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なんでそうなるんだよー!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 『北の洞窟』……何かがいたが、もういない空間。


「えーっと、何も……ないな」


「んだよ、もぬけの殻じゃねえか。その辺のエメラルドでも持って帰るか」


「アヤノ、こういうのはな、取らない方がいいんだぞ?」


「あ? なんでだよ」


「ほら、よくあるだろ? その土地にあるものを取ったら、その土地の神さまが怒って取り戻しに来る……みたいな」


「はあ? なんだそれ。そんなの迷信だろ?」


「いや、無断で土地の物を取るのはダメなんだぞ? 俺の世界に『富士山』って山があるんだけどな、その山の石とかを取ると罪に問われることがあるんだ。だから、やめといた方がいいぞ」


「そうなのか? まあ、バカ兄貴がそう言うなら、仕方ねえな」


「そうか……ありがとう」


「べ、別に怖いとかそんなんじゃないからな! 勘違いするなよ! バカ兄貴!」


「はははは、そんなのわかってるよ。お前は強いもんな」


「ああ、そうさ! あたしは強い! いつかバカ兄貴も倒せるくらい強くなるから、それまで誰にも負けるんじゃねえぞ!」


「ああ、わかったよ」


「よおし! それじゃあ、帰るぞ。バカ兄貴!」


「ん? あ、ああ、そうだな」


「あん? あんまり乗り気じゃねえみたいだな。何か隠してんのか?」


「いや、別に何も隠しちゃいないさ。でも、なんかちょっと見覚えがあるような気がしてな」


「それって、バカ兄貴はここに来たことがあるってことか?」


「いや、ここに来たのは初めてだ。けど……」


「けど、なんだよ」


「いや、なんかずっと昔にここに来たような気がしたんだよ」


「……それで? それ以外は何もないのか?」


「え? あ、ああ、それだけだ」


「なら、それはデシャヴってやつじゃねえのか?」


「そう……なのかな?」


「今はそれ以外、何にも思い出せねえんだろ? だったら、今考える必要ねえだろ?」


「それも……そうだな。お前の言う通りだ」


「そうだろ、そうだろ。なら、今は今この時にしかできないことをやるべきなんじゃねえか?」


「そう……だな。今はここから出ることが先決だな」


「よし。なら、手、繋いでやるよ」


「え? なんでだ?」


「あたしの言うことを聞かねえって言ったら、洞窟でバカ兄貴に襲われたって、他のやつにチクるぞ?」


「はぁ……分かったよ。手を繋げばいいんだな」


「ああ」


 俺はピンク髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女『アヤノ・サイクロン』の右手を優しく握った。


「えっと、これでいいか?」


「はぁ? これでいいわけねえだろ。ちょっと考えてみろよ」


「……えーっと、すまん。俺にはよく分からない」


「あー! もうー! バカ兄貴はやっぱりバカなんだな! いいか? こういう時は……こ、恋人繋ぎってのをするもんなんだよ!」


 恋人繋ぎ? あー、なるほど。お互いの指を絡める、あれだな。

 俺がアヤノに言われた通りにすると、アヤノは元気にこう言った。


「よおし! それじゃあ、今から家に帰るぞー! 手を離したら殺すから離すんじゃねえぞ! バカ兄貴!」


「ああ、肝に命じておくよ」


「よっし! そんじゃあ、しゅっーぱーつ!」


 なるほど。アヤノは恋人繋ぎをすると機嫌が良くなるのか。覚えておこう……。

 俺たちは洞窟にまだ奥に進める道があることを知らないまま、洞窟から出ていった。


 *


 ヤドカリ型移動要塞『ヤミナ』(ユミナの屋敷)に戻ると、洞窟にはエメラルド以外、何もなかったことをみんなに伝えた。


「なあんだ。何もなかったのかー。つまんないのー」


「お前……何を期待してたんだよ」


「え? お兄ちゃんとアヤノちゃんが洞窟で冒険してるうちに、義理の兄妹じゃなくて、いつのまにか恋人になったんじゃないの?」


 銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』は俺にそう言ったが、俺は。


「そんなことあるわけないだろ? なあ、アヤノ」


 全面否定した。しかし、アヤノは。


「バ、バカ言ってんじゃねえよ! あ、あたしとバカ兄貴がこここ、恋人になるわけねえじゃねえか!」


 なぜかひどく動揺していた。


「あれー? アヤノちゃん、もしかしてそういうこと想像してたのー?」


「……! そ、そんなことあるわけねえだろ! ほ、ほら! バカ兄貴もなんとか言ってくれよ!」


「いや、そんなこと言われても、俺そういうのよく分からないから、なんとも……」


「つーまーりー、お兄ちゃんは私たちと恋人関係になっても全然問題ないってことだね?」


「え? いや、家族でそういうのがあるのかは分からないけど、俺はお前たちの意思を尊重するぞ」


「なるほどねー。それじゃあ、今日から始めようかー」


「え? 始めるって、何をだ?」


「なにって、『お兄ちゃん争奪戦』だよー」


 ルルナがそう言った直後、俺の5人の義理妹が一斉に俺を追いかけ始めた。


「……な、なんでそうなるんだよー! というか、誰か助けてくれえええええええええええええ!!」


 こうして、『お兄ちゃん争奪戦』が始まったのであった……。










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