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逃げるなー!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 海で遊ぼう! (アヤノ編)


「ふぅー、疲れたー。なんか今日はみんなやけに絡んでくるな……。どうしてだろう?」


 俺が砂浜を歩いていると誰かに肩をツンツンとつつかれた。


「ん? 誰だ?」


 俺が振り向くと、ピンク髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女『アヤノ・サイクロン』が俺をにらんでいた。


「な、なんだよ。俺に何か用か?」


「なあ、バカ兄貴。あたしのこの姿を見て、なんとも思わないのか?」


「え? あー、そういうことか。お前のそのピンク色のビキニを見て、俺が何にも言わないから不安になったんだな?」


「そ、そんなんじゃねえよ! というか、いちいち色を言うな!」


「え? 可愛いと思うぞ? ピンク」


「そ、そうか? えへへへ……」


「……それで? 俺に何の用だ?」


「あー、そうだったな。忘れてた。なあ、バカ兄貴。あたしと勝負しないか?」


「勝負?」


「ああ、そうだ。ちなみにあたしが勝ったら、バカ兄貴は一生、あたしにパシリな?」


「そっか……。じゃあ、辞退する」


「ま、待てよ! 話は最後まで聞けって!」


「はいはい、わかったよ。それで? 勝負の内容は?」


 俺がそうくと、アヤノはこう言った。


「それはズバリ! 『潮干狩り』だ!!」


「……は? 『潮干狩り』?」


「ああ! そうだ! どっちが多く獲れるか勝負だ!」


「えー、なんか地味だから、俺、パスー」


「……おい、逃げるのか? バカ兄貴。それとも、あたしに負けるのが怖いのか?」


 安い挑発だな……おい。まあ、最近、アヤノに構ってやれなかったから、今回くらいは付き合ってやるか。


「面白い。その勝負、受けて立つ!」


「バカ兄貴なら、そう言うと信じてたぜ! ちなみに制限時間は30分だ! それじゃあ……スタート!」


 アヤノはそう言うと、足元にあった道具を持って走り始めた。(バケツと熊手)


「え? それって、今からやるのか!?」


「そんなの当たり前だろ! バーカ! バーカ!」


「くっ……! あ、あいつ……! おい! 義理の兄に対して、その態度はないだろう! って、聞いてるのか? アヤノ! おーい!!」


 こうして、俺とアヤノの『潮干狩り』が始まった。


 *


 それから、30分後……。


「ふん、どうやら俺の勝ちのようだな。アヤノ」


「な、なんだと! このあたしがバカ兄貴に負けるなんて……これは何かの間違いだ!」


「いいや、違うな。たしかにお前はすごかった。まるで、貝がどこにいるのかわかっているかのようだったからな……だがしかし! お前は『潮干狩り』の面白さを何一つ理解していなかった! それがお前の敗因だ!」


「そ、そうか……。あたしは勝負に集中しすぎて、そんなことも忘れてしまっていたのか……」


 アヤノは膝から倒れ、四つん這いになると、自分の愚かさを恥じた……。


「まあ、気性の荒いお前の意外な一面が見られたから、別にいいけどな……」


 彼はアヤノに手を差し伸べた。


「……バカ兄貴」


 アヤノはその手を握ると、スッと立ち上がった。


「なあ、バカ兄貴。そ、その……あたしとまた『潮干狩り』してくれるか?」


 アヤノは両手の人差し指同士を引っ付けたり、離したりしながら、そう言った。


「ああ、いいぞ。また来ような!」


 その時、アヤノは満面の笑みを浮かべながら、こう言った。


「ああ! 次は負けないからな!」


 アヤノが彼に手を差し出すと、彼はその手をしっかりと握りながら、こう言った。


「ふん、いつでも返り討ちにしてやるよ!」


 その時、二人はニシリと笑った。


「ところで、俺が勝った場合はどうなるんだ?」


「は? バカ兄貴があたしに指図できるとでも思ってたのか?」


「いや、でも、俺、勝ったよな?」


「ふん、どうせ、あたしに変なことをさせる気なんだろ?」


「べ、別に何もしねえよ!」


「さあて、それはどうだろうな。というか、あたしらの水着をジロジロ見てたやつが言えるセリフか?」


「そ、それは誤解だ! 俺は別に……」


「じゃあ、あたしの水着を見ても興奮しないのか?」


「え? いや、興奮するとかしないとかの問題じゃなくてだな……」


「なら、しばらくあたしを抱きしめてみろよ。それなら、確かめられるだろう? けど、その間、バカ兄貴は平常心を保てるかどうか怪しいけどな?」


 俺に顔を近づけてきたアヤノに反応したわけではないが、俺は少し気まずくなったため、その場から逃げ出した。


「あっ! こら! 逃げるなー!」


 鳥取の 砂丘を駆ける 義兄妹……。(川柳?)

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