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このままの体勢でいろ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 海で遊ぼう! (カナミ編)


「おい、いい加減、起きろ」


「……う……うーん……誰だ……?」


 俺が白いパラソルの下で寝ていると、誰かに起こされた。

 俺がゆっくり目を開くと……天使が俺の顔を覗き込んでいた……。


「みんな……俺はもう疲れたよ……だから……先に天国に行くぞ……」


 俺が目を閉じかけた時、その天使に頭をペシンと叩かれた。


「おい、勝手に死ぬな。というか、そんなの私が許すとでも思ってたのか?」


「あ、あれ? 俺、今、天使に叩かれたのか?」


「はぁ? 誰が天使だ。私は元魔王の幹部の一人である超獣人族の『カナミ・ビーストクロー』だぞ?」


「あ……ああ……なんだ……カナミか」


「なんだとは、なんだ。それより、早く起きろ。みんな、もう帰っちまったぞ」


「え? そうなのか……?」


「あー! どうでもいいから、とっとと起きろ!」


「は、はい!」


 俺が勢いよく体を起こすと、白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや美幼女『カナミ・ビーストクロー』が俺に手を差し伸べた。


「ほら、早く立て」


「あ、ああ、ありがとう」


 俺はその白く柔らかい手を握ると、スッと立ち上がった。


「あー、よく寝たー。というか、他のみんなはもう屋敷に戻っちまったのかな?」


 俺が体を伸ばしながら、そう言うとカナミはこう言った。


「いや、全員、ケンちゃんの家に帰ったぞ」


「そっか。なら、俺もそろそろ帰ろ……」


「ま、待ってくれ! ケンちゃん!」


 カナミは俺の手首をつかみながら、そう言った。


「な、なんだよ、カナミ……。なんか用か?」


「あー、いや……その……なんだ……」


 なんでカナミはこんなに顔が真っ赤なんだ?

 というか、俺から目をらす必要あるか?


「カナミ、ゆっくりでいいから、ちゃんと俺の目を見て言ってくれ」


「あ、ああ、わかった。コホン、ケ、ケンちゃん」


「おう、なんだ?」


「そ、その……わ、私と……砂浜を歩かないか?」


「え? あー、うん、別にいいけど。なんでだ?」


「え? あー、いや……しばらく海なんて来れないと思うから……思い出というか記念にだな……」


「なるほど、そういうことか。じゃあ、暗くなる前に終わらせよう」


「ま、待て! その……て、手を繋いでくれないか?」


「いや、でも俺、手汗が……」


「いいから、言う通りにしろ!!」


「は、はい!!」


 こうして、俺とカナミは手を繋いだ状態で砂浜を歩くこととなった……。


 *


 俺とカナミが手を繋いだ状態で砂浜を歩いていると、カナミが俺に話しかけてきた。


「な、なあ、ケンちゃん」


「おう、なんだ?」


「その……わ、私のこと……怖く……ないのか?」


「いや、俺が天使と見間違えるほど可愛いお前を怖がるやつなんていないだろ」


「い、いいから答えろ!」


「うーん、そうだな……。最初は怖かったよ。俺の五属性パンチが効かなかったからな。けど、今は全然、怖くないよ。じゃないと、手なんて握れないし、握らないだろ?」


「そ、そうか。で、でも、私は元魔王の幹部だぞ? ある日、突然、裏切るかもしれないんだぞ?」


「……仲間を信じ、仲間を助けよ


「え? 突然なんだ?」


「俺が好きな言葉の一つだ。お前がもし、裏切ったとしても、俺がお前を仲間だと思っているうちは、絶対にお前を逃がさないし、魔王なんかに奪わせはしない」


 それを聞いたカナミの顔は先ほどよりも赤くなった。


「そ、そうか……。で、でも、もし私がお前を殺すと言ったら、どうするんだ?」


「お前がその気なら、それを言う前に俺を殺すだろうから、そのセリフがお前の口から出た時は……」


「で、出た時は?」


「お前にそんな命令を下したやつをぶっ飛ばしに行ってやるよ」


 その時、カナミの白い猫耳がピンと立った。


「そ、そうか……」


「おう、だから、その時は我慢せずに助けを求めるんだぞ?」


「う……うん、わかった。ありがとう」


「……さてと、それじゃあ、そろそろ帰るか。もうじき、月が顔を出す時間だからな」


 その時、カナミは急に立ち止まった。


「おっとっと。急に立ち止まるなよ。危うく……」


 彼が全部言い終わる前に、カナミは彼を押し倒すと、そのまま馬乗りになった。

 その後、白いワンピース型の水着をまとっているカナミは彼の心臓の音を聞くために彼の左胸に耳を当てた。


「お、おい……カナミ。いったいどうし……」


「うるさい……」


「いや、でも……」


「いいから、黙ってろ! あと、私がいいって言うまで、このままの体勢でいろ!」


「…………」


 かすかに体を震わせているその子を彼は優しく抱きしめると、彼女の気が済むまでその体勢でいたという……。

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