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そんなもん知るか!

 高校に着いた俺とルルナは普通に授業を受けていた。しかし、この時の俺は妙な気分になっていた。

 だって、異世界からやってきた子が俺の妹になって、一緒に学校に行って、しかも同じクラスで授業を受けてるんだぞ?

 なあ? 誰だって、戸惑うだろう? ……って、別に平気だと? メンタル強いんだな……。俺なんか桜の花びらが目の前を通り過ぎるだけで、虫かと思って数歩下がるのに……。

 そんなことを考えていると、後ろの席にいるルルナがシャーペンで背中をつついてきた。

 おいおい、今は授業中だぞ。真面目に受けろよ、まったく……。

 しかし、それが何度も続いたため、俺は仕方なく振り向いた。すると、ルルナが満面の笑みで紙切れを手渡してきた。

 俺はしぶしぶそれを受け取ると、前を向いてから、それを開いて中身を見た。するとそこには……。


『お兄ちゃん。今私のこと考えてたでしょー?』


 そう書かれていた。なんだ? こいつ。別にお前のことなんか考えてねえよ。俺が作った弁当をおいしそうに食べてくれるかな……とか、放課後、どこで寄り道しようかな……なんて考えてない……ぞ?

 え、えーっと、まあ、あれだな。妹が話しかけてきたんだから、無視するわけにはいかないよな、うん。

 俺はその紙切れの裏に返事を書いて、前を向いたまま、それをルルナの机の上に置いた。

 さあて、お兄ちゃんはなんて書いたのかなー? ルルナはそう思いながら、紙切れに書かれた内容を読んだ。


『今日の放課後。本屋にでも行くか?』


 そっかあ。お兄ちゃんは私と本屋デートがしたいんだなー。ふーん、そうなんだー。照れ屋さんだな、お兄ちゃんは。

 さて、返事を書きますか。ルルナは新しい紙切れに返事を書いて飛行機を折ると、ヒュッとそれを飛ばした。

 ん? 小さい紙飛行機だな。ルルナが折ったのか? 器用なんだな、ルルナは。

 さて、何が書いてあるのかな? 俺は紙飛行機型の手紙を読んだ。


『本屋に行きたいの? いいよー! 一緒に行こー!』


 なんかもう、あれだな。兄妹っていうより、恋人同士でやるようなやり取りだな、これ。まあ、いいか。

 さて、返事を書こうかな。俺は返事を書くと、前を向いたまま、ルルナの机の上に置いた。

 お兄ちゃん、書くの早いなー。何、書いたのかなー? わくわく♪

 そう思いながら、ルルナは手紙を読み始めた。しかし、それを読み終わった時、彼女の顔は真っ赤になった。


『それでさ、そのあとなんだけど、一緒に月を観に行かないか?』


 二人で天体観測に行きたいと書かれてあるだけなのだが、ルルナはこう解釈した。


『なあ、ルルナ。本屋に寄った後に一緒に月を観に行かないか? 今日は月がすごくきれいに観える日なんだよ。そう……月がきれい……なんだよ』


 ま、ま、まさか、出会って間もない私のことを……お兄ちゃんは……。あー! なんなの! い、いきなりすぎるよ! お兄ちゃん! というか、このタイミングでそれ伝えるの!?

 まだ朝だよ!? 一時限目だよ!? しかも最近兄と妹の関係になったばっかりだよ!? お兄ちゃんがこんなに……大胆だったなんて……私、予想できなかったよ……。

 え、えっと、と、とりあえず返事を書かなきゃだよね! 

 ルルナは急いで手紙を書くと、その手紙を高速でカエルにした。

 ルルナ遅いなー。返事まだかなー? その時、頭に何かが乗ってきたため、二ミリほど飛び上がってしまった。しかし、その衝撃で机の上に紙で作ったカエルが落ちてきたため、ルルナの仕業だということが分かった。

 やっと来たか。さあて、なんて書いたのかな? 彼はその手紙を読み終えると、頭を抱えた。


『う、うん、いいよ。お兄ちゃん。私、準備はできてるから、その……いつでも……いいよ?』


 なんでこうなった……? 俺、変なこと書いたか? いや、別に変なことは書いていない。だって、一緒に天体観測しに行かないか? って、書いただけなんだから。 なんで、あたかも俺がルルナに告白した感じになってんだ? 意味わかんねえよ!

 うーん、とりあえず、返事を書くか……。彼は返事を書くと、前を向いたままルルナの机の上に手紙を置いた。

 き、来た……。お兄ちゃん、なんて書いたかな……。も、もしかして、その気に……! 彼女はまたしても、赤面した。

 う、うーん、でも、とりあえず読まないといけないよね、うん。

 ルルナは手紙を読み終えると……失神した。


『なんかすごい勘違いしてるみたいだな……。具合が悪かったら、いつでも俺が一緒に保健室に連れてってやるからな』


 ルルナの解釈だと……。


『お前、なんか勘違いしてないか? さっきのは嘘だ。本当はお前の具合が悪くなったとみんなに伝えた後に保健室に連れていって、ヤルつもりだったんのさ! がおー!!』


 ルルナから返事が返ってこないため、何かあったのかと後ろを向いた健二けんじはルルナが机に突っ伏しているのを目撃した。

 すかさず先生に報告して、保健室に連れて行くと(なぜか誰もいない)ベッドに寝かせた。

 ____しばらく経って、目を覚ましたルルナに事情を聞くと、俺の書いた手紙の内容をおかしな方向に解釈したせいで、こんなことになったのだということを知った。


「まったく。なんでお前は……」


「ごめんね、お兄ちゃん」


「ルルナ……」


「私、おかしいよね。変な妄想しちゃって。いけない子だよね、私」


 俺は泣きかけているルルナの頭を撫でながら。


「そんなもん知るか! たとえ、世界がお前をおかしなやつだと言っても、俺だけはお前のそういうところも含めて……その……いい妹だって、言ってやるよ! だからさ、その……もう泣くなよ。……どうすればいいか、分かんなくなっちまうからよ」


 ルルナは彼が少し照れながら、そう言ってくれたのを察しながら。


「もう……会って間もない異世界人である私に対して、そんなこと言えるなんて、お兄ちゃんはシスコンなのー?」


「ば、バカやろう! そんなんじゃねえやい!」


「喋り方がおかしくなってるよ? 変なお兄ちゃん」


「こ、これは……その……ど、どうでもいいだろう! そんなこと!」


「うん、そうだね。どうでもいいよね」


「……ま、まあ、お前に何もなくて、よかったよ。お前は……その……笑ってる時が一番、か、可愛いんだからよ」


「……! う、うん、そうだね。クヨクヨしてちゃダメだよね! 慰めてくれて、ありがとね、お兄ちゃん」


「ど、どういたしまして……。さて、それじゃあ、そろそろ教室に戻るか」


(保健室を出て教室に戻り始めました)


「うん、そうだね。あっ、デートの件は一応、オッケイだからね?」


「デート? あー、本屋に行くやつか。まあ、必要な本を買いに行くから、ついで……だけどな」


「ふーん、そうなんだー」


「な、なんだよ」


「べっつにー、何でもないよー?」


「……そうか。なら、行くぞ。ルルナ」


「了解であります! 大佐!!」


「誰が大佐だ!」


「わー、お兄ちゃんが怒ったー。逃げろー」


「ちょっ、待てよ! ルルナ! 今、一応、授業中なんだぞー!」


「知らなーい。あはははは、あはははは」


 県立空前絶後高校は今日も平和である……。

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