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ガトリング!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……ユミナの屋敷……使い魔になる可能性があるモンスターたちが住む森に到着……。


「お、おい、ユミナ。本当にここがその森なのか?」


 俺は屋敷の一階の窓からユミナ(黒猫形態)を抱き抱えた状態でそう言った。


「うん、そうだよ。ここが『紫煙の樹海』だよ」


「え? 洗脳10回?」


「違うよ。『紫煙しえん樹海じゅかい』だよ」


「そっか」


「うん、そうだよー。それじゃあ、準備をしようか」


「ああ」


 俺は使い魔を捕まえるのに必要な道具をユミナ(黒猫形態)が作ってくれた黒影製のリュックに入れた。

 どういう構造なのかはわからないが、その中には大きさや重さに関わらず、なんでも入った。


「よし、それじゃあ、行ってくる」


「お兄ちゃん……!」


 俺が屋敷の外に出ようとした時、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』が俺をギュッと抱きしめた。


「お兄ちゃん……気をつけてね……」


 俺は、ルルナの頭を撫でながら、こう言った。


「ああ、無茶をしないように気をつけるよ。だから、ここで待っててくれ」


「うん、わかった。いってらっしゃい……お兄ちゃん」


 ルルナはそう言うと俺からそっと離れた。

 ルルナの背後には他のみんなが立っていた。

 どうやらみんなで俺を見送りに来たらしい。

 この時、俺は幸せ者だなと思った。

 交通事故で両親を亡くしてから、こんなことをされたことなどなかったからだ。


「じゃあ、いってくる」


 俺は、そう言うとみんなに背を向けて屋敷の扉を開けた。

 よし、それじゃあ、使い魔を探しに行くとしよう。


 *


 それにしても……なんでここは、紫色の煙が漂ってるんだ?

 俺が樹海に入ってから、数時間ほど経った……。

 しかし、モンスターの気配が全くなかった。

 うーん、どこかに隠れてるのかな?

 俺がそう思った直後、樹海に冷たい空気が流れ始めた。


「な、なんか急に冷えてきたな……。もしかして、この先に何かいるのかな?」


 俺はそんなことを言いながら、先に進んだ。


「うーんと、冷気はこっちから流れてくるから、この辺に何かいると思うんだけど……」


 俺がふと、そんなことを言うと『小鬼ゴブリン』たちが俺を取り囲んだ。


「えーっと、こいつらがいるってことは俺に見せたくない何かがあるってことだよな?」


 俺はナイフや棍棒で俺を脅しているそいつらの数をざっと数えると気配を殺した。

 今はここで戦っている場合ではない。

 俺は自分の使い魔を探しにここに来たのだから。

 俺がそんなことを考えながら、気配を殺した状態で先に進むと、そいつらのリーダーらしき『大鬼オーガ』がいた。


「お、お願いですから、ここをめちゃくちゃにしないでください!」


 その近くに縄で縛られた状態で二匹の『小鬼ゴブリン』に座らされている美少女がいた。

 黄緑色の長髪と青い瞳が特徴的な彼女は緑色の葉っぱでできた服を着ていた。


「それは無理だ。なぜなら、ここは今から俺たちの住処だからだ」


 へえ、ちゃんと会話できる『大鬼オーガ』もいるんだな。


「そ、そんなことはこの私が許しません! 今すぐここから立ち去りなさい!」


「お前のような出来損ないの妖精ごときがこの俺に刃向かうとは……少々、しつけをする必要があるようだな」


 その『大鬼オーガ』はそう言うと、彼女の前に立ちはだかった。


「た、たとえ、この身が滅びようとも私はここを絶対に守ってみせます!」


「ほう、ではその前に楽しませてもらうぞ」


 そいつは彼女の服を破こうと彼女に手を伸ばした。

 彼女はこれから何をされるかわかっていた。

 しかし、彼女の目はまだ諦めていなかった。

 はぁ……厄介ごとに巻き込まれるのは、嫌だけど目の前で女の子が襲われそうになっているのを見過ごすわけにはいかないよな……。

 俺は気配を殺したまま、そいつの真横に立った。


「挨拶代わりの……ガトリング!」


 俺はそう言いながら、そいつの顔面に五属性パンチを連続で打ち込んだ。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 そいつはそう言いながら、どこか遠くへ飛んでいった。

 その光景を目の当たりにした『小鬼ゴブリン』たちは一斉に彼を追いかけ始めた。

 そいつらがいなくなると、俺は彼女の縄を解いた。


「大丈夫か? どこかケガしてないか?」


「い、いえ、大丈夫です。それより、あなたはいったい……」


「ん? あー、まあ、話すと長くなるから道中で話すよ。その代わりに少し道案内をしてくれないか?」


「は、はい、わかりました」


「よし、決まりだな」


 俺が彼女に手を差し伸べると彼女は俺の手をギュッと握った。

 その後、彼女はスッと立ち上がると、突然俺に抱きつき、えんえんと泣き始めた。

 なあ、そりゃこうなるよな……。

 俺はそんなことを考えながら、彼女をギュッと抱きしめると、彼女が泣き止むまで頭を撫で続けることにした……。

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