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居たよー!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


 先日、屋敷を改造してもらった時、狼型の獣人に言われたことがどうしても頭から離れなかったため、仕事が手につかなかった。

 唯一の料理担当である俺がしっかりしなくてはいけないのに……我ながら情けない。

 仕事が終わると店長であるユミナが俺を寝室に呼んだ。まあ、そうなるよな……。

 少し落ち込みながら、ユミナの寝室へと向かうとベッドの上にユミナ(黒猫形態)がいた。

 ユミナがベッドに座るよう俺に言ったため、俺はユミナの言う通りにした。


「今日の君はなんだか心ここにあらずって感じだったけど、何かあったの?」


 ユミナの赤い瞳は俺の心の中を覗き込んでいるかのようで、少し怖かった。

 しかし、ここで相談しなければ、もっとひどくなると思ったため、俺はいさぎよくユミナに話すことにした。


「まあ、正直に言うとだな。昨日まで屋敷を改造してくれていた獣人の一人から言われたんだよ。『またな、次期魔王候補』って……」


「にゃるほどねえ、それで君は動揺しちゃったわけか」


「まあ、そういうことだ……」


「ふーん、そうなんだ……。それで? 君は自分が次の魔王になるかもしれないって思ってるの?」


「いや、別にそんなことはこれっぽっちも考えてないんだよ。ただ……」


「ただ?」


「俺がどうして魔王と同等の力を秘めているのかなって、改めて考えちまって……」


「そっか……君は自分が何者なのか知りたいんだね?」


「え? あー、うん。まあ、そういうことになるのかな?」


「はっきりしないなー。君は今のままでいいの?」


「いや、このままじゃダメだってことは分かってる。けど……」


「けど?」


「俺は……自分の正体を知るのが……怖いんだ……」


 その時、ユミナは猫の手で俺の頭を撫でた。


「大丈夫だよ。君が何者であろうと、私や君の妹たちは君のことを嫌いになったりしないよ」


「そう……なのかなぁ……」


「うん、きっとそうだよ。ねえ? みんな?」


 ユミナがそう言うと、俺の義理妹が五人、寝室に入ってきた。


「お、お前ら……今までずっとそこにいたのか?」


「うん! 居たよー!」


 元気よくそう言ったのは、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ・リキッド』。


「今日のお兄様は少し変でしたからね」


 そう言ったのは、赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的な美少女『マキナ・フレイム』。


「みんなで様子を見に行こうってことになったの!」


 そう言ったのは、金髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『マリア・ルクス』。


「べ、別にあたしは乗り気じゃなかったけどさ、バカ兄貴にもしものことがあったら、あれだから来てやったのさ。感謝しろよ」


 そう言ったのは、ピンク髪ロングと赤い瞳が特徴的な美少女『アヤノ・サイクロン』。


「ケンジ、私たちに隠し事は……なし……だよ?」


 そう言ったのは、黒髪ツインテールと黒い瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミーナ・ノワール』。


「え、えーっと、どこから聞いてたんだ?」


「全部聞いてたよー。お兄ちゃん、今にも泣き出しそうだったねー」


「う、うるせえ! 俺だって、泣きたくなる時はあるんだよ!」


「それで、ユミナちゃんに慰めてもらってたのー? 私たちにも話さずにー?」


「わ、悪いかよ」


「べっつに〜、そんなことないよ〜」


「ルルナ、お前……」


「なあに? 今度は私に慰めてほしいのー? いいよー、私の胸に飛び込んでおいでー♪」


 こいつ……人が本気で悩んでるのに、からかいやがって……!

 あっ、ルルナには俺の心の声が聞こえてるの忘れてた……。

 俺がルルナの方を見ると、ルルナはニコニコと笑っていた。


「な、なんだよ。何がおかしいんだ?」


「うーん? 別に何もおかしくないよー? 私はお兄ちゃんを励まそうとしてるだけだよー?」


「お前……俺が本気で悩んでるのを知ってて、よく笑えるな」


「お兄ちゃん、悩んでても仕方ないんだから、今日はもう帰ろうよー」


「帰る……か。そうだな、今日はもう帰ろうか」


 俺たちはユミナに帰ることを告げると、その日はルルナたちと共におとなしく帰った。

 ____この日、ケンジは五人の義理妹たちに抱きしめてもらいながら眠ったとか眠らなかったとか……。












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