嫌じゃないです!
魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。
この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。
俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。
俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。
俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。
俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。
え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。
だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。
さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。
海で遊ぼう! (マキナ編)
「お兄様ー、何をしているのですか?」
赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』は俺にそう言った。
「えーっとなー、ルルナが膝枕してくれっていうからしてやったんだが、そのまま眠っちまったんだよ」
白いパラソルの下で俺に膝枕をしてもらっている銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』はスウスウと寝息を立てながら、眠っていた。
「そうなんですか。しかし、それではお兄様がここから一歩も動けないのでは?」
「あー、まあ、そうだな。けど、ルルナが幸せそうな顔をしているから、俺は全然辛くないぞ?」
「うーん、では、こうしましょう」
「こうするって、どうするんだ?」
「持ってきた物の中にタオルがいくつかありましたから、それを枕代わりにするんです」
「あっ、そうか。その手があったな。ありがとう、マキナ」
「そ、そんな! 私は別にたいしたことはしていませんよ!」
「まあまあ、そう謙虚になるなって。それとも俺に褒められるのは、嫌か?」
「い、嫌じゃないです! むしろ、もっと褒めてほしいです!」
「そうか、そうか。なら、ちょっと待っててくれ。ルルナを起こさないようにすり替えるから」
俺は屋敷から持ってきた物の中にあった、いくつかのタオルを重ねると、ルルナの頭の下に敷いた。
「これでよし……。なあ、マキナ。お礼に何かさせてくれないか?」
「え? あー、そうですね……じゃあ、私と遊んでもらえませんか?」
「ああ、いいぞ。何して遊ぶ?」
「そうですね……それじゃあ……」
こうして、俺はマキナと海で遊ぶこととなった。(ちなみに俺たちは今、『バードデューン』……つまり、俺たちの世界でいうところの『鳥取砂丘』に来ている)
「お兄様ー! そのまま真っ直ぐですよー!」
「わかったー。真っ直ぐだな」
俺たちは今、スイカ割りをしている。
「あー、もう少し右ですー!」
「わかったー、もう少し右だなー」
目隠しをした状態なので、俺が今どこを歩いているのかはわからなかったが、だんだんマキナの方に向かっているような気がした。
「はい! ここでストップです!」
「ストップってことは、木の棒を振り下ろしてもいいってことか?」
「いいえ、違います! そのままじっとしててください!」
「あ、ああ、わかった」
数秒後……。俺は誰かに抱きしめられた。うーんと、この感触はもしかして……胸……かな?
このサイズ……この感触……そして、この形からして……。
「おい、どさくさに紛れて何してるんだ? マキナ」
俺は木の棒を持っていた手の片方……つまり、右手で目隠しを外すとそう言った。
「あ、あちゃー。バレてしまいましたかー」
マキナはそう言うと、俺から離れた。
「いや、最初からこうするつもりだったんだろ?」
「お、お兄様がルルナさんばかり構うからです!」
「いや、別に俺はそんなつもりは……」
「じゃあ、お兄様は私たちの中で誰が好きなんですか?」
「誰が好きかなんて決められるわけないだろう。それに、みんなのことはそれなりに好きだぞ?」
「それなりに……ですか。では、質問を変えましょう。お兄様は美乳と貧乳、どちらが好きですか?」
「え? そこは巨乳と貧乳じゃないのか?」
「い、いいから答えてください!」
いや、そう言われても別に俺はどっちも好きだからな……。
というか、なんでこんな質問をされなくちゃいけないんだ?
「お兄様! 早く答えてください!」
「あ、ああ、もう少し待ってくれ」
うーん、マキナはどちらかというと美乳だよな。見た感じCカップくらいだし……。今着ている、赤色のビキニも可愛いし……。
うーん、どうしよう……。決められない……。
あっ、そうだ。こういう時は全部ひっくるめばいいんだ。
「なあ、マキナ。俺は女の子のどの部分も好きなんだけど、お前はそんな俺をどう思う?」
「そ、そうですか……。じゃあ、お兄様は女の子の〇〇や〇〇も好きなんですか?」
「ああ、もちろんだ。だからさ、俺は美乳とか貧乳とか関係なく、女の子の胸そのもの……いや、存在そのものが好きなんだよ」
マキナは頬を赤く染めながら、俺にこう言った。
「そ、そうですか……。お兄様はそんなに女の子のことが好きなんですねー。つまり、私のこともそういう風に見てくれているってことですよねー」
「……こ、この話はもう終わりだ! とりあえず、遊ぶぞ!」
「はい! お兄様!」
俺はその場をなんとか切り抜けることができたが、少しだけ罪悪感に苛まれた……。