約束だ!
魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。
この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。
俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。
俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。
俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。
俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。
え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。
だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。
さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。
店を改造して移動できるようにするために一度、町へ行くこととなった。なので、今日は店を休みにしてもらった。
そのために必要な人材を雇うお金……つまり、魔族の職人20人×20万カオス=400万カオスはモンスターを倒しまくった後、肉やら骨やらを売って1ヶ月で集めることができた……。(もう6月になった)
____ギルドの受け付け窓口……。(野球ドームくらいの広さである……でかい)
「あのー、すみません。クエストを申請したいんですけど、いいですか?」
俺が受け付けに行って、受け付け嬢さんに話しかけた。すると、その人はNPCのように同じことを何度も言い始めた。
「はい、クエストの申請ですね。依頼内容と報酬をこの紙に書いて、一度私に提出してください。あとは、私の方で掲示板に貼っておきます」
手渡されたその紙にペンで依頼内容と報酬を書いている間もそれを何度も言っていたため、この人、仕事のしすぎで頭がおかしくなったのかな? などと失礼きわまりないことを考えてしまった。
俺が彼女にクエスト申請書を出すと、彼女はぺこりと頭を下げて、またのご利用をお待ちしておりますと言った。
なんか人と話している気がしなかったな……。俺はそんなことを考えながら、俺を待っていてくれているルルナたちのところへ向かった。
「みんな、ただいまー。あれ? ルルナはどこに行ったんだ?」
「ルルナさんなら、お兄様の様子を見に行くと言って少し前にいなくなりましたけど、会いませんでしたか?」
赤髪ロングと緑色の瞳が特徴的なマキナ・フレイムはそう言った。
「いや、会わなかったぞ。すれ違いかな?」
「ルルナさんのことですから、危険なところへは行かないと思うのですが、もしものことがあります。お兄様、ルルナさんを探してきてください」
「え? なんで俺なんだ?」
「ルルナさんはお兄様の心の声を聞くことができるんですよね?」
「え? あー、まあ、そうだけど、それがどうかしたのか?」
「ルルナさんはきっとお兄様の心の声を聞きながら、この人混みの中を歩いています。ですから……」
「俺が心の中で何かを喋りながら、この人混みの中を歩いていけば、向こうからやってくるってことか?」
「はい、そのとおりです。ですから、お兄様は早くルルナさんを探してあげてください。3人のことは私が面倒を見ますので」
マリア・ルクス。アヤノ・サイクロン。ミーナ・ノワールのこと……。
「そうか……なら、頼んだぞ。マキナ」
「はい! 私にお任せください!!」
バン!と自分の胸を叩いたマキナ。Cカップほどの胸がポヨンと揺れた。
俺はそれをできるだけ見ないようにしながら、じゃあ、行ってくると言い、ルルナを探しに行った。
「お兄ちゃーん! どこにいるのー! お兄ちゃーん!」
人混みの中、銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女ルルナ・リキッドは義理の兄であるケンジのことを探していた。
初めてギルドにやってきたのは、ケンジだけではない。実はルルナも今回初めてギルドにやってきたのである。
母親の方針でこのような場所に来てはいけないと言われていたせいで、今回それが裏目に出てしまった。
明らかに迷子になってしまったことを知ったルルナはギルドにごった返す人々に時折、ぶつかりながらもひたすら前に進んでいった。
彼を見つけなくては帰れないし、みんなが待っている場所まで帰ることができない。
そんな考えがルルナの頭の中をいっぱいにしていたため、彼女はますます迷ってしまった。
疲れ果てたルルナは、木製のベンチを見つけると、そこに腰を下ろした。
はぁ……と溜め息を吐くと、自分がしたことを後悔していた。
こんなことなら、みんなと一緒に待っていればよかった。ケンジを探しになんか行かなければ、こんなことには……。
そう思っていた時、彼女には聞き覚えがある声……聞き覚えがある心の声が聞こえてきた。
自分のことを心配して探しに来てくれた彼の心の声がよく聞こえる方に、彼女は走り出した。
次第に大きくなる彼の心の声に安心したルルナは、涙目になりながらも進み続けた。
そして、彼の背中を見つけるとそのまま抱きついた。彼は自分のことを呼びながら、えんえんと泣き続けるルルナの声を聞きながら、頭を優しく撫でるとこう言った。
「もう一人で俺を探しになんか来るんじゃないぞ、俺との約束……そう、これは俺とお前の約束だ! 分かったか?」
ルルナは泣きながら、返事をした。彼はルルナの目尻に溜まっていた涙を拭うと、よしよしと言いながら頭を撫でた。
「もうお兄ちゃんのことを一人で探しに行かないから、私のこと嫌いにならないでえええええええ!!」
「別にそんなことで嫌いになんかならねえよ。さあ、みんな待ってるから、早く戻るぞ」
「うん……分かった。迷惑かけてごめんなさい、お兄ちゃん」
「義理とはいえ、お前は俺の家族なんだから、迷惑はかけて当たり前だろ? いちいちそんなことを考える必要なんてないぞ」
「でも……ううん、そうだね。お兄ちゃんの言う通りだね。それじゃあ、行こっかー」
「おっ、いつもの口調に戻ったな。よかった、よかった」
「えー、私はいつもこんな感じだよー」
「嘘つけ。さっきまで泣いてたぞ」
「もうー! お兄ちゃんのいじわるー!」
俺とルルナはなんとなく手を繋ぐと、みんなが待っているところまで歩き始めた……。
迷子の迷子の子猫ちゃんは、無事に家族のところに帰れた……って、ところかな?




