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連れて行ってくれ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……ユミナの屋敷……ユミナの寝室……。


「さて、それじゃあ、ケンジくんの使い魔を探しに行こうか」


 ベッドの上に座っているユミナ(黒猫形態)は俺たちにそう言った。


「まあ、それはいいんだけどさ。使い魔になる可能性があるモンスターたちがいるっていう森はいったいどこにいるんだ?」


「あー、それね。うーん、なんか紫色の煙がいつ行っても漂っている森にいるよ」


「な、なんだそれ……。そんなところがあるのか?」


「うん、あるよ。けど、死亡率が80パーセントだから、かなり危険だけどね」


「おいおい、そんなところに俺が行って大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。君は昨日、カナミちゃんから魔力制御と気配の殺し方と……えーっと、あと1つなんだったっけ?」


「ん? あー、『卑怯拳』のことか?」


「そうそう、それそれ。気配を殺した後に魔力制御を行うことで相手に気づかれることなく、強力な一撃を与えることができるすごい技……だけど、ちょっとずるいよね」


「ああ、だから、『卑怯拳』だ」


「あー、なるほど。卑怯って、そっちの方だったんだね」


「いや、普通に考えたら、そうだろ?」


「まあ、そうかもしれないね。それじゃあ、そろそろ出発しようか」


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


「ん? なあに?」


「いや、その……使い魔を捕まえるのに必要な道具って、どこにあるんだ?」


「あー、それね。まあ、道具といっても、気休め程度だから別にいらないよ」


「いや、ないよりあった方がいいだろ」


「ケンジくん」


「ん? なんだ?」


「次に今の発言をする時は、周りに女の子がいないか確認してからにしてね?」


「ん? あ、ああ、わかった」


 ユミナ(黒猫形態)のその言葉の意味は俺には分からなかったが、ルルナたちは、うんうんとうなずいていた。


「コホン……じゃあ、今からその道具を紹介するね」


「ああ、よろしく頼む」


 その直後、ユミナ(黒猫形態)は「ニャーン」と鳴いた。

 すると、ユミナの背中の上にハチミツらしきものが入っているびんが出現した。


「え、えっと、それはいったい何なんだ?」


 俺がそう言うとユミナ(黒猫形態)は黒いシッポをそれに巻きつけた。

 そして、自分の目の前に置いた。


「あー、ちょっと待ってね。今、思い出すから……えーっと、あー、そうそう。これは、『八味Ⅱ』だよ」


「え? なんだって?」


「だから、『八味はちみ(ツー)』だよ」


「そ、それって、普通のハチミツと何が違うんだ?」


「うーんとねー、たしかに見た目はハチミツだけど、実は八種類の香辛料を混ぜ合わせて作られたものなんだよ」


「いや、どう見ても普通のハチミツにしか見えないのだが……」


「じゃあ、ちょっと舐めてみる?」


「いや、それはやめておくよ……。それで? それって、どんな時に使えるんだ?」


「えーっと、たしかモンスターに襲われた時に投げるものだよ」


「いや、いくらその時、モンスターが興奮状態だからって、見た目に騙されるわけ……」


「いやあ、それが騙されちゃうんだよね……」


「それは本当なのか?」


「君はモンスターの嗅覚は敏感だから、見た目に騙されることなんてない……。そう思ってるんだよね?」


「まあ、そうだが……。それがどうかしたのか?」


「まあ、結論から言うとね。これには、嗅覚をおかしくする魔法と見た目をハチミツみたいにする魔法がかけられているから、いくら嗅覚がいいモンスターでも、これを自分の大好物だと認識してしまうんだよ」


「ほう、それはすごいな」


「でも、たいていは貴族たちが罰ゲームに使ってるんだけどね……」


「で、でも、使い方によっては役に立つってことだよな?」


「うん、そうだよ」


「そっか……。じゃあ、まだ紹介していない道具もそういうたぐいのものなのか?」


「まあねー」


「マジかよ……。というか、それはいったいいくらで売ってるんだ?」


「うーん、そうだね……時期にもよるけど、だいたい一個、10万カオスくらいだよ」


 ※10万円です。


「はあ!? なんでそんなに高いんだよ!」


「いや、だって、材料に使う八種類の香辛料はどれもレアで取りに行った人の半分は帰って来ないし、見た目をいつわる魔法と嗅覚をおかしくする魔法は調整が難しいからだよ」


「そ、そうなのか?」


「うん、そうだよ。君たちの世界でいうなら、同じがらのパ〇チールを捕まえるのと同じくらい難しいよ」


「それって、ポ〇モンのアレか?」


「うん、そうだよー」


「そ、そうか。この世界でも苦労している人たちがいるんだな……」


「まあ、詳しいことは道中で話すからさ。とりあえず出発しようよ」


「あ、ああ、そうだな。それじゃあ……ヤドカリ型移動要塞『ヤミナ』よ! 今から俺の使い魔を捕まえに行くから、紫色の煙がいつも漂っているという森まで俺たちを連れて行ってくれ!」


 俺がそう言うとユミナの屋敷はヤドカリ型移動要塞『ヤミナ』になった。


「それじゃあ、しゅっぱーつ!!」


 俺がそう言うと、ユミナの屋敷を家にしている巨大な金属製のヤドカリが目的地に向けて走り始めた……。






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