはお母様のファンだからって、なにそれ! 


「これは、我が領だけの話ではないがな。

 アリッサ公爵やベラと同じ世代の者は、大抵が二人のうちどちらかのファンじゃよ。

 じゃからな、孫娘のサラ様やアリッサ公爵の娘のアメリア公爵を、自分の息子の嫁にと狙っている者は意外に多い。

 サラ様は風の単一属性じゃし、他所に嫁げば王族ではなくなる。

 アメリア公爵は魔力が少ない。

 それでも、ベラ様やアリッサ公爵の縁戚になれるならと、息子の嫁にと考える貴族も少なからずおるのだよ。

 特に我が領は、魔力ではなく実力で評価する土地柄じゃからな。

 王妃殿下に認められ、セーバの発展というかたちで十分に実力を発揮しているアメリア公爵は、息子の結婚相手としては申し分ない。

 セーバの街の領主じゃから嫁にはできんが、子供を婿に出すことはできる、とな」


 知らないうちに、私にそんなモテ期がきていたとは……。

 そういえば、急遽王都からセーバに引っ越すことになった時にも、私の結婚がどうとかお父様が言っていたような……。

 案外、断りにくい縁談って、当時のお父様の数少ない味方(実は、ただのお母様のファン)からだったりして……。

 母親がアイドルだからって理由でモテても、あんまりうれしくないんだけど……。


 まあ、大体の事情は分かった。

 でも、そうすると、どうして私と歳の近い人達だけが、あんなに敵意を見せるのだろう?

 いくら王妃様を知らない世代っていっても、ボストク領が実力主義の土地柄であるのは変わらないよねぇ……。

 人を魔力量だけでは判断しないっていうなら、友好的とまではいかなくても、いきなり親の敵を見るような目で睨む必要はないと思うんだけど……。


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