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全速前進!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 昨日、ルルナの母親である『テレサ・リキッド』がうちの店にやってきて、うちのオススメ料理を食べた後、色々あって、この店を宣伝してもらえることとなった。

 で、宣伝の結果……。


「お兄ちゃん! お兄ちゃん! まだ開店まで30分もあるのに、お客さんが外にたくさんいるよ!」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』はいつもこんな感じではないのだが、その時はとても慌てていた。


「たくさんって、どれくらいだ?」


「え? あー、えーっとねー、とにかくたくさんいるよー!」


「そうか、そうか。それじゃあ、何かに例えるとしたら、どれくらいだ?」


「うーん、そうだねー。開園前のデ○ズニーランドくらいの人がいるよー!」


「いやいやいや、いくらなんでもさすがに……」


 俺が屋敷の扉を少し開けて、外の様子を見るとそこにはたしかにたくさんの人が並んでいた。


「なるほど、なるほど。ルルナのお母さんが宣伝しただけで、こうなるのか。すごいな、あの人……。なあ、ルルナ」


「ん? なあに?」


「今日はとにかくお客さんがたくさん来るけど、倒れない程度にビシバシ働けとみんなに伝えてくれ」


「うん、わかったー。みんなに伝えてくるー!」


「おう、頼んだぞー……さてと、それじゃあ……やりますか!」


 開店後、俺たちは今までにないくらいほとんど休まずに働いた。

 そして……その日にやるべき仕事が終わると……みんな、燃え尽きた。


「みんなー、お疲れ様ー。今日はゆっくり休んでねー」


 ここの店長であるユミナ(黒猫形態)は床に倒れている俺たちの頭を撫でて回りながら、そう言った。


『はーい……わかりましたー』


 みんなの気力はゼロだったが、ユミナの肉球で頭を撫でられたため、少しだけ癒された。


 *


 次の日も……そのまた次の日も……それが続いたせいで、俺たちの疲労はマックスになった。


「なあ、ユミナ。いつまで……こんな日々が……続くんだ?」


 床に倒れた状態でユミナ(黒猫形態)にそう言うと、ユミナはこう言った。


「じゃあ、また移動する?」


「あー、なるほど。この屋敷は別名『ヤドカリ型移動要塞【ヤミナ】』だから、ここからどこかに移動できるんだよな……」


「うん、そうだよ。それで、どうする? 移動する?」


「……あー、いや、あともう少ししたら、ブームが終わると思うから、大丈夫だー」


「本当に大丈夫なの? すごく疲れてるように見えるけど……」


「あー、大丈夫、大丈夫。寝れば大丈夫……だから」


「うーん、他のみんなも疲れてるように見えるけど、大丈夫?」


『だ……大丈夫……でーす』


 うーん、これは……ダメだね。何か対策を考えないとこのままじゃ、過労で死んじゃうよ。

 さてと、どうしようかな……。

 ユミナは寝室に戻ると、この状況を改善するための対策案を考え始めた。


 *


 次の日。ユミナ(黒猫形態)は開店前、寝室にみんなを集めた。


「コホン、今日は重大な発表があります!」


「重大な発表? それは俺たちに関係あることなのか?」


「うん、あるよー。だから、ここにみんなを集めたんだよー」


「そうか。なら、できるだけ早く言ってくれ」


「うん、最初からそのつもりだから、大丈夫だよー。それでは、発表します!」


 ユミナ(黒猫形態)は少し間を取ると、こう言った。


「店長特権発動! 緊急脱出!!」


 ユミナがそう言うと、屋敷が動き始めた。


「お、おい! ユミナ! いったい何をしたんだ!」


「何って、ここから逃げるんだよ」


「ここから……逃げる?」


「うん、そうだよ。まだ開店まで1時間くらいあるから、そのすきにここからおさらばするんだよ」


「え、えっと、ちなみに次はどこに行くんだ?」


「そうだねー。じゃあ、『ジパシー』付近まで行こうか」


「そ、それって、もしかして……」


「うん、君の世界でいうところの『日本海』だよ」


「へ、へえ、そうなのか……」


「よおし! それじゃあ、『ジパシー』に向けて、全速前進!」


 ユミナがそう言うと、ヤドカリ型移動要塞【ヤミナ】はスピードを上げた……。






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