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抱き枕だぞー!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 今日は色んなことがあったな……。

 ユミナの屋敷を『北の洞窟』の近くまで移動させるために、ヤドカリ型移動要塞『ヤミナ』を発進させたり、『北の洞窟』を探索したり、顔をなくした『デュラハン』の顔探しを手伝ったり……ほんと、今日は色々あったな……。

 異世界から元の世界に戻り、部屋のベッドに横になった俺は、そんなことを考えていた。

 すると、俺の部屋の扉をノックした者がいた。


「お兄さん、ちょっといい?」


「んー? あー、マリアか。入っていいぞー」


「そっか……それじゃあ、お邪魔しまーす」


 部屋に入ってきたのは、金髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『マリア・ルクス』だった。


「お兄さん、ミーナちゃんも一緒なんだけど、いいかな?」


「え? ミーナもいるのか?」


 俺はミーナが部屋に来たのかどうか確かめるために、起き上がった。


「こ、こんばんは。ケンジ……。その……あの……」


 なぜ二人が俺のワイシャツを着ているのかはわからなかったが、今はそれについてく必要はないと思い、それについて深く考えるのをやめた。

 しかし、ミーナが俺から目をらした状態で俺に話しかけてきたのは初めてだったため、とりあえずいてみた。


「なあ、ミーナ。なんで俺の方を向いて話してくれないんだ?」


「そ……それは……」


 黒髪ツインテールと黒い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女『ミーナ・ノワール』がなにか言いかけた時、外でピカッと一瞬、何かが光ったかと思うと、数秒後、ものすごい音を辺り一帯に響かせた。


「雷か……というか、雨降ってたのか。全然、気がつかなかった」


 俺が窓のカーテンを開けて窓の外を見ようとした時、ミーナが俺を背後から抱きしめてきた。


「え? ちょっ……ミーナ、お前もしかして……雷が怖いのか?」


 ミーナは小刻みに震えながら、俺をさらに抱きしめた。

 なるほど……。ということは、マリアは付き添いってことか。

 俺がマリアの方に目をやると、手を振りながら部屋から出ていくのが見えた。

 あいつ……何企んでるんだ?

 俺はそんなことを一瞬考えたが、今はミーナを落ち着かせなければならないと思い、それ以上、そのことを考えるのはやめた。


「なあ、ミーナ。とりあえず離れてくれないか? 俺が座れないから」


「う……うん、わかった」


 ミーナはそう言うと、俺から離れた。

 しかし、俺がベッドの上に座ろうとした時、ミーナは俺にお姫様抱っこをしてきた。

 その後、ものすごい力で俺がベッドに横になるように運び、押し倒し、そして、馬乗りになった。


「え、えーっと、ミーナ。これはいったい……どういうことなんだ?」


 ミーナはその体勢のまま、じっと俺を見ていた。俺はどうしたらいいか悩んだが、とりあえず抱きしめてみることにした。すると……。


「ケンジ……私が雷が苦手だってこと、みんなには……内緒にしてね?」


 ミーナの脅し顔は初めて見た。初めて見たが、誰かに似ているとも思った。

 あっ、そうか。今の顔はルルナと同じ顔だ。あいつは誰かを脅す時、笑顔になるからな。

 俺は一人で疑問を解決した後、ミーナにこう言った。


「ああ、わかったよ。お前が雷が苦手だってことは、誰にも言わないよ」


「そう……なら、今日は私の抱き枕になりなさい」


「抱き枕? 俺がか?」


「そうよ。何か問題ある?」


「いや、別に……。ただ、お前がそんなことを言うなんて思ってなかったからさ」


「い、いいから、ケンジはおとなしく私の抱き枕になりなさい」


「はいはい、わかったよ。ほら、お前専用の抱き枕だぞー!」


 俺は両手を広げて、ミーナがいつ俺の腕の中に飛び込んでもいいようにした。


「しゃべる抱き枕なんていらない。けど、今回は……我慢してあげる」


 ミーナはそんなことを言いながら、俺の腕の中に飛び込んできた。

 その直後、ミーナは眠ってしまったが、俺はそんなミーナの体温を感じながら眠りについた。

 ____次の日の朝、ミーナが俺の腕の中で気持ち良さそうな顔で眠っているのを起きてすぐに見れたのはものすごくラッキーだった……。





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