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解散!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……ユミナの屋敷……トレーニングルーム。


「まったく……気配の殺せるようになった途端に悪用するとは……まだまだだな、ケンちゃん」


「いや、だって……」


「だってじゃねえ!」


「ひぃ……! ごめんなさい! もう二度と悪用したりしません! だから、許してください!」


 彼は白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや美幼女『カナミ・ビーストクロー』に土下座をしながら、そう言った。


「……まあ、今のは冗談だ。というか、私は怒ってなどいないぞ? 私はただ、自分が教えた技を誰かに悪用されるのが嫌いなだけだ」


 その直後、彼はカナミの方を見ながら、こう言った。


「そうか……ごめんな、カナミ。もう悪用しないから許してくれ」


「よし。では、今から私が使う技をものにしてみせろ。もしそれができたら、許してやらんこともない」


「本当か! よし! それじゃあ、早速始め……」


 その時、彼の目の前にカナミが出現した。


「反応が遅い!」


「くっ……!」


 カナミは正座をしていた彼の顔面を蹴った。

 しかし、彼はそれを両腕をクロスさせて防いだ。


「気配を殺せば、今のように敵の不意をつくことができる。そして、そのあとに魔力制御を行うと!」


 その直後、カナミは彼の背後に出現した。

 彼女は拳に魔力を込めた一撃を俺の背中に打ち込んだ。


「ガハッ……!」


「このように、相手に気づかれることなく、攻撃できるようになる。さぁ、やってみろ」


 カナミは気配を殺しているため、どこにいるのかわからない。


「そ、そんなこと言ったって、同時にそんなことできるわけ……」


「私がいつ同時にやると言った?」


「え? でもさっき、そう言ってたじゃないか」


「私は気配を殺した後に魔力制御をすれば……としか言っていないぞ?」


「そ、そうだったか?」


「ああ、そうだ。さぁ、これでわかっただろ? 早速やってみろ」


「そ、そんなこと急に言われても……」


「ごちゃごちゃ言ってないで、とりあえずやってみろ! 最初からなんでもできるやつなんてこの世にはいないんだよ! けど、これからできるように繰り返しやっていけば、大抵のことはなんとかなるもんだ! だから、とりあえずやってみろ!!」


「……そう……だな。やってもいないのにできないとか言ってたら、いつまで経ってもできないままだよな。ありがとう、カナミ。俺、頑張るよ」


「そうか……ならば、できるまでひたすら繰り返せ!」


「はい!!」


 この後、俺は気配を殺した後に魔力制御を行うという作業をひたすら繰り返した。

 何度も……何度も……何度も……何度も……。

 そして、俺はついにそれをものにした。


「はぁ……はぁ……はぁ……こ、これが気配を殺した後に魔力制御を行うことで……相手に気づかれることなく……重い一撃を放つことができる技……か」


 カナミは俺の前に姿を現すと、こう言った。


「ああ、そうだ。それが使い魔を捕まえる際に役に立つから、体に感覚が残っている間に練習しておくんだぞ?」


「はい! ……ところでこの技の名前ってあるのか?」


「ん? 別に名前はないぞ。まあ、私は『不意打ち拳』と呼んでいるがな」


「『不意打ち拳』か。じゃあ、俺は『卑怯拳ひきょうけん』と呼ぶことにするよ」


「なるほど、たしかにそうだな。まあ、これでケンちゃんは使い魔を捕まえる際に必要な最低限の技を全て習得したわけだ」


「え? もう終わりなのか? 何か他にもあるんじゃないのか?」


「あるには、あるがケンちゃんが習得していいのはここまでだ。残りの技は私が時期を見計らって教えるから、それまでに私が教えた3つの技を無意識に使いこなせるようにしておくのだぞ?」


「ああ、ありがとな、カナミ。というか、お前って、意外と教えるのうまいよな」


「意外とは、なんだ。意外とは。言っておくが魔王に近接戦闘での立ち回り方を教えたのは、この私だぞ?」


「え? ということは今回、俺が習得した技って……」


「ああ、もちろん魔王も使えるぞ」


「は、ははは。そ、そうか……」


 まあ、魔王よりケンちゃんの方が上達は早かったがな……。


「とは言っても、私は元魔王の幹部だ。いつ、魔王に消されてもおかしくない……」


「そ、そんなこと俺がさせない! というか、させてたまるか! もしも、その時がきたら、俺がカナミを守ってやるからな!」


「ふん、まだ私に一度も勝てたことがないやつがそれを言うか。だがまあ、その時はよろしく頼むぞ?」


「お、おう! 任せとけ!」


「ああ、頼りにしているぞ。では、これにて特訓を終了する! 解散!」


 カナミによる特訓で成長した俺は、ユミナ(黒猫形態)にこのことを報告しに彼女の寝室へ行くことにした……。



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