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んじゃあ行くか!

 その日の高校の帰り。俺とルルナは本屋に寄った。俺は買いたい本があったため、それを見つけたら、すぐに店を出ようと考えていた。

 しかし、ルルナは異世界人。女性雑誌の表紙を見るなり、目を輝かせ。目に入った少女漫画を全て目を通していた。え? どうやって見たのかって?

 それはもちろん、時間を止めて読んでいたからだ。破いた透明なカバーは読み終えると、ちゃんと逆再生の魔法を使って、元に戻していたしな。

 マネできるやつなど、この世界にはいない……とは言いがたいため、一応言っておく。よいこは真似しないでね?


「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 日本って、とってもいいところだね!!」


「ああ、そうだな。けど、いくら日本と言えども、犯罪は日々、起きている。だから、気をつけるんだぞ?」


「はーい!」


 異世界からやってきたルルナの目的は魔王に支配されている自分の世界を救うためである。

 その逸材がいないか探していたところ、俺を見つけたという。俺は魔王を倒す力なんか一切、持っていないのだが、ルルナはそうは思っていないらしい。

 まあ、『兄妹契約』を結ぶために俺の血を一度、全部吸い尽くしたやつだ。

 それなりに頭は良い……のかな?


「ルルナ、もうじき月がきれいに観える時刻になるから、天体観測に……」


「うん! 分かった! レッツゴー!!」


 まだ最後まで言っていないのだが……まあ、いいか。でも、よいこのみんなは本屋さんで大きい声を出すんじゃないぞ?

 俺たちは本屋を後にすると、喋れるくらいのペースで走りながら、家に帰った。

 家に帰ると、ルルナは靴を揃えずに、屋根裏部屋へと走っていった。

 本来なら、礼儀がなっとらんと、父親が怒るシーンなのだが、あいにく俺の家には両親がいない。

 交通事故で亡くなってしまったからだ。別に寂しいわけではないが、やはり心にぽっかりと穴が空いてしまったような気持ちに時々なる……。

 だけど、今は違う。ルルナがやってきたおかげで俺の日常が少し明るくなったからだ。

 自分勝手で見た目とは裏腹に幼い部分があるが、本当の妹のように思えてきた。

 まだ魔王を倒しに行く気配が全くないため、悠長にしていていいのかどうか少し気になってはいるが、ルルナが笑顔でいてくれるなら、俺は別に……。


「お兄ちゃーん! 早くおいでよー! 月がきれいだよー!」


 噂をすればなんとやら……か。


「分かったー! 今行くー!」


 俺はルルナに呼ばれたため、ルルナの靴を揃えると、屋根裏部屋へと急いだ……。


 *


「えへへ〜、お兄ちゃん♪」


 屋根裏部屋に着いた早々に床に座った俺は、その部屋にある窓から月を観始めた。すると、ルルナが俺の肩に頭を乗せてきたのだ。(電車でよくあるやつ……と言っても、思いつかない人のために伝えておく。デ○ト・ア・ライブの二期のOPを観れば分かる!)


「んー? どうしたんだ? 急に」


「えへへー、呼んでみただけー」


「ははは、なんだよそれー」


「いやー、なんか幸せだなあーって」


「そうか? 俺にとっては、いつも通りだからなんとも思わないけどな」


「えー! 私みたいな可愛い妹が横にいるのになんとも思わないのー?」


「……別に……そういうわけじゃない……」


「お兄ちゃん? どうかした?」


「い、いや、なんでもない……」


「はぁ……。お兄ちゃん。私にはお兄ちゃんの心の声が全部聞こえてるってこと、忘れたの?」


「…………」


「お兄ちゃんのお父さんとお母さんのことを思い出しちゃったんだよね?」


「…………」


「お兄ちゃん……。私がお兄ちゃんのためにできることは少ないと思うけど、泣きたい時は私の腕の中に飛び込んできていいんだよ?」


 その直後、彼はルルナの腕の中に飛び込んで、膨らみかけの胸に顔を埋めながら、泣き始めた。

 ルルナはそんな兄の頭を撫でながら、こう言った。


「よーしよし。私が来ちゃったせいで昔の温もりを思い出しちゃったんだよね。でも、もう大丈夫だよ。今のお兄ちゃんには、私がいるし、これからもっと妹候補がやってくるから、お兄ちゃんはもう一人ぼっちじゃないよ」


 その言葉を聞いた直後、彼の泣き声はより一層大きなものとなって、辺りに響き渡った……。

 ____しばらく経って、ようやく落ち着いた兄の頭をポンポンと軽く叩くと、耳元でこう囁いた。(泣いた後だから、顔が真っ赤だよなあ……と思った彼はまだルルナの膨らみかけの胸に顔を埋めている)


「お兄ちゃん。今から、二人目の妹候補に会いに行こうと思うんだけど、お兄ちゃんも一緒に来る?」


「……ああ」


「それじゃあ、行こっか」


「……ああ」


「……えーっと、お兄ちゃん。ちょっといいかな?」


「……なんだ?」


「うーんと、そろそろ離れてもらえないかな? 私、動けないんだけど……」


「……悪い。もう少しだけ、こうしていたいんだ。ダメか?」


「ううん、別にいいよ。減るもんじゃないからねー」


「……ありがとう。恩に着る」


「それじゃあ、心の準備ができたら、言ってねー」


「……ああ」


 ____五分後。目尻に溜まった涙を拭いながら、彼はルルナに話しかけた。


「その……すまなかった。情けない姿を見せちまったな」


「ううん、そんなことないよー。お兄ちゃんは魔王を倒せる力を秘めてはいるけど、それ以外は普通の人間だから、泣きたい時くらいあるよー」


「ははは、なんかお前にそう言われると、泣いてた自分がバカらしくなってきたよ。ありがとな、ルルナ」


「どういたしましてー。ところでお兄ちゃん、もう準備はいいのー?」


「ああ、大丈夫だ。いつでも行けるぞ」


「うん、分かったー! それじゃあ、お兄ちゃん、かけ声をどうぞー!」


「え? あー、えっと……。んじゃあ行くか!」


「りょうかーい! それじゃあ、レッツゴー!!」


 その直後、俺たちは金色の光に包まれた。どこか懐かしい気持ちになったのは、俺の勘違いだろうか? そんなことを俺が考えていると、いつの間にか、異世界に瞬間移動していた……。

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