もういい！
魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。
この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。
俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。
俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。
俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。
俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。
え？ 高校が午前中で終わるわけがないだって？ それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。
だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。
さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。
「とうちゃーく！ ……って、お前、店の服着たまま来ちゃったのか？」
「え？ あー、うん……」
「そ、そうか……。うーん、まあいいか。明日も仕事あるし」
「ど、どうすればいいの？」
「え？ あー、ハンガーにかけとけばいいんじゃないか？」
「う、うん、そうする……。あっ、でもハンガーの場所わからない……」
「あー、ちょっと待ってろ。今、ルルナを呼ぶから」
俺の世界にある俺の家に泊まることとなった魔王の幹部の一人『カナミ・ビーストクロー』。
白い猫耳と白髪ロングと黒い瞳と白いシッポが特徴的な美少女……いや、美幼女である。
「おーい！ ルルナー！ いるかー！」
「はーい！」
二階から駆け下りてきたのは、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』。
「あれー？ カナミちゃん、連れてきたのー？」
「ああ、そうだ。なんか一人で寝るのは寂しいからって……なあ？」
「え？ あ、うん、まあ、そういうことだから」
「ふーん、そうなんだー」
「な、なによ」
「ううん、別になんでもないよー」
「そう……」
「コホン。それでだな、カナミに色々教えてやってくれないか？ 俺、まだ宿題が終わってないから」
「んー？ それって、もしかして私に言ってるのー？」
「え？ あー、そうだけど。それがどうかしたのか？」
「ううん、なんでもないよー。それじゃあ、カナミちゃん、私についてきてー」
「あ、ああ、わかった」
カナミはルルナに手を引かれて、二階に行った。さてと、それじゃあ、やりますか。
＊
「お、おい！ なんだこの部屋は！ あの人間の写真だらけではないか！」
「あー、気にしなくていいよ。それ、私じゃなくてマキナちゃんのだから」
赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』。
「いや、普通、気になるだろ。というか、この部屋はいったい何なんだ？」
「あー、ここはね。私たちしか知らない秘密の部屋だよー」
「ひ、秘密の部屋？」
「うん、そうだよー。カナミちゃんもきっと気にいると思うよー」
「ど、どういうことだ？」
「うーんとね、ここはお兄ちゃんのことが好きで好きでたまらない子たちが集う秘密の部屋だよー」
「つまり、どういうことだ？」
「もうー、察しが悪いなー。カナミちゃんはー。だからね、この部屋にはお兄ちゃんに関係するものしかないってことだよ」
「……え？」
すると、ルルナは部屋にあるものを一つ一つ説明し始めた。
「この家でのお兄ちゃんの行動を全部監視できる『ハエトリグモ型の監視カメラ』に、お兄ちゃんの心臓の音だけをいつでも聞ける『猫耳型の集音器』。あと、お兄ちゃんと視界共有ができる『魔法のメガネ』なんてのもあるよ。あー、あと……」
「も、もういい！ それ以上はやめてくれ！」
「えー？ もういいのー？ まだまだ面白いものがたくさんあるのにー」
「お前たちがブラコンだということはよーくわかったから、もう何も言うな」
「えー、もっとお兄ちゃんについて語りたかったなー」
「ち、ちなみにお前はあいつのことをどう思っているんだ？」
「えー、お兄ちゃんがその気なら、いつでも〇〇したいと思ってるよー」
こ、ここまで重度のブラコンは、見たことないぞ。こんなのがこの家には、あと4人もいるのか？ ……な、なんか恐ろしいな。
「カナミちゃん、どうかしたー？」
「い、いや、なんでもない。そ、それより、私は風呂に入りたいのだが、どこにあるんだ？」
「あー、お風呂ねー。ついてきてー」
「あ、ああ」
____風呂。
「おい、なんで一緒に入ってるんだ？」
「えー？ だって、本当なら私の時間だからー」
「ん？ ここは時間制なのか？」
「ううん、お兄ちゃんが入るまでは誰も入らないよー」
「お、おい、まさか……」
「そうそう、みんなね、少なからずお兄ちゃんのことが好きだから、〇〇を〇〇したり、〇〇を〇〇して〇〇にしたりするよー」
「い、今のは、全部……事実……なのか？」
「うん、そうだよー」
私はこんなやつに負けたのか？ いったい、こいつの頭の中は、どうなってるんだ？
「カナミちゃん、そろそろ出ようよー」
「あ、ああ、そうだな」
カナミはその夜、ルルナの抱き枕にされたらしい……。
