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その先に俺はいるぞ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 海で遊ぼう! (ミーナ編)


「あー……疲れた……少し休もう……」


 俺が砂浜に腰を下ろすと、後ろから誰かに抱きしめられた。


「それなら……私が癒してあげようか?」


 こ、この声は、もしかして……ミーナか?

 でも、こんなこと今までしてこなかったよな?

 潮風にやられたのかな?

 それとも、太陽にやられたのかな?

 俺が勝手に想像していると、ミーナは耳元でこう囁いた。


「ねえ……ケンジ。私に……身を委ねてみない?」


 な、なんか息がかかって、こそばゆい……な。

 というか、なんだか頭がポーッとしてき……た……ぞ……。


「ほら、ケンジ。おいでー」


「あ……ああ……」


 彼はそう言うと意識を失ってしまった。


 *


 白いパラソルの下……。


「ねえ、ケンジ……大丈夫?」


「……う……うーん……あ、あれ? 俺、なんでミーナに膝枕されてるんだ?」


「それは……その……ケンジが急に倒れたから……仕方なく……」


「そ、そうか……」


「うん……」


 黒髪ツインテールと黒い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミーナ・ノワール』は黒いワンピース型の水着をまとっている……。

 あー、なんだかふわふわするな……。

 どうしてこんなに気持ちいいんだろう……。


「ゆっくりするのも、大事だよ。ケンジ」


「……ああ、そうだな……。ゆっくりするのも、いいかもな……」


「……よ、よしよし……」


 ミーナは小さくてぷにぷにしている手で俺の頭を撫でてきた。


「ああ……癒される〜……」


「そうか……こうすると、ケンジは喜ぶのか。よし、もっと撫でてみよう」」


 ミーナはそれからずっと俺の頭を撫でていた。


「ねえ、ケンジ、気持ちいい? ……って、寝ちゃった……」


「……お母さ〜ん」


「わ、私はケンジのお母さんじゃないよ! ……って、なんだ、寝言か……。いったいどんな夢を見ているのかな?」


 その後、ミーナは暇だったため、彼の体を観察し始めた。


「ケンジの髪って、一本だと針みたいになるけど、頭に生えているのは、全部ふわふわしてるよね。どうしてだろう?」


「……俺は……パラサイトじゃないぞ〜……」


「パ、パラサイト? なんのことだろう。多分、髪の毛を抜くことと関係あることだよね……。ということは、もしかしてケンジの部屋にあった『寄○獣』っていう漫画に出てくるあのパラサイトのことかな?」


「ピンポーン……だいせいかーい……」


「ほ、本当に寝てるのかな? 不安になってきた」


「これはな……ワンニャン……ニャンワン……って、覚えるんだぞ〜」


「ワンニャン、ニャンワン? 何かの暗号かな? けど、覚えるってことは、多分、何かの語呂……みたいなものだよね……。うーん、もしかしてケンジの部屋にあった『こ○っくがーるず』に出てきた社会のテスト勉強中に話してたやつかな?」


「ピンポーン……だいせいかーい……」


「これって、私と遊んでくれてる……のかな? けど、これが寝言だったら、それはそれで怖いな……」


「悪魔は……天使を……狩る者……72分の26……」


「え、えーっと、これはどういう意味なのかな?」


「……アイアン&ブラッド……」


「鉄と……血? なんだか物騒だな……」


「鈍器……」


「ドンキー? あのゴリラのことかな? いや、武器の方かな?」


「MS……MA……」


「え、えーっと、今度は何かの略称かな? うーん、まだわからないな」


「宇宙……ネズミ……」


「えっと、宇宙空間でも生きられるネズミがいるのかな?」


「狼の……王……」


「狼の王か。ウルフキング……かな? でも、多分、英語で訳すんじゃないよね」


「ダイン……スレイブ……」


「えーっと、確か、一度、さやから抜くと、満足するまで血を吸わせなければならなくなるっていう剣の名前……だよね?」


「逆から……3話目……」


「逆から3話目に、いったい何があったのかな?」


「……孤児たち……」


「孤児たち? 英語にすると……オーフェン……いや、オルフェンかな? おっと、複数形にしなくちゃね。えーっと、オルフェンス? いや、オルフェンズだね。ん? 鉄と血……オルフェンズ……。あっ! わかった! ケンジの部屋の本棚に展示されてた『機○戦士ガ○ダム 鉄○のオ○フェンズ』だね!」


「ピンポーン……だいせいかーい……」


「最近、途中まで読んだのに忘れてた……。けど、逆から3話目に、何があったの?」


「……なんか静かですね……」


「え? あー、うん。そうだね。ここには私たちしかいないから……」


「タカキも頑張ってたし……俺も頑張らないと……」


「あー、うん。頑張ってね」


「詠唱……開始……」


「詠唱? あの世界に魔法なんてあったっけ?」


「……フリージア……」


「それは花の名前だね……って、早く何があったのか教えてよ」


「……みんなが……待ってんだ……」


「えっと、これって、もしかして……」


「お前らが止まんねぇ限り……その先に俺はいるぞ!」


「も、もうやめて! お願いだから、その先は言わないでえええええええええええええ!!」


 *


「…………Zzz」


「……って、あれ? 私……ケンジに膝枕をした状態で寝てた……みたいだね」


 結局、ミーナは彼が起きていたのかどうか確かめられなかった。どこからが夢でどこからが現実だったのか全くわからなかったからだ……。

 彼女はしばらくの間、彼に膝枕した状態で混乱していたそうだ……。







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