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でもじゃない!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 ヤドカリ型移動要塞【ヤミナ】が『ジパシー』(この世界でいうところの『日本海』)に到着すると、それは元のユミナ(黒猫形態)の屋敷に戻った。


「な、なあ、ユミナ。勢いでこんなところに来てよかったのか?」


 俺がユミナの寝室のベッドの上に寝転んでいるユミナ(黒猫形態)にそういた。


「来てよかったのかって、私は君たちが過労で今にも死にそうだったから、半ば無理やり、ここに連れてきたんだよ?」


「で、でもさ……」


「んー? なあにー? 一応、ここの店長である私の判断が間違ってると思ってるのー?」


「い、いや、そういうわけじゃないんだけどさ。その……急に店が移動なんかしたら……」


「お客さんに迷惑をかけることになるんじゃないってこと?」


「あ、ああ、その通りだ」


「いや、別にいいよ。私は別に店を続けられれば、いいんだから……」


「いや……でも……」


「でもじゃない! とにかく君たちはさっさと家に帰って、お風呂に入って、寝なさい!」


「わ、わかったよ……。じゃあ、またな、ユミナ」


「うん、また明日ねー」


 その日はさっさと家に帰ると、ユミナに言われた通りのことをした……。


 *


 次の日……。俺たちはユミナの屋敷に行き、店の準備をしていた。

 俺は、ルルナたちが掃除やセッティングをしている間、屋敷の一階でユミナを探していた。


「おーい、ユミナー。いるかー?」


「はーい! ちゃんといますよー!」


 ユミナ(黒猫形態)はそう言いながら、屋敷の二階まで続く螺旋階段の手すりを踏み台にして、ジャンプすると、俺の頭の上に乗った。


「おいおい、危うく首が折れるところだったぞ?」


「いやー、ごめん、ごめん。昨日、やってたアクション映画のワンシーンをやってみたくなってねー」


「あー、なるほど。そういうことか。……それで? 俺たちは今日、何をすればいいんだ?」


「うーん、そうだねー。今日はゆっくり休んでいいよー」


「休んでいいって、俺たちは昨日の夜、お前に言われたとおりのことをしたから、もう大丈夫だぞ?」


「いやいやいや、君はわかってないね。過労の恐ろしさを!」


「か、過労の恐ろしさ?」


「うん、そうだよ。人の心と体というものは、実に敏感でストレスを感じすぎると、内側から徐々に崩壊していくんだよ」


「ほ、崩壊って、大袈裟だな……」


「大袈裟じゃないよ? げんに君のいた世界の人間たち……特に日本人は、毎日毎日働きすぎなんだよ! 休むという言葉を知らないの!?」


「い、いや、俺はまだ高校生だから、別にそうは思わな……」


「ほら! それだよ! 毎日毎日、同じところに行って、ノルマを達成したら帰って寝るっていうサイクルが君の頭の中をおかしくさせている!」


「いや、俺は別に……」


「あー! もうー! これだから、日本人は他国から働きすぎだって言われるんだよ! いいかい? 人はロボットじゃないんだから、死んだらそこで終わりなの! ロボットみたいに部品の交換ができたら、人にロボットなんか必要ないんだよ! でも、それができないから、君たちは『休息』をとるんでしょ!」


「あ、ああ、まあ、そうだが……」


「だったら、今日、一日くらいは休んでよ! 君に死なれちゃ私は……私たちは困るんだからね!」


「……そうか……そうだよな。たまには、ゆっくり休まないとダメだよな……。ありがとう、ユミナ。俺、今日は休むよ」


「うんうん、わかってくれて、私は嬉しいよー。それじゃあ、今日は『バードデューン』に行っておいで」


「え? バード……なんだって?」


「あー、えーっとねー、君たちの世界でいうところの『鳥取砂丘』だよ」


「あー、なるほど。それじゃあ、ルルナたちを誘いに……」


 俺が言い終わる前に、ルルナたちは海に行く準備を始めていた。

 浮き輪、パラソル、ビーチボール、折りたたみ式のデッキチェアなどをかき集めてきている様子から、ルルナたちは海に行く気満々だということがわかった。

 よし、それじゃあ、俺も準備するか……。

 こうして、俺たちは、お店を休みにして、海に行くこととなった……。








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