どう考えても俺の妹候補たちは〇〇すぎる件について 〜どう件〜

ありえない！

　魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ　レインボー】を開いた俺たち。

　この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

　俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

　俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

　俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

　俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

　え？　高校が午前中で終わるわけがないだって？　それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

　だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

　さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。

　夏休み……紫煙の樹海……。

「よし、それじゃあ、そろそろ行くか」

「ああ、そうだな。私が知っている魔王の話を全て語るには、時間が足りないからな」

「よし、じゃあ、行くぞ。クロエ」

「待て。私と仮契約をしたままでいいのか？」

「それって、どういうことだ？」

「今ここで仮ではなく、本当の契約を結んでおかなくていいのか？　という意味だ」

　俺の膝を枕にしている黒いドレスと黒い翼と黒髪ロングと紫色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『クロエ・ドロップアウト』は俺にそう言った。

「本当の契約って、何をするんだ？」

「それはお互いの肉を食べ……」

「却下だ」

「まだ最後まで言っていないのだが……」

「いや、最後まで言わなくてもわかるだろ普通。というか、俺はお互いの肉を食べ合いたくない」

「しかし、今のままでは、お前と私はただの義理の兄妹にすぎないのだぞ？」

「今はそれでいいじゃないか。何が問題なんだ？」

「それは……その……あ、あれだ。仮契約のままだと私と念話ができないとか、感覚を共有できないとか、色々あってだな」

「ちょっと待て。それは別にしなくてもいいんじゃないか？」

「いや、その……あれだ。はぐれた時に役立つだろ？」

「はぐれた時か……。まあ、念話はいいとして、感覚を共有するのは、ダメだ」

「ど、どうしてだ？」

「いや、だって、俺が自分を殴ったら、その痛みがお前に伝わるようになるってことだろ？　そんなの別に必要ないだろ」

「ま、まあ、そうかもしれないが、悪いことばかりではないのだぞ。そう、例えば、どんなに離れていても筆談ができる」

「それって、指で体のどこかに文字を書くってやつか？」

「ああ、そうだ。念話で会話できない時に役立つぞ」

「……あのさ、さっきからやたら俺に契約させたがってるけど、何か理由でもあるのか？」

「な、なんのことだ？　私にはさっぱりわから……」

「なあ、クロエ。仮契約をした俺たちって、今、どんな状態なんだ？」

「え？　あー、そうだな。お互いがどこにいるのかくらいはわかるぞ」

「そうか……。なら、今は仮契約のままでいいんじゃないか？」

「それはダメだ」

「どうしてだ？」

「私はお前と仮契約ではなく、今ここで本当の契約を結びたいからだ」

「なるほど。じゃあ、なんでお前はそこまでして、俺にこだわるんだ？」

「それは……その……お前が……おいしそうだからだ」

「そうか。ということは、お前は俺の肉にしか興味がないってことだな？」

「それは少し違う」

「ん？　どこがどう違うんだ？」

「私はお前の肉だけでなく、血液や魔力ごと食べたいからだ……あっ」

「そうか……そういうことか。つまり、お前は俺と本当の契約を結ぶことで俺を食べられるようになるってことか」

「さ……さあて、それはどうだろうな」

「誤魔化しても無駄だ。まあ、俺はお前と仮契約を結んだ時から、怪しいと思っていたがな」

「ま、待て。私は最初からそう考えていたわけじゃ……」

「黙れ。お前はお前の兄である俺を食おうとしたんだ。俺に食われても、文句はないよな？」

　その時、彼女は自分の体を動かせないことに気づいた。

「ま、待て！　私は別にそんなつもりじゃなかったんだ！　ただ、最近ロクな食事をしていなかったせいで、おなかがすいていただけなんだ！　だから、許してくれ！」

「……どうしようかな……。実はここにやってきた人間を食べてたって、可能性もあるからな……」

「だ、誰がそんなこと……」

「じゃあ、お前の身体中についているその赤い液体はなんだ？」

「は、はははは、そんなもの私の体についているわけがな……」

　その時、彼女は自分の体を見た。

　その直後、彼女は自分の体に赤黒い液体が服のいたるところについているのを見つけてしまった。

「な、なんだこれ。わ、私はなぜ……」

　その時、彼は彼女を見下しながら、こう言った。

「そんなの決まってるだろ？　お前が……人を喰らう化け物だからだよ」

「う、嘘だ！　そんなことありえない！　こんなの絶対に嘘だあああああああああああああああああ！！」

　その直後、彼女の目に飛び込んできたのは、知らない天井だった……。

　どうやら、ベッドで眠っていたらしい。

「こ、ここは……どこ……だ？　私はいったい……」

「おう、起きたか。クロエ。なんかうなされてたけど、大丈夫か？」

「ケンケン……私は、確かお前とあの樹海にいたはずだよな？」

「うーん、まあ、お前が魔王の話をした後、また寝ちまったから、ユミナの屋敷まで運んできたんだよ」

「そ、そうか……。そんなことがあったのか。その、ありがとう」

「どういたしまして」

「そ、その……すまないがしばらく手を握っててくれないか？」

「ああ、いいぞ。お前がそれで安心して寝られるのなら、お安い御用だ」

　彼は、その辺にあった椅子に腰掛けると、クロエの小さな手を握った……。

　その直後、彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべながら、すぐに眠ってしまった……。