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スライサードラゴン!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……紫煙の樹海……。

 俺は、『大鬼オーガ』にもてあそばれそうになっていた黄緑髪ロングと青い瞳が特徴的な美少女……いや、美妖精を助けた。

 俺はその見返りとして、樹海の案内を彼女に頼んだ。


「なあ、ちょっといいか?」


「はい、なんでしょう」


 俺はゆっくり立ち止まると、身長160センチくらいの妖精にこう言った。


「この世界の妖精ってさ、お前みたいに……」


「容姿が普通の人間と変わらないのか……ですか?」


「ああ、その通りだ」


「そうですね……。虫に例えるなら、今の私は幼虫です」


「え? 幼虫なのか?」


「はい、幼虫です」


「そうか……。それじゃあ、さなぎはどうなるんだ?」


「えっと、葉っぱでまゆを作った後、しばらく寝ます」


「その葉っぱって、なんでもいいのか?」


「はい、そうです。私のように森や林にいる妖精はみな、葉っぱでいろいろなものを作れるので、自然が無くならない限り生き続けることができます」


「そうか、そうか。それじゃあ、成虫はどうなるんだ?」


「はい、成虫になると、翼が生えます。天使の翼や単子葉類の葉っぱが透明になったかのような翼……そして、まれに蝶の羽のようなものが生えることがあります」


「なるほど……。そういう仕組みなのか」


「はい、その通りです。しかし、私はこう見えても、ここの管理者ですから、この樹海のことを私より熟知している者はいません」


「ほう、それは頼もしいな。じゃあ、その証拠を見せてくれ」

 

「証拠……ですか?」


「ああ、そうだ。俺に相応しい使い魔をここに連れてき……」


「それはできません」


「お、おい、最後まで言わせろよ……」


「すみません。しかし、使い魔とは自分のパートナーになる存在ですから、自分で選ぶのが一番です」


「そっか……。なら、使い魔になりそうなモンスターがどの辺にいるのかぐらいは教えてくれないか?」


「はい、それは大丈夫です。では、どうぞごゆっくり」


 葉っぱで作った服を着ている彼女はその辺に落ちていた紫色の葉っぱで草笛を吹いた。

 すると、彼女は一瞬で消えてしまった。


「おーい! なんで姿を隠すんだよー! 出てこいよー!」


 彼がそう言うと、彼女の声が聞こえてきた。


『あなたはこれから私が召喚するモンスターと戦ってください。そして、あなたがそれを使い魔にしたいかどうかを考えてください』


「もし、俺がそいつを選ばなかった時はどうするんだ?」


『あなたが納得するまで、それを続けます。そして、使い魔にしたいモンスターと戦って勝てたなら、そのモンスターをあなたの使い魔にしても構いません』

 

「もし、俺が負けたらどうなるんだ?」


『そうですね……。ここから、一生出られなくなるというのは、どうでしょう?』


「なるほど。じゃあ、ちょっくら本気を出すとするかな」


『決まりですね。では、まず一体目を召喚します』


 彼女がそう言うと、彼が立っている場所から5メートルほど離れたところに黄緑色の魔法陣が出現した。

 その後、それが空中に浮かぶと同時にイノシシ型のモンスターが現れた。(体はサツマイモのような色である)


「ほえー、こんなでかいイノシシ見たことないぞ」


『当然です。ここにいるモンスターはみな、私が育てたものですから』


「そ、育てたって……ここら一帯のモンスターを全部、お前が育てたってことか?」


『はい、その通りです。ちなみに、その子は『アクセル・ボア』といいます。その子は、直線なら時速200キロを出せますから、気をつけてくださいね?』


「そうか……でも、今の俺にスピードは関係ないぞ?」


『そうですか……。では、アッくん、存分に戦ってください!』


「ブオオオオオッ!!」


 アクセル・ボアことアッくんは、俺に向かって突進してきた。

 しかし、俺はそいつの鼻が俺に激突する前に、気配を殺しながら、回避した。

 その後、俺は右足に五属性の力を込めた。

 そいつは、しばらくあたりを見回していたが、俺はその不意をついた。

 そいつの腹をサッカーボールのようにポーンと蹴ったのである。

 そいつは、何をされたのかわからないまま、どこかに吹っ飛んでいった。


「さぁ……次は何かな?」


 俺は、彼女を挑発するためにわざとそう言った。

 すると、彼女はやけになったのか、ドラゴンを召喚してきた。

 紫色のドラゴンか。毒を持っている可能性があるけど、他に何かありそうだな……。


『さあ、行きなさい! スライサードラゴン! あなたの力を彼に見せつけるのです!』


「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 二足歩行ができて翼があるそのドラゴンは雄叫びを上げると、鋭い爪で俺を切り刻むために、前進し始めた。

 まあ、油断しないように気をつけよう……。

 俺のその時の心境はそのようなものであった……。




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