言えや!
魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。
この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。
俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。
俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。
俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。
俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。
え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。
だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。
さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。
俺はいつものように【メイドカフェ レインボー】のキッチンで店の料理を作っていた。
しかし、ついにあの男がやってきてしまった。(詳しくは『お引き取りください!』 を読めばわかる)
「探したぞ、【メイドカフェ レインボー】の諸君。この前は、よくもやってくれたな。だが、今度はそううまくはいかないぞ!」
店にやってきたのは、前にこの店で攻撃魔法を使った厄介な貴族『ライジング・ガンマ』であった。
「お帰りなさいませ! ご主人様! どうぞこちらへ!」
すると、魔王の幹部の一人『カナミ・ビーストクロー』が彼を席に案内した。
「ん? 前はこんな子どもはいなかったような。まあ、お手並み拝見といこうじゃないか」
ユミナ(黒猫形態)の屋敷をここ『北の洞窟』の付近まで移動させなければならなくなった理由はこの男が貴族としての力を使い、この店を潰しにやって来ると思ったからである。
だけど、今日のこいつは、妙におとなしいな。なんでだろう?
「よおし、では【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】を1つもらおうか!」
「かしこまりました! ご主人様! 少々お待ちください!」
カナミは彼の注文を聞くと、俺のところにやってきた。
「ケンちゃん、【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】1つー」
「はいよー」
俺はそう言うと、ちょうど出来上がったそれをカナミに手渡した。
「カナミ、わかってるとは思うが、落とすなよ?」
「え? ああ、うん、わかった」
白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや美幼女『カナミ・ビーストクロー』はメイド服が他のお客さんに当たらないように、迅速かつ慎重に、それを彼のところへと運んだ。
「お待たせしました! こちらが【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】になります!」
「おお! これこれ! 前はほとんど食べられなかったからな。今日は思う存分、堪能させてもらうよ」
「そうなのですか? では、ごゆっくりー」
カナミがその場から離れようとしたその時、短めの金髪と緑色の瞳が特徴的で白いタキシードを纏った『ライジング・ガンマ』がカナミを呼び止めた。
「待ちたまえ。君がよければだが、私のメイドとして、働いてみる気はないかい?」
「えっと、それって、私のことですか?」
「ああ、そうだよ。可愛い子猫ちゃん」
カナミは少し混乱していているように見えた。
いや、カナミのことだから、おそらく演技であろう。
それにしても、今度はうちの従業員を雇おうとするとは……。やれやれ、困ったやつだ……。
「それに君はこんな店にいても、君の真の魅力を発揮できないと思うのだが……どうだろうか?」
その時、カナミは……完全に……キレた。
「ああ? お前今、なんて言った?」
「あー、その……すまない、気を悪くさせてしまったようだね。別に私は君をバカにしたわけではな……」
「私はこの店が気に入ってんだよ。文句があるなら、私に言えや!」
「おー、怖い、怖い。しかし、その威勢の良さも君の魅力の1つだと私は思うよ」
「あー、そうかい。じゃあ、とりあえず外に出ろ。話はそれからだ」
「わかった。では、行くとしよう」
二人が店を出ていってから、三秒後……。
「コホン……。さあて、お仕事頑張るぞー!」
カナミは店に戻ってくると、そんなことを言ってから、仕事を再開した。
あれ? あいつはどこに行ったんだ?
仕事が終わってから、カナミにそのことを訊くと、カナミはこう言った。
「あー、あいつか。ムカついたから、あいつの国までぶっ飛ばしてやったぞ。どうだ? ケンちゃん、すごいだろー」
「ああ、大したやつだよ、お前は。これからも頼りにしてるぞ」
「ああ! 任せとけ!」
あいつは、また来るのだろうか? まあ、もし来てもあいつはカナミにぶっ飛ばされるだけだがな……。
*
「ルルナは元気にしているのかしら? うーん、久しぶりに会いに行きましょうか」
ルルナ・リキッドの母親でもあり、ルルナが前に通っていた学園の学園長でもある『テレサ・リキッド』は、ルルナと連絡を取った。すると。
「うん、いいよー」
あっさりオーケーがもらえた。
あら? そういえば、しばらくケンジさんの顔も見ていないわね。
もしかしたら、もうすでにルルナのことを義理の妹としてではなく、一人の女として見ているかもしれないわね。
幼女体型なテレサさんは、そういう面でルルナとケンジのことを心配していたのでした……。




