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ちっ!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 魔王の幹部の一人である『カナミ・ビーストクロー』が目を覚ますと、朝日がリアルに目玉焼きを作りに攻撃してきた。

 彼女はルルナの部屋から勢いよく脱出すると、階段を駆け下り、洗面所に行った。

 そして、バシャバシャと周りに水が飛び散っていることなど気にせず、顔を洗った。


「はぁ……。なんで私は人間の家に泊まってしまったのだろう……。というか、ここに住んでいるメス5匹はなんであんな男のことが好きなんだ? さっばり理解できない……」


 鏡に映った自分の姿を見ながら、そんなことをつぶやいた彼女の背後には、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』がいた。


「おはよう、カナミちゃん。よく眠れたー?」


「ひっ……! あ、ああ、おかげさまで……」


「そっかー、よかったー。……でもー」


 ルルナはカナミの耳元でこう囁いた。


「二度とお兄ちゃんのことを()()()()……なんて言わないでね?」


「は……はい。わかり……ました」


「そう……。それじゃあ、朝ごはんにしよっかー。カナミちゃんは何がいいー?」


「えっ? あー、えーっと、パ……パンが食べたいです……」


「そっか、そっか。なら、手伝ってくれるー?」


「は、はい。わかりました……」


 カナミはルルナと共に、朝食の準備をすることとなった。


『いただきまーす』


 白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや美幼女『カナミ・ビーストクロー』の分の椅子がなかったため、今日は特別に俺の膝の上で朝食を食べることになったがので……。(つまり、テーブルで食べる)


「カナミー、うまいか?」


「え? あ、ああ、うん。おいしいよ、カリカリに焼いた食パン」


「そっか、そっか。それはよかった」


 もしかして、こいつは気づいていないのか? メス5匹が私に対して、憎悪の眼差しを向けていることに……。


「お兄ちゃん、塩、取ってー」


「ん? ああ、いいぞ。ほらよ」


「ありがとう。お兄ちゃん」


「どういたしまして」


 お、おい、今、あいつドサクサに紛れて爪をいやらしく触ってたぞ!

 カナミはルルナの行動に驚いた。しかし、それだけでは終わらなかった。


「お兄様。ソースを取ってくれませんか?」


「ん? あー、いいぞ。ほらよ」


「ありがとうございます。お兄様」


「おう」


 赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』は彼からソースを受け取る直前、彼の手の甲に乗っていたショウジョウバエを小さな炎で灰も残らないくらいの火力で抹消した。


「お兄ちゃん、しょうゆ取ってー」


「ん? あー、わかった。ほらよ」


「ありがとう、お兄ちゃん」


「ああ、これくらいお安いご用だ」


 金髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『マリア・ルクス』は彼から、しょうゆを受け取る直前に、彼の手の甲に乗っていた『アリ』を光魔法……というより、極細のビームで抹殺した。


「おい、バカ兄貴。胡椒こしょう、取ってくれよ」


「ん? あー、わかった。ほらよ」


「サンキュー、バカ兄貴」


「あー、うん。どういたしまして」


 ピンク髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女『アヤノ・サイクロン』は彼から胡椒こしょうを受け取る直前、彼の手の甲についていたほこりを風魔法で吹き飛ばした。


「ケンジ……ケチャップ取って」


「ん? あ、ああ、わかった。ほらよ」


「うん、ありがとう」


「ど、どういたしまして」


 黒髪ツインテールと黒い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミーナ・ノワール』はケンジからケチャップを受け取る直前、彼の手に宿っていた『邪悪な気』を爪くらいの薄さの闇魔法……簡単に言うとブラックホールで吸い込んだ。


「え、えーっと、お前らどうしたんだ? なんかいつもと……」


「あー、おいしいなー! でも、そろそろお前たちは学校に行かなくちゃいけないんじゃないかー?」


「ん? あー、そうだな。カナミの言う通りだな」


 彼は朝ごはんを急いで食べ終えると、ルルナたちにも急ぐよう伝えた。

 はぁ……な、何なんだよ、あいつら……。あいつのこと、どんだけ好きなんだよ。……ん?

 ルルナたちが出かけたら、玄関の鍵を閉めてやろうと思い、玄関で待っていたカナミは彼女らの本性を目の当たりにした。


『……ちっ!』


 彼女らは同時に舌打ちをしながら、カナミに対して殺意のこもった眼差しを向け、家をあとにしたからである……。









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