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20万カオスだと!

 魔王の幹部の一人である『ユミナ・ブラッドドレイン』の屋敷で【メイドカフェ レインボー】を開いた俺たち。

 この世界にいる魔王を倒すことが、俺に与えられた使命なのだが、ルルナたちが乗り気でないため、それは保留となっている。

 俺しか料理を作るやつがいなかったため、人員募集をかけたが、やってきたのは、元気の良い返事しかできない、『座敷わらし』の兄妹であった。

 俺は店長であるユミナに、二人をどうするのかは俺に任せると言われた。

 俺は、一度、二人を不採用にしようと思ったが、二人を【見習い】として、この店で働かせることにした。

 俺たちが高校に行っている間、つまり午前中の間は二人に昼までにやっておいてほしい仕事をさせるというものだ。

 え? 高校が午前中で終わるわけがないだって? それは、異世界と俺の世界とでは、時間の流れ方が違うからだ。

 だいたい5時間ほどの時差があるため、高校が終わってから異世界に行くと、異世界は昼である。

 さて、今日も働くとしよう。6人分の食費を稼ぐために……。


「ユミナ、あれでよかったのか?」


 ユミナ(黒猫形態)の部屋……つまり、寝室に店での仕事を全て終えてから、すぐにやってきた俺は、ユミナにそう言った。


「えー? なんのことー?」


「ルルナのマネをするな。あいつの口調をマネしてたら、本当に無気力になるぞ」


「ごめん、ごめん。君が言いたいのは、あれでしょ? 今日、追い払った貴族のことでしょ?」


「ああ、そうだ。あいつ……『ライジング・ガンマ』は結構、やばい貴族なんだろう?」


「うーん、そうだね……。やばいというより、厄介な貴族……かな」


「アッガイ?」


「それはモ〇ルスーツの名前でしょ?」


「じゃあ、ベアッガイ?」


「それは、アッガイをベースにして作られた熊型の機体でしょ? 私が言ったのは、【厄介】だよ」


「ああ、厄介か。なるほど……理解した。それで? その厄介な貴族様はどれくらい厄介なんだ?」


「うーん、そんなには厄介じゃないけど……」


「けど?」


「一応、この世界で10本の指に入るくらいの力を持ってるから、呪いをかけない方がよかったかもね」


「えっと、それは……かなり厄介なんじゃないか?」


「うん、そうだね。やっちゃったね……」


「あいつがこの店に来ないように呪いをかけたのは、お前なんだから、その呪いはお前の意思で解けるんじゃないのか?」


「うーん、あの呪いはその期限にならないと絶対に解けない呪いだから、それは無理だね」


「そうか……なら、その期限になる前に逃げるか」


「え? 逃げるってどこへ?」


「ここじゃない、どっか。俺たちの本当に居場所に」


「本当の居場所って……大げさだよー。それに、一箇所に留まったら、見つかっちゃうよー」


「それもそうだな。じゃあ、この屋敷を改造して、あの動く城みたいにするか?」


「動く城……あー、あの最後は飛ぶ城になったやつね」


「ああ、そうだ。できるか?」


「うーん、ちょっとやってみないとわからないな。お金もたくさんいるし」


「金なら、俺がそのへんのモンスターを倒しまくって、肉やら皮やらを町で売ってくるから、心配しなくていいぞ」


「うーん、でも、私一人だと結構時間がかかるんだよねー」


「職人が必要なら、俺が町に行って探してくる」


「でも、私、魔王軍の幹部の一人なんだよ? 手伝ってもらえるかな?」


「なら、魔族で腕のいい職人を20人くらい連れてくればいいんじゃないか?」


「そんな簡単に言うけどねー、そんなに簡単に見つかるものじゃないよー。魔族の職人なんて」


「なら、クエストを出せばいいんじゃないか?」


「クエストか。でも、そんなお金……」


「だーかーらー! その金は俺が……いや、俺たちが用意するから、お前はどっしり構えてればいいんだよ! お前は魔王の幹部の一人なんだろ?」


「最弱だけどね……」


「それがどうした! 最弱が最強に勝てないなんて誰が決めた! 何も始まっていないのに、最初から諦めようとするなよ!」


「……えーっと、君はいつから熱血キャラになったの?」


「あ、い、いや、これは……その……あ、あれだ。お前が弱気になってたから、なんとかしなきゃって思って……それで」


「……うん、分かってるよ。ありがとね、ケンジ。元気でたよ」


「そ、そうか。それは、なによりだ」


「……さてと、それじゃあ、ここを改造できるように物を移動させようかな……って、今は猫だから、ものが運べないのを忘れてたよ」


「この店の……いや、この屋敷の中にある物は、俺たちが運ぶから、お前はこの屋敷をどう改造するのか、考えてくれ」


「……で、でも」


「遠慮するな。俺たちはもう、家族みたいなものだろ?」


「家……族?」


「あれ? もしかして、そう思ってたのは、俺だけなのか? あー、しまったな……。すまん、ユミナ。今のは忘れ……」


「そうだね、私はもう君たちの家族みたいなもの……なんだよね」


「お、おう、少なくとも、俺はそう思ってるぞ」


「そっか……なら、屋敷の物をこの部屋に集めるのと、魔族の職人限定のクエストをギルドに行って申請してきてくれるかな? 【屋敷を改造しよう】っていうクエスト名で」


「ああ、分かった。ところでそいつらに渡す報酬はどれくらいがいいんだ?」


「うーん、そうだねー。一人あたり……20万カオスってとこかな」


「一人あたり20万カオスだと! う、うーん、ま、まあ、なんとかするから、お前はお前にしかできないことをやってくれ。こっちもそうするからさ」


 ※つまり、一人あたり20万円……。


「うん、そうさせてもらうよ。それじゃあ、また明日ね」


「ああ、また明日な……」


 俺が異世界に居れる時間は、無制限だが、あまり長くいると、強制的に元の世界に戻されるということを最近知った俺は、時間の流れとは、こうも早いものだったのかと思った……。(つまり、強制帰還した)



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