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任された!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……ユミナの屋敷……仕事終わり……。


「さてと、そろそろ帰るか」


 キッチンやテーブルの掃除を終わらせた俺は、夏休みの宿題を早めに終わらせるために、家に帰ろうとした。しかし……。


「ケンジくん、ちょっといいかな?」


 一応、この店の店長であるユミナ(黒猫形態)が俺の足元にやってくるなり、そう言ったため、それは実現不可能となった。


「できるだけ手短にお願いします」


「まあ、それは君次第かなー」


「どういう意味ですか?」


「まあ、とりあえず私についてきて」


「わかりました」


 ____ユミナの後を追っていくと、やはりユミナの寝室についた。

 ユミナは俺にドアを開けさせると、ベッドの上に座った。

 あれ? そういえばユミナって、いつもどうやってドアを開けてるんだ?

 うーん、まあ、元の姿に戻るなりして、ドアを開けているんだろう……。


「それで? 俺に話というのは……」


「まあまあ、とりあえずこっちに座りなよ」


「は、はあ……」


 俺はユミナに言われるがまま、ベッドの上に座った。

 すると、ユミナ(黒猫形態)が俺の膝の上に座った。


「あのー、なんで俺の膝の上に座るんですか?」


「君が敬語をやめないと、一生教えない」


 敬語で話すのをやめればいいのか……。よし、やめよう……。


「じゃあ、なんで俺の膝の上に座ったのか、教えてくれるか?」


「よろしい。まあ、単に君の膝の上に座るのが好きなだけなんだけどね」


「そうだろうと思ったよ。それで、俺に話ってのはなんだ?」


「あー、それはね、魔王についてだよ」


「やっとその話題か。というか、もっと早く言ってくれよ」


「いや、まあ、話す機会なら、いくらでもあったんだけど、話すタイミングが合わなくてね……」


「そうか。なら、話してくれ。俺がこれからどうすればいいかを」


「私は魔王の幹部の中で最弱だって言われてたけど、それは戦いが苦手だったのと、したくなかったからであって、本当は他の幹部と同じくらい強いんだよ?」


「えっと、何が言いたいんだ?」


「まあ、要するに、私が君を鍛えてあげるから、覚悟してね? ……ってことだよ」


「それはありがたいんだけどさ、魔王の城に忍び込むことはできないのか?」


「えーっと、もしかして、私とカナミちゃんが会議に出るために魔王の城に行ったことがあったから、それを利用できないのかって言いたいのかな?」


「ああ、その通りだ。それで、それはできそうなのか?」


「それは無理だよ」


「即答だな、おい。どうして無理なんだ?」


「私たち魔王の幹部は、魔王の幹部になった時、体のどこかに焼印を押されるんだけどね、これがないと魔王の城に出入りできないんだよ」


「それは魔王が直接、押すのか?」


「ううん、違うよ。なんかそういう係のモンスターが押すんだよ」


「そのモンスターってのは、何なんだ?」


「あれは多分、ゴーレムだね」


「多分ってのは、どういう意味だ?」


「それはね、肌の色が黄土色なのを除けば、見た目が普通の人間だからだよ」


「そ、そうか。えーっと、その……なんかごめんな」


「どうして君が謝るの?」


「いや、ちょっとデリケートな部分をいちまったから……」


「それってもしかして、焼印のことかな? でも、もしそうだとしたら、君の勘違いだよ」


「えっと、それってどういう……」


「焼印を押す時はね、みんな痛いのは嫌だから、魔法で痛みを感じないようにしてるんだよ」


「そ、そうなのか?」


「うん、そうだよ。だって、痛いの嫌だもん」


「そ、そうか。そろそろ話を戻すけど、いいか?」


「うん、いいよ。というか、私に考えがあるんだけど、聞いてくれる?」


「ああ、もちろんだ。聞かせてくれ」


「えーっとね、この店で稼いだ資金で君にぴったりな使い魔を探しに行くっていうことだよ」


「つ、使い魔を探しに行くだって? いや、俺は別に使い魔なんて……」


「たしかに今の君なら、魔王の幹部に勝つことはできるかもしれないけど、魔王には絶対勝てないよ」


「それって、本当なのか?」


「本当も何も、君は君の中にある力の半分も使いこなせてないんだから、当たり前でしょ?」


「で、でも、それと使い魔って、いったいなんの関係があるんだ?」


「使い魔はね、主人と共に成長していくものだから、いるだけで自分と一緒にいるみたいな気分になれるんだよ」


「そ、そうか。つまり、使い魔がいれば、俺はさらにレベルアップできるってことだな?」


「その通り! ということで、明日からは使い魔探しに行くよ」


「それって、お前も行くのか?」


「もちろんだよ。大事な従業員をどこぞやのモンスターに殺されるのは嫌だからね」


「そうか。なら、よろしく頼むぞ。ユミナ」


「うん、任された!」


 こうして、明日から俺の使い魔を探しに行くこととなった……。






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