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大好きー!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 夏休み……俺の家……リビング。


「ねえ……お兄ちゃん」


「ん? なんだ?」


「どうして……エアコンつけないの? このままじゃ死んじゃうよー」


「いや……まあ……あれだ……。ちょっと修理に出してるから……しばらく戻ってこないんだよ」


「えー、そうなのー? 何か冷たいものでも食べようよー」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』はソファに横になった状態でそう言った。


「いや、こんな暑い中、買い物に出てくれているマキナとアヤノが帰ってくるまでは……無理だぞ」


「えー、でも私……もう汗びっしょりだよー」


「俺だって……もう身体中の穴という穴から汗が吹き出してるんだぞ? 少しは……我慢しろよ」


 その直後、俺は、キンキンに冷えた麦茶を飲むために冷蔵庫を目指した。

 冷蔵庫の中身がほとんどないのは……この暑さのせいだ。

 最高気温……50°だって今日のニュースで言ってたよな……。

 地球温暖化の影響……出すぎだろ……。

 俺はそんなことを考えながら、ガラス製のコップにキンキンに冷えた麦茶を入れると、一気に飲み干した。

 あー、少しはマシになった……気がする。


「お兄ちゃん……私にも……ちょうだーい」


「ん? あー、うん……わかった。ちょっと待ってろ」


「はーい……」


 ルルナは水魔法を使えるはずだから、それでどうにかこの状況を緩和できないだろうか?

 いや、それなら、俺も同じか。

 あー、でも今朝、道路に水撒きしたら、一瞬で蒸発したから、あまり効果は期待できないな……。

 俺はそんなことを考えながら、ルルナに麦茶を持っていった……。


「ほら、麦茶持ってきたぞー」


「あー、ありがとう……お兄ちゃん」


「いや、ちゃんと起きてから飲めよ」


「えー、あんまり動きたくないよー」


「じゃあ、今日のお昼のそうめん。お前の分だけ、みんなの半分にしてもいいんだな?」


「もうー、わかったよー。起きればいいんでしょー、起きればー」


 ルルナはそう言いながら起き上がると、キンキンに冷えた麦茶が入ったガラス製のコップを彼から受け取った。

 それを一気に飲み干したルルナは、「プハー!」と気持ちの良い声を出した。

 これで少しは元気になったかな?

 俺がその場から離れようとすると、ルルナは俺の手首をつかんだ。


「ん? どうした? 他に何か飲みたいものでもあるのか?」


 俺がそう言うと、ルルナは舌で自分の上唇うわくちびるを舐めてから、こう言った。


「お兄ちゃんエキス……とってもおいしかったよ。ありがとね♪」


「お、おう。どういたしまして」


 どうしてルルナは、こんなに嬉しそうなのだろうか?

 俺、麦茶になんか入れたっけ?

 その直後、俺は思い……出した。

 俺が先ほど使ったコップにルルナの分の麦茶を入れて、彼女に手渡してしまったことを……。

 え、えーっと、つまり……これって、かかか、間接キス……ってやつか?


「お兄ちゃん……暑さで頭がおかしくなってるんじゃないのー?」


 ルルナは、ニコニコ笑いながら、そう言った。


「う、うるさいな! お、俺だって間違うことはあるんだよ!」


 すると、ルルナは俺をギュッと抱きしめた。

 その後、彼女は耳元でこう囁いた。


「じゃあ、私が間違って、お兄ちゃんにいたずらしても……いいってことだよね?」


「そ、それとこれとは話は別だろ! というか、暑苦しいから離れ……って、お前の体……なんでこんなにヒンヤリしてるんだ?」


「あー、それはねー。さっきの麦茶を飲んだからだよー」


「いやいや、麦茶を飲んだからって、こうはならないだろ。普通」


「うーん、多分、魔法の一種……だと思うよー」


「そ、そうなのか……って、いいから一度、離れてくれよ! こんなところ誰かに見られたら……」


「別にいいよ、見られても。私は全然……気にしないから」


「いや、そういう問題じゃなくてだな……」


「まあまあ、そう言わずにさー。もう少しこのままでいようよー」


「お、俺にメリットがないだろ!」


「ううん、あるよー。私はお兄ちゃんを抱きしめていられるから、嬉しいしー。お兄ちゃんは私にくっついてもらっていた方が涼しいよね?」


「うっ……ま、まあ、そうだけど、やっぱりこんなの……」


「お兄ちゃん……少しだけでいいから……ね?」


「はぁ……わかったよ。少しだけだぞ」


「わーい、ありがとう、お兄ちゃん。大好きー!」


 その後、俺とルルナはしばらくの間、抱きしめ合っていた……。



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