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うにゅ……!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……俺の家……リビング……午後15時……。


「さてと、そろそろ作るか……」

 

「ねえ、お兄ちゃん、何作るのー?」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』は俺の背後でそう言った。


「あー、それは……できてからのお楽しみだ」


「えー、なんでー?」


「そうじゃないとサプライズじゃなくなるからだ」


「あー、なるほどー。じゃあ、私は知らないふりして待ってるから、お兄ちゃんは気にしないでねー」


「ああ、わかった」


 ルルナは、ソファに横になると嬉しそうに鼻歌を歌い始めた。


「さてと……それじゃあ、作るか」


 *


「おーい、ルルナー。できたぞー……って、寝てるし」


 幸せそうな寝顔だな……。

 改めて見ると、ルルナって可愛いよな。

 たしか、俺の学校に転校してくる前は、異世界のお嬢様学校に通ってたとか言ってたな。


「もうー、お兄ちゃんったら、そこは触っちゃダメだよー」


「え? いや、俺は別に……って、寝言かよ」


 その時、ルルナが俺の手首をつかんだ。

 俺がその手を振りほどこうとすると、ものすごい力でギュッと握られた。

 あー、これはやばいな……。

 この後、ルルナがするであろう行動を俺が想像していると、ルルナは俺の想像通りのことをした。


「お兄ちゃんはー、私専用のー、抱き枕だよー」


 ルルナはそう言うと、俺を無理やりソファに移動させた。

 その後、ルルナは自分の腕と足を俺の体に絡ませた。

 あー、やっぱりこうなったかー。

 ルルナの寝相の悪さは相変わらず異常である。

 というか、ルルナの握力は寝ている時の方がすごい。

 狙った獲物は必ず捕まえて、自分の抱き枕にするのだから……。


「おーい、ルルナー。みんなが昼寝中だからって、俺になんでもしていいわけじゃないぞー」


 俺がそう言うと、ルルナは俺の首筋を舌でペロリと舐めた。


「わーい、お兄ちゃんの味がする抱き枕だー」


 ルルナは、そう言うと今度は俺の耳を甘噛みした。


「お、おい! ルルナ! いい加減に……」


 ルルナは俺が最後まで言い終わる前に、俺の額にキスをした。


「お兄ちゃんそっくりの抱き枕は、誰にも渡さないよー」


 なるほど。俺を自分のものにするために、マーキングしたってことか……。けど、俺はそう簡単にお前のものにはならないぞ!


「なあ、ルルナ。少しの間、俺を解放してくれないか? そうしないと、せっかく作った『アレ』が台無しにな……」


「うん、いいよー」


 ルルナは俺が最後まで言い終わる前に、俺を解放してくれた。

 よし! 今のうちに逃げ……。


「あっ、やっぱりダメー」


 俺は忘れていた。ルルナには、俺の心が聞こえているということに。

 再び、ルルナの抱き枕にされた俺は、しばらくじっとしていたが、ルルナが全く動かなくなった瞬間に素早く脱出した。


 *


「おーい、ルルナー。起きろー」


「う……うーん……。なあにー? お兄ちゃん」


「いいから、起きろ。お前に見せたいものがあ……」


「え! なになに! どこにあるの!」


 ルルナは俺が最後まで言い終わる前に、跳ね起きた。


「ていっ……」


「うにゅ……!」


 俺はルルナを少し落ち着かせるために、頭にチョップをした。


「少し落ち着けよ。そんなに慌てなくても、ものは逃げたりしないぞ?」


「うん、そうだね。じゃあ、お兄ちゃん、私をそこまで連れて行ってー」


「おう、わかった」


 俺はそれがある場所……つまり、キッチンまでルルナを連れて行った。


「ねえ、お兄ちゃん。これって……」


「ああ、そうだ。お前の目と同じ色の『かき氷』だ」


「へえー、これが『かき氷』かー。ということは、みんなの分も今から作るのー?」


「まあ、そうなんだけどさ。ちょっと味見してくれないか?」


「え? もしかして、シロップも手作りなの?」


「ま、まあ、一応……」


 俺がそう言うと、ルルナはニコニコしながら、水色のシロップがかかった『かき氷』を近くに置いてあったスプーンですくって食べた。


「ど、どうだ?」


 俺がそうくと、ルルナは俺をギュッと抱きしめた。


「うん! すっごく美味しいよ! ありがとう! お兄ちゃん」


「そ、そうか、それはよかった。なら、みんなを呼んできてくれないか?」


 俺がそう言うと、ルルナは俺から離れた。

 そして、元気よく「はーい!」と言った。

 その後、ルルナはみんながいる二階へと向かった。さてと、それじゃあ、みんなの分も作るとしよう。

 今日のおやつは『かき氷』!









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