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強すぎだろ!

 ……え……っと。俺、どう……なったんだ? 朝っぱらから魔王を倒す旅に出てほしいとか、『兄妹契約』を結ぶために全部血を吸わせろだとか……本当、わけわかんねえよ……。

 それにしても、ここは暗いな。俺、死んじまったのかな? まあ、一度全身の血を全部吸われたわけだから、意識があるわけないよな……。

 そろそろお迎えが来る頃かな……。三途の川があるのかどうか確かめられるけど、川を渡っちまったら、もう二度と現世に戻って来られないんだよな……。

 両親が交通事故で死んでからは、毎日が大変だったけど、まあ、それなりに楽しい人生だったな……。

 俺がそんなことを考えながら、お迎えが来るのを待っていると、誰かに腹を思い切り殴られた感覚に襲われた。

 ……どうやら、俺はまだ死ねないらしい……。


「お兄ちゃん、大丈夫? 生きてるー?」


 俺の顔を覗き込む銀髪ショートと水色の瞳が特徴的な美少女『ルルナ』が目に入った俺は、『兄妹契約』を結ぶことに成功したのだということを知った。これでこいつは俺の妹になったわけか……。

 まあ、初対面の相手に血を全部、血を吸わせろなんて言われるとは、思っていなかったがな……。

 ……どうやら、俺はしばらくベッドに横になっていたらしい。

 どうしてわかるのかって? それは……。


「お兄ちゃん、それより学校に行かなくていいのー?」


 まあ、また今度話すとしよう。今は早く学校に行かなくてはならないからな。

 朝からこいつに出会わなければ、俺の人生はうまくいっていたかもしれないが、もう手遅れだ。

 俺の体内の血液を一度全て、ルルナの体内に入れることによって、俺の遺伝子情報をルルナに与えることができる。

 そんでもって、そのあと、俺の体の中に俺の血液を全て戻すと契約成立……ねえ。

 異世界の魔法なのか、魔術なのかは分からないが、今はそれよりも学校に行くことが先決だな。

 俺はゆっくりベッドから起き上がろうとした。しかし、ルルナがそれを止めた。


「ちょっと待って、お兄ちゃん。まだ私の血を吸ってないよ?」


「……あー、はいはい。もうそういうのいいから。というか、早くしないと遅刻しちゃうんですけど?」


 ルルナは自分の親指の先端を噛んでから、俺にその指を差し出した。異世界人の血も赤いんだな……。

 ん? ちょっと待てよ? もう契約は成立したんじゃなかったっけ?


「お兄ちゃんの遺伝子情報は私に伝わったけど、私の遺伝子情報はお兄ちゃんに伝わってないでしょう? だから、その、少しでいいから、私の血を飲んで……」


「……はぁ……そういうことは『兄妹契約』の手順を俺に説明する時に言ってほしかったな」


「ご、ごめんね、お兄ちゃん。私、この世界に来るのは初めてだから、その……緊張しちゃって……」


 そんな子が初対面の男のベッドに潜り込んだり、抱きついたり、俺の全身の血液を吸ったりしたのか……。なんか言ってることとやってることが噛み合ってないな……。うーん、まあ、とりあえず、慰めとくか。


「なあ、ルルナ。お前は俺の妹になるんだろ? 俺がこれからお前のお兄ちゃんになるからって、遠慮する必要なんてないんだぞ?」


「お兄ちゃん……。うん、そうだね。そうだよね。お兄ちゃんに遠慮する必要なんて……ないよね。それじゃあ、私の血を飲んでくれる?」


「……少しだけ、だからな?」


「うん、ありがとう。お兄ちゃん。それじゃあ、口開けて」


「……ああ」


 ルルナの親指が俺の口の中に入ってきた。俺はゆっくりとルルナの血を飲んだ……。味はほとんど感じないはずなのに、なぜかイチゴのような味がしたのは、気のせいだろうか?

 血を飲み終わった俺の口からルルナは自分の親指をゆっくりと出した。俺の唾液で少し汚れてしまったが、ルルナはそれをマジマジと見ていた。(そういう趣味をお持ちなのですかね……?)


「えーっと、これで『兄妹契約』は成立したのか?」


「うん、そうだよー。それじゃあ、学校に行こうか」


「ああ、そうだな。早く学校に……って、もしかして、お前も来るのか?」


「あれ? 言ってなかったっけ? 私は今日からお兄ちゃんと同じ高校に通うよー」


「聞いてないぞ、そんな話」


「当然だよー。今、初めて言ったからねー」


「そうか……。それじゃあ、とりあえず俺を解放してくれないか? まったく動けないんだが」


「えっ? ギリギリまでイチャイチャしないの?」


「それはいったいどこの兄妹だ? ……まあ、いいや。とにかく、一旦、離れ……」


 その時、ルルナは俺に顔を近づけてきた。そして。


「……これからよろしくね。お兄ちゃん♪」


 俺の額に優しくキスをした。その時、俺は頭の中が混乱状態になってしまった。

 その直後、着替えやカバンなどを大急いで持つと、その部屋からすぐさま脱出した。

 そんな彼の様子を女の子座りで見ていたルルナは、唇に指を当てながら、こう言った。


「あの人が今日から私のお兄ちゃんかー。なんというか……ハムスターみたいな人だなー」


 ルルナはそう言うと笑みを浮かべながら、彼の部屋を見始めた。

 その頃、彼『田村たむら 健二けんじ』は朝にやらければならないことを混乱状態になりながらも、やっていた。

 しかし、感情が高ぶっていた彼は、この時、こんなことを言っていたそうだ。


「何なんだよ! あいつ! メンタル強すぎだろ!」


 やれやれ、これからどうなることやら……。

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