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マスターした!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……ユミナの屋敷……トレーニングルーム……特訓終了……。


「はぁ……はぁ……はぁ……こ、これが……魔力……制御……か」


 俺がトレーニングルームで戦ったのは白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや、美幼女『カナミ・ビーストクロー』である。


「ああ、そうだ。それが魔力制御だ。その証拠に超獣人族である私と互角に渡り合えるようになっただろう?」


「で……でも……お前……なんか……疲れて……なくないか?」


「そりゃそうだ。超獣人族ってのは、そこらにいる獣人とはパワーもスピードも生命力も耐久力も持久力も違うんだから、人間であるケンちゃんがへばるのは普通だ」


「な……なんだ……それ……俺は……そんなのと……戦って……いたのか」


「立っているのがやっとってところだが、まあ、元魔王の幹部である私と戦って生きてるやつなんてそんなにいないから、誇っていいぞ」


「そ……そうか……はははは……」


 彼はそう言うと、体にまとわせていた五属性の力を体内から放出するのをやめた。


「よしよし、魔力制御はこれでバッチリだな。じゃあ、次は気配の殺し方を教えてやろう」


「ま、まだ何かあるのか? 少し……休ませて……くれよ」


「うーん、まあ、少しだけなら、いいかな」


「あ、ありがとう、カナミ。それじゃあ……少し……休むとする……か」


 彼はそう言うと背中から倒れた。


「お、おい、大丈夫か! ……って、寝てるし」


 彼はスウスウと寝息を立てながら、眠っている。


「ふん、少しはやるようになったようだが、これくらいで疲れていては、魔王を倒すなんて夢のまた夢だな」


 カナミはそう言うと、彼の頭の撫でた。


「まあ、頑張ったご褒美だ。少しだけ一緒に寝ててやるよ」


 カナミはそう言うと彼のとなりで寝始めた。


 *


「おい、ケンちゃん。起きろ」


「う、うーん……まだ眠いよ……」


「そうか。なら、とりあえず一発殴っとくか」


「すみませんでした! 今起きます!」


 彼はそう言いながら、跳ね起きた。


「よしよし、じゃあ、次は気配の殺し方を教えるから、よく聞いとけよ?」


「気配の殺し方か。けど、それって使い魔を捕まえる時、役に立つのか?」


「役に立つも何も、気配も殺せねえやつが使い魔を捕まえるわけねえだろ?」


「そ、そうなのか?」


「そんなの当たり前だろ。自分から人間の使い魔になりたいやつなんていねえよ」


「そう……なのかな?」


「まあ、ごく稀にそういうのがいるかもしれないが、今は黙って私の聞け!」


「はい!」


 こうして、カナミによる気配の殺し方についての講義が始まった。


「気配の殺し方、その1。体の中の魔力の流れを緩やかにする。その2。深呼吸をして心を無にする。その3。自分は空気であると思い込ませる。以上が、気配の殺し方だ。何かわからないことはあるか?」


「あのー……」


「おう、なんだ?」


「その……全部、わかりません」


「え? どこがわからないって?」


「いや、その……全部、わかりません」


「そうか。なら、手本を見せてやるから、よーく見てろ」


「はい」


 カナミはそう言うと、目を閉じた。

 それから数秒後に、深呼吸をした。


「えっと、別に何も起こらな……」


「ほい、隙あり!」


「ガハッ!!」


 カナミは俺が最後まで言い終わる前に、俺の腹を軽く殴った。


「い、いきなり何すんだよ!」


「いや、ケンちゃんがわからないって言うから、見せてやったんだぞ? まあ、それはいいとして……。それでどうだ? もう気配を殺せそうか?」


「今のでわかるわけないだろう! 深呼吸した後、何が起こったのかわからなかったんだから!」


「うーん、そうか。なら、自分は透明だと思え、そしたら、多分できる」


「それ、本当なのか?」


「物は試しだ。やってみろ」


「わ、わかった……。やってみる」


 その1。体の中の魔力の流れを緩やかにする。


 その2。深呼吸をして心を無にする。


 その3。自分は透明だと思い込む。


 俺がその3つの手順を終えると、カナミが俺のことを探していた。

 あれ? これって、成功……したのかな?

 試しに、カナミの頭を撫でると、カナミは驚き、その場でジャンプした。

 や、やった! 気配の殺し方をマスターしたぞ!

 よしよし、せっかくだから、このままカナミにイタズラしてやろう……。

 こうして、気配の殺し方をマスターした俺は、カナミにしばらくイタズラすることにしたのであった……。



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