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なあ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 仕事が終わったので、屋敷の二階にあるユミナの寝室にカナミを迎えに行った。


「おーい、カナミー。いるかー」


 部屋に入ると魔王の幹部の一人である『カナミ・ビーストクロー』がなぜか般若はんにゃのような顔で立っていた。

 俺には白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや美幼女『カナミ・ビーストクロー』がなぜ怒っているのか見当もつかなかった。

 俺はベッドの上に座っているユミナ(黒猫形態)を見て、なぜこんなことになっているのかアイコンタクトをとった。

 すると、カナミの男嫌いを克服するために協力してくれ、とユミナに頼まれた。

 やれやれ、なんで俺はいつも厄介ごとを押し付けられてしまうのだろう……。

 俺はそう思いながらも、お店にやってきた男性客になりきることにした。


「こ、こんにちはー。うわー! とってもきれいなお店ですねー」


「は? ここは、お前みたいなケダモノが来るところじゃねえだよ。とっとと帰りやがれ!」


 ユミナ……翻訳、頼めるか?

 俺がユミナにアイコンタクトをとると、ユミナは笑顔で「うん、わかった。これが終わるまで頑張るよ」と答えた。

 ちなみにさっきのは、こうだ。


「お、お帰りなさいませ、ご主人様。お好きな席へどうぞ」


 よし、じゃあ、次に行こう。


「すみませーん、注文いいですかー? 【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】を1つくださーい」


「は? お前みたいなケダモノに食わせる料理なんてねえんだよ。あと、ジロジロこっち見んな! 汚らわしい!」


 翻訳すると……。


「は、はい、かしこまりました。【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】ですね。少々お待ちください」


「ほら、持ってきてやったぞ。ありがたく思え。というか、ケダモノはケダモノらしく床で食べろよ」


 ほ、翻訳すると……。


「お待たせしました。こちらが【レインボーパフェ・スーパーノヴァ】になります。では、何かありましたら、お呼びください」


「……あー、おいしかったなー。カナミちゃん、お会計、お願いしまーす」


「そうか、そうか、うまかったか。なら、有り金全部置いていけよ。うまかったんなら、それくらいのことはできるよな? なあ!」


 ほ、翻訳します……。


「そうですか。それはよかったです。え? こんなにおいしい料理がこの値段でいいのか……って、お客様に喜んでもらえるだけで私たちは幸せですから、全然大丈夫です!」


「それじゃあ、またね。カナミちゃん」


「二度と来てほしくはねえが、店の繁盛のためだ。絶対来い! 明日来い! というか、毎日来い!」


 ほ、翻訳……しま……す。


「はい、またのご来店をお待ちしております。いってらっしゃいませ、ご主人様!」


 ____俺とユミナの感想。カナミは……ドS確定!!


「な、なあ、カナミ。どうしてそんなに男嫌いなんだ?」


 カナミは頬を赤く染めると、両手の人差し指をくっつけたり離したりしながら、こう言った。


「に、人間のオスはみんなケダモノだから、油断してると食べられちゃうよー……って、昔、お母さんが言ってたから……だと思う」


 うん、間違ってはいない。間違ってはいないが、多分カナミが想像しているものとは違うな。


「そうか、そうか。でも、カナミは男嫌いじゃないと思うぞ?」


「え? ど、どうしてそう思うの?」


「んー? いや、だって、俺と話してる時はさっきみたいな口調にならないからだよ」


「え? あー、うん。そう……だね。どうしてかな?」


「まあ、たしかにお前の言う通り、男はケダモノかもしれない。だけど、普段はおとなしいから、俺と話してる時みたいに接すればいいんじゃないか?」


「そうか……それもそうだな」


「ああ、そうだとも。だからさ、もっと肩の力を抜いて接していけばいいんじゃないか?」


「うん……そうだな。ありがとう……えーっと」


「あれ? 俺、名前言ってなかったっけ? コホン、えー、俺の名前は田村たむら 健二けんじだ。好きな呼び方で呼んでいいぞ」


 カナミは自身に差し出された手を優しく握った。


「う、うん、よろしくね。ケ、ケンちゃん」


「ああ、これから一緒に頑張ろうな!」


「う、うん!」


 こうして、カナミは明日から正式にうちで働くこととなった……。





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