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引きこもりてえよ!

 学校までの道のりをダッシュで駆け抜ける。早くしないと遅刻してしまう状況の最中、俺の背後には、ついさっき俺と『兄妹契約』を結んだ異世界人のルルナがいる。

 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な彼女の世界は今、魔王によって支配されている。魔王を倒せる存在がいないか探していたところ、俺を見つけて今に至るというわけだ。

 俺にそんな力があるとは思えないが、今はただ学校に向かうしかない。

 俺は一週間前に高校二年生になった。そろそろ環境に馴染んでくる頃だと思う人がいるだろうが、ルルナ(こいつ)が今日転校してくるとなると、それは肯定できない。

 同じクラスだったら、終わりだが、うちの学校は学力重視の厳しい学校だから、その心配はないだろう。

 さて、今日も頑張りますか!


 *


 県立空前絶後高校。二の一教室。


「……ふぅ〜、なんとか間に合ったな。あれ? ルルナがいないな……。うーん、まあ、転校生だから多分、先生となんか話してんだろう。さて、俺の席に座りますか」


 俺の席は左から一番目の列の後ろから二番目にある。定番だって? それに涼○ハルヒの憂鬱のキ○ンと同じ席だって? でもあれは一度席替えしたからだったような……。まあ、いいか。

 おっ、始業のチャイムが鳴ったな。やれやれ、やっと普通の一日が始ま……。

 その時、黒髪ポニーテールの担任『折村おりむら 千歳ちとせ』先生が出席簿くろいのを持って教室に入ってきた。すると、ちとせちゃん(あだ名)は、教壇に立つとこんなことを言い始めた。

(ISの主人公の姉と名前が似ているが、まったくの別人。『くろいの』っていうのは、に○じょうで言ってた)


「さて、今日はこのクラスに新しい仲間が加わりますよー!」


 その一言でみんながざわつき始めた。いや、それは別におかしなことではないからいい。だが、俺が気にしていることはそんなことではない。


「もう入ってきていいですよー!」


 ちとせちゃん(ペンギンの方ではない)がそう言うと、教室の扉を開けて入ってきた者がいた。

 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女は黒板に田村 ルルナと書くと、クルッと振り返って、笑顔でこう言った。


「どうも初めましてー。田村たむら ルルナだよー! 今日からみんなと一緒のクラスになりましたー。これからよろしくねー」


 俺が気にしていたのは、こいつが来ないかどうかということだったのだが、どうやら俺の祈りは神に届かなかったようだ。俺なんかしたかなあ……?

 教室に歓喜の声が飛び交う中、ルルナは一つ余計なことを言った。


「あっ、あと、私は今日から田村くんの妹になりましたー。だから、私と付き合うなら、お兄ちゃんの許可が必要になるから気をつけてねー」


 その時、みんなの視線が一斉に俺に向けられた。あー、やっぱりこうなったか……。なんでこう、余計なことを言うかな……。


「おい、田村! どういうことだ!」


「田村、貴様!!」


「ロシアの人かな? もしそうなら、ボルシチを作ってほしいな……」


「今日からって、言ってたけど、まさか無理やり……」


「最低……」


「田村がいなくなれば、俺がルルナちゃんのお兄ちゃんになれるのか!?」


「田村殿! いったいこれはどういうことでござるか! 拙者せっしゃと育んできた友情は無意味だったということでござるか!」


「殺す……殺す……殺す……殺す」


「ちっ! ちょっと頭いいからって調子に乗りやがって!」


 無視しよう。こういうのは。というか、今まで俺の存在なんか認識してなかったやつらがこうも団結して俺を攻撃してくるとは……。

 あと、ござるって、言ってた、お前とは、何の関わりもないはずだぞ?

 俺がみんなから罵られていると、ルルナが。


「みんなー。お兄ちゃんをいじめるなら……」


 ちとせちゃん(ガ○リッシュナンバーのキャラクターではない方)の頭の上に止まったハエを目にも留まらぬ速さで捕まえると。


「このハエみたいに……」


 握力で原型が何だったのか分からないくらいにハエを握り潰した。その直後、ルルナは笑顔で。


「潰しちゃうからねー?」


「……は、はい」


 一同着席。ちとせちゃん(水上機母艦ではない方)立ったまま失神。女王誕生。その名は『ルルナ』。


「えーっと、私は空いてる席に座ればいいよねー。おっ、お兄ちゃんの後ろの席が空いてるねー。やったー!」


 こいつ……転校初日から何やってんだ? ルルナはスキップをしながら、俺の方にやってくると。


「今日から同じクラスだね! お兄ちゃん♪」


 満面の笑みでそう言った。人の気持ちも知らないで……って、こいつには俺の心の声が聞こえてるんだよな。あー、もうなんかずるいな……。


「ねえねえ、お兄ちゃん、学校って楽しいの? あとで案内してよー」


 俺は溜め息をくと。


「分かったよ。昼休みとか放課後にでも案内してやるから、せめて授業中はおとなしくしてくれ」


「うん、分かったー。それじゃあ、授業が終わるまでの間、お兄ちゃんの行動を全て監視するねー」


「……普通に授業を受けてくれよ。頼むから」


「うん、もちろん、そうするよー。お兄ちゃんに恥をかかせるわけにはいかないからねー」


 もう手遅れだと思いますけどね。まあ、これ以上のことはさすがにしないと思うから、ひとまずこれでこの騒動は終わり……かな?

 そのあとのことは、言うまでもないと思うが、一応伝えておく。

 その日の俺は不幸に見舞われた。何度も殺されかけたからだ。まあ、ルルナが助けてくれたから、問題なかったけどな。

 ____その日の夕方、学校を一通り案内し終わるとルルナが屋上に行きたいと言い始めた。

 うちの学校は自殺防止のために屋上を封鎖しているからダメだということを伝えると、屋上に行けるドアの前に立つと、ドアノブを握力で破壊した。(ウ○メイドであったな……こんなシーン)


「……もう引きこもりてえよおおおおおおおお!!」


 俺が屋上で叫ぶと、ルルナは。


「だったら、私も引きこもるよおおおおおおお!!」


 俺以上に叫んだ。こいつのせいで俺の日常は壊されてしまった。だけど……こういうのも案外……いいかもな……。

 この後、ちとせちゃん(先生)に見つかったが、ルルナが先生の後頭部を……あとは、想像に任せる。

 まあ、そんなこんなで俺たちは家に帰った。今日はバイトはないから、適当になんか作って食べよう。い、一応、ルルナの分も作るか……。今日から、か、家族になったんだし……。

 俺と一緒に下校するルルナの顔は笑っていた。夕日に照らされたせいか、その笑顔は一段と輝いて見えた……。

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