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ケンちゃん!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


「すみませーん! 注文いいですかー」


「は、はい! ただいまー!」


 魔王の幹部の一人である『カナミ・ビーストクロー』は俺とユミナ(黒猫形態)の指導により、店のマスコット的な存在になっていた……。

 その日は、白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや、美幼女『カナミ・ビーストクロー』のおかげで来客数が過去最高だったため、仕事が終わるとユミナが店を貸し切って、パーティーを開いてくれた。


「コホン。えー、カナミちゃんのおかげでお客さんがたーくさん来てくれたから、今日はオールナイトパーティーだよー!」


『イエーイ!!』


 この時、カナミだけは何も言っていなかった。

 今まで誰かとパーティーをしたことがないのだろうか?

 うーん、どうすればカナミは喜んでくれるかな?

 俺がそんなことを考えていると、何者かに後頭部を強く叩かれ、気を失ってしまった。


 *


 気がつくと、俺はユミナ(黒猫形態)の寝室のベッドの上にいた。


「え、えーっと、たしか……さっきまでパーティーを楽しんでた……よな?」


 その時、自分の四肢ししが動かないことに気づいた。


「な、なんで俺、動けないんだ? おーい! 誰かいないのかー!」


 俺が叫ぶと、部屋に誰かが入ってきた。


「は〜い、呼んだ〜?」


 それは、なぜか顔を真っ赤にした『カナミ・ビーストクロー』だった。


「お、おい、カナミ。も、もしかしてお前……酔っ払ってる……のか?」


「そ、そんなわけないでしょ〜。ちょっとクラクラするだけだよ〜」


 ダメだな、これは。完全に酔っ払っている。

 俺とカナミがなぜこんなことになっているのかは、察しがついているが、その目的までは分からなかったため、とりあえずカナミをこちらに呼んだ。


「なあ、カナミ。どうにかして俺を助けてくれないか? 多分、まだ耐性ができていない魔法のたぐいでこうなってると思うから」


「え〜、どうしよっかな〜。でも〜、私のお願いを聞いてくれたら、いいよ〜」


「おう、いいぞ。なんでも言ってくれ」


「ん〜? ねえねえ、今、なんでもするって、言ったよね〜?」


「ん? あー、言ったけど、それがどうかしたのか?」


「ううん、なんでもないよ〜。それじゃあ、早速。カナミちゃん……ダーーーーイブ!」


 カナミは突然、う○るダイブではなく、カナミダイブをして、俺の胸に顔を埋めた。


「あ〜、ケンちゃんの体、あったか〜い……」


「こ、こら! カナミ! いきなり抱きつくのはやめろ! 誰かが入ってくるかもしれな……」


 俺が全部、言い終わる前に、カナミは目に涙を浮かべながら、こう言った。


「も、もしかして、私のこと、嫌いなの〜? そんなの嫌だよ〜! お願い、ケンちゃん。私のこと、嫌いにならないで〜!」


 そう言うとカナミは、大声で泣き始めた。

 あー! もうー! なんでいつもこうなるんだよ!

 俺は一瞬、そう思ったが、俺を力強く抱きしめてきたカナミの細くて白い腕は、かすかに震えていたため、カナミを慰めることにした。


「おい、カナミ。俺の話を聞いてくれないか?」


 カナミは涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃになった顔をこちらに向けると、こう言った。


「……うん……いいよ……」


「それじゃあ、とりあえず……。カナミ、店のために働いてくれてありがとう。お前のおかげでお店は大繁盛だったし、お客さんたちも、すごく楽しそうだった。本当にありがとう」


「う……うん、どう、いたしまして……」


「でな、カナミ。お前のおかげでお店が繁盛したわけだから……その……なんだ……お、お前が俺にしたいことをしても……いいぞ?」


 カナミはキョトンとした顔でこう言った。


「え? 本当に……いいの? 嘘じゃない?」


「ああ、嘘じゃないよ。ドーンと来い!」


 カナミはそれを聞くと、満面の笑みを浮かべながら、こう言った。


「うわーい! やったー! じゃあ、今からケンちゃんは私の抱き枕になってくれる〜?」


「ああ、いいぞ。お安いご用だ」


「わーい! ありがとう、ケンちゃん! それじゃあ、おやすみなさ……Zzz」


 カナミは俺の左側に移動してから、俺をギュッと抱きしめると、スウスウと寝息を立て始めた。

 俺とカナミがこんなことになったのは、多分……いや、確実にルルナたちのせいだが、カナミが喜んでくれたから、今回は大目にみるとしよう。

 その後、俺はカナミと共に、一夜を過ごしたのであった……。(いや、一線は越えてないからな?)


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