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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

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老人の過去

 絶句する私達を前に、マルドゥクさんは、レジーナの両親がセーバにやって来る前の話をしてくれた。

 レジーナの母親のレベッカさんは、当時農業ギルド長をしていたマルドゥクさんと、その秘書さんとの間にできた子供だったらしい。

 部下に手を出したってやつ!?

 よくある不倫の子?

 そんな話を孫にするってどうよ!?とか、思ったんだけど……。

 レベッカさんが生まれた当時、既にマルドゥクさんは結婚していたから、傍から見れば確かに不倫相手の子で間違いないんだけど……。

 実際にマルドゥクさんがその秘書さんと付き合いだしたのは、結婚した奥さんよりもずっと前らしくて、実際、二人は結婚の約束までしていたらしい。

 そこに無理矢理割り込んできたのが、当時、ユーグ領とザパド領との農作物の交易ルートを押さえていたザパド領の貴族なんだって……。

 出たよ、ザパド領……。

 また、お前か!って感じだね。

 


「当時のワシは、研究成果が国王陛下より認められ、農学博士の称号を得て、農業ギルド長の地位についたばかりだった。

 当時の農業ギルドは、それは酷い有様でな。

 元々農業の盛んなユーグ領の中で、横の繋がりを持たない農民達のための互助組織としてできたのが農業ギルドだったんだが……。

 不作の村を救う目的で始まった豊穣魔法を使える魔術師の管理育成が、いつの間にやら豊穣魔法の使える魔術師を高額で派遣する組織になってしまっていた。

 本当に困っている農民のところには魔術師を派遣せず、金払いのいい貴族の直轄地ばかりに魔術師を派遣する。

 農民への情報提供、技術提供どころか、逆に自分達に都合の悪い情報は隠蔽する始末だ!

 ワシは、その状況を変えたかった。

 そのためには、力が、権力がいる。

 農学博士とはいえ所詮平民のワシが、農業ギルド長の地位に居続けるためには、あの横柄な貴族どもの縁談話を断るわけにはいかなかった……」


 当時を思い出したのか、悔しそうに俯くマルドゥクさんの言葉を、ユーグ侯爵が補足する。


「私の先々代の頃の話ですな。

 父である先代から聞かされた話では、あの頃のユーグ領の貴族は、魔力の少ない農民など労働力を提供する家畜くらいにしか考えていなかったそうです。

 そのせいで、土地を捨て、他領へと流れていってしまう農民もかなりいたとか……。

 当時、そのような状況に危機感を抱いていた父とマルドゥク先生が協力して、長い時間をかけて農業ギルドの改革と領地の貴族の粛清を行ったそうです。

 その粛清の際、農業ギルドの管理する穀物をザパド領に不正に横流ししていたマルドゥク先生の奥さんも、父の手によって処刑されています。

 残念ながら、その時には既にレベッカさんの母上は亡くなってしまっていたそうですが……」


 目の前の、いかにもインテリ風の学者さんといったマルドゥクさんに、そんな波乱万丈の歴史があったとは……。

 人は見かけによらないものである。

 当時、マルドゥクさんの奥さんの様子に危険を感じていたレベッカさんのお母さんは、レベッカさんを身籠ったことがわかると、すぐに黙って農業ギルドを辞め、農業ギルドとの商売上の付き合いの強かったレボル商会に再就職したらしい。

 そこでレベッカさんは生まれ、フェルディさんの姉代わりとして育ち、そして同じくフェルディさんの兄代わりでもあったレジーナのお父さんと結婚してセーバの街にやって来たと。

 実はこの話、フェルディさんも知らないし、マルドゥクさんやユーグ侯爵が知ったのもつい最近なんだって。

 自分に娘がいたことも、その娘が既に亡くなっていて、その子供がセーバの街にいることも、知らされたのはほんの半年ほど前だそうだ。

 農業ギルド長の職を辞してから、全く音沙汰なかったレボル商会の先代が突然訪ねてきて、この話をしていったらしい。


「あれの、死ぬ前の遺言だったそうだ。

 たとえ(レベッカ)のことを知っても、ワシ(マルドゥク)には今更何もできることは無いし何の心配も無いと思えるような状態になるまで、決してレベッカのことは伝えないでくれとな。

 酷い意趣返しだよ……。

 あれは、娘のために、ワシに、何もさせてはくれなかったのだから……」


 本当なら、レベッカさんがレジーナのお父さんと結婚した時に、マルドゥクさんにレベッカさんのことを伝えるつもりだったんだって。

 でも、その後すぐにレジーナの両親はザパド領を追放されることになって……。

 レボル商会も大変なことになっていたし、その当時のレベッカさんの状態を、“何の心配もない”とはとても言えない。

 そのままこの問題は有耶無耶になり、いつの間にか時が過ぎていった。

 数年前、セーバの街から戻ったフェルディさんに、レジーナの両親が既に亡くなっていたと聞かされた時には、とても後悔したらしい。


「済まなかったと、ワシに申し訳ないことをしたと、先代の商会長は詫びておったよ。

 遺言など気にせず、せめてレベッカがセーバに行く前に知らせておけば、こんなことにはならなかったと……。

 ワシとレベッカから、親子が巡り会える機会を奪ったのは自分だと……。あなたの娘を殺したのは私だと……。

 ワシには、責められんよ……。

 責められるべきは、ワシの方だ。

 あれが身籠っていたことにも気付かず、農民のためなどと言って、結局はあれを捨てたのだ。

 きっと、その報いなのだろう……。

 自業自得だよ」



もうすぐで連載半年です!

ということで、次回日曜日にも更新します。



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